第24話 ダンケルクの悪魔
1940年6月10日、パリから50キロ地点
「ちくしょー!ドイツ軍を通すな!」
とある准尉が下士官たちに檄を飛ばしている。
しかし容赦なくドイツ軍の兵士たちはMG36をぶっ放し、III号戦車は不気味なキャタピラ音を響きかせながら、進軍してくる。
一両だけではない。
多数のIII号戦車はキャタピラ音をまるで、オーケストラのように、不気味な音楽を奏でるように響かせながら、倒れ動かなくなった兵士を踏み潰すように、あるいは我道を作るように列を成して通り過ぎていく。
どうにかしなければ...しかし手元には、銃火器はおろか、申し訳程度の、即席の火炎瓶すらなかった。
「ぐっ!ま、まずい!うごあっ!」
准尉は咄嗟に回避行動を取ったが、太ももを何かがかすめた。
幸い軍服のズボンが破けるに留まった。
しかしそれ以上に恐ろしいのは敵戦車から放たれた機関銃の弾丸であった。
しかしIII号戦車とも、IV合格戦車とも似ても似つかないその巨体。
「こ、こんな戦車が...ど、ドイツに⁈あり得ない!」
一方、戦闘が起きている地点から1キロ離れた地点では
「ロンメル閣下、凄まじいですな...」
副官がロンメルに話しかける。
「ああ、日本の影響を受けて開発が急がされた、現役の中では最強を誇る...V号戦車パンター!」
「まさかこんなにも早く重装備かつ新時代的な戦車が完成するとは思いませんでしたよ閣下」
「日本の杉内とかいう男が、日本軍部に助言したとの噂だ。それを知った総統が75mm砲を主砲とする戦車の製造着手を命令したそうだ。」
V号戦車は次々とS35やR35といったフランスの主力戦車を撃破していく。
火力も防御力も桁違いの戦車戦はドイツの一方的な蹂躙であった。
1940年6月12日 ダンケルクにて
「急げ急げ!奴らが来る前に!」
欧州大陸から脱出を図る連合軍の兵士たちがひしめき合いながらも、大規模な準備をしている。
ダンケルクと呼ばれるこの大脱出には、成功すれば反撃の機会を得られる可能性さえあった。
その時、空から奇妙な機械音がした。
「あ、あれは...」フランス兵が顎をワナワナと振るわせながら空を指差す。
それは緑の悪魔と恐れられた降下猟兵だった。
彼らがダンケルクに降り立ったのである。
彼らが緑の悪魔を恐れ慄きながら撤退戦を繰り広げていた時、出発した船団が突如として、爆発し轟沈した。
一隻だけではない。2隻、3隻...次々となす術なく沈められていく。
駆逐艦さえも撃沈されていた。
なぜなら、在スペイン日本軍が保有する最新鋭の潜水艦、伊200号型潜水艦が、飢えた猛獣のごとく敵艦を沈めていたのである。




