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第21話 欧州燃ゆる前夜

国家百年の大計を誤れば、政治家は死してもその罪を滅ぼせない

                     -斎藤隆夫

1940年4月某日


首相官邸にて


「お疲れ様でした」


杉内が石原大臣と山本大臣を労っていた。


この二人の他に山下大将や杉山大将もいた。


大日本帝国は、欧州戦線の本格化の前に友好国のイランに近づくことができたのであった。


これは大きな進歩だった。なぜなら、ジブラルタル海峡をスペインが支配している今、地中海の出入り口はスエズのみであった。


そのスエズを極めて叩きやすい場所の近くにまで勢力を広げることができたのである。


「石原大臣、関東軍の動向はいかがでしょう?」


杉内が尋ねる。


「ああ、問題はない...ただソビエトと戦争になれば、どうなるか分からない...」


石原莞爾は静かにそう答えた。


関東軍という切れすぎる刀は、諸刃の剣だった。


日本の敵に一度向けば、それは音もなく静寂の後に切り伏せる。


しかしそれが自国へ向けば話は変わる。


ゆえに日本軍は、関東軍と血を血で洗う戦争になる。


今は石原莞爾という、関東軍とも日本軍とも絶妙な距離をとりつつ、満州を、関東軍を牽制できる人物が政府の中枢、そして陸軍のトップにいる。


ゆえに関東軍に対しては一定の安心を持てる。


だからこそ、関東軍を上手く使うことで、ソビエトを牽制できる。


今のところは...


数日後、とある作戦会議室にて


「本日はよろしくお願いいたします。」


日本陸海軍の将校たちが集まる中、杉内が頭を下げた。


全員が着席し、杉内が前に立つ。


「本日は欧州戦線の独伊の支援及びスエズ占領についてです。」


杉内が話す。


「まず、イランから英領イラクのバグダッドまで電撃的に侵攻し、バグダッドで軍を整えます。次に英領シリアなどを制圧後、イタリア海軍と協力する形でスエズを奇襲、そして制圧後はエジプトまで早急に侵攻します。また、現在外相はアイルランド政府と大東亜共栄圏への一時加盟について交渉中です。」


陸相が手を挙げて「なるほど、首相の提案にしてはかなり的を射ています。それにアイルランドが我々の味方になれば、イギリスはドイツやイタリアのみならず、スペインにいる我が皇軍に加えて北アイルランドから本土侵攻のリスクも抱えることになりますから。」


山本海相が手を挙げて発言する。


「在スペイン日本軍についてだが、いずれ来るであろう英本土上陸作戦に動員もしくは軍事支援に回すのですか?」


すると杉内が答える。


「ええ、ヒトラーとも話はつけてあります。ローマで話し合ったローマ協定で、在スペイン日本軍の動員も、枢軸へ入ったスペインとともに協力する体勢を築き上げています。」


石原陸相と山本海相二人が納得した顔で頷いた。


1940年5月10日


「杉内首相閣下!ドイツが...フランスへ侵攻しました!」

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