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第22話 アルデンヌの想定外

不可能は、小心者の幻影であり、権力者の無能の証であり、卑怯者の避難所である。


                -ナポレオン・ボナパルト

1940年5月11日明け方、アルデンヌ地方の某森の前


「ドイツはどうせフランスで苦戦するって」


「間違いねえ!独仏国境には我らフランスが世界に誇るマジノ要塞!」


「いくらなんでも数年は持つぜ!その間にイギリス、場合によってはアメリカの支援もあれば、ドイツは終わりだ」


二人の兵士が巡回しながら笑い話をしていた。


その時、森の方から奇妙なカタカタという音が聞こえてきた。


「おい!なんの音だ⁈」


「あん?どうした...ああ、キャタピラ音か...自軍か友軍の戦車じゃない?」


「いや、そんなはずはない!だってこの森は...」


そう言い終える前に、数両の戦車が森から姿を現した。


戦車に書かれていたのはトリコロールでも、ユニオンジャックでもなかった。


バルカンクロイツ....つまりIII号戦車であった。


「おい!どうなってやがる!急げ!じゃなきゃ抜かれるぞ!」


「ダメです!対処が間に合いません!独仏国境から主力を移してる時間はありません!」


「くそっ!」一人の大尉が壁を殴った。


「大尉殿!攻撃機です!ドイツ軍のです!危ないいいい!」


准尉が大尉を庇うと、直後に爆発が起きた。


准尉は額から血が流れていることを理解し、おもむろに起き上がる。


「大丈夫か?准尉」


「大尉殿も大丈夫ですか?」


「ああ、私はな...ちくしょう、まずい...だがパリへの侵入はなんとしても止めねば...」


そう言って大尉は無線機に手を伸ばした。


砂や砂利まみれになった軍服袖を気にも留めずに無線機を取った...つもりだった。


すでに無線機は攻撃機の爆撃の影響で破壊されていた。


「うう...やばい!くそっ!」


大尉は地面を殴った。


しかしそうしたところでどうしようもない。


一方、ベルリン総統府ではヒトラーが怒りをあらわにしていた。


その理由はロンメルの暴走であった。


「ロンメルは何をやっているんだ!」


ロンメルという男は、軍事の天才ではあった。


また、貴族などの高い身分出身の軍人が将校などの高い軍人の地位を占める割合が多い中、ロンメルは数少ない、平民から元帥に成りあがった天才であった。


一つ問題があるとするならば、兵站を度外視した作戦や軍事行動が見られた。


良く言えば敵に想定外の被害と、自軍に想定外の戦果をもたらす。だが、現実的にみれば、兵站が伸びきって、パンクするという極めて重たいデメリットを孕んでいた。


しかし、一ヶ月と経たぬうちに、それはいい意味で裏切られることとなった。

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