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第17話 ひと段落

平和…二つの戦争の時期の間に介在する、だまし合いの時期。


                      -ビアス

1940年1月帝都東京某所にて


「聞いたかい?イランの日本軍とイタリア軍が協力して、ギリシャとユーゴスラビアを倒したんだと。」


杉内がコーヒーカップ片手に語る。


「ええ、ドイツが軍を回さずにですからね。ドイツはおそらく対英戦に尽力できると思いますよ。」


イランを出航して、先に起きたイタリア・ユーゴスラビア戦争へ出向いた日本軍。


砂漠で練り上げられたそれは、ユーゴスラビア軍をものともしなかったそう。


イタリアはユーゴスラビアとギリシャに同時に宣戦布告していたため、在イラン日本軍は、5万人をユーゴスラビアへ、5万人をギリシャへ派遣した。


ムッソリーニの早すぎるギリシャとユーゴスラビアへの侵攻。


それを決断させたのは他でもない日本だった。


在スペイン日本軍によるジブラルタル占領は、ムッソリーニに早期の地中海覇権の確立と、スエズを抑えなければという考えに至らせるのに十分すぎる出来事だった。


そのためにギリシャとユーゴスラビアへの侵攻を決意したムッソリーニは1939年中に侵攻してしまおうと考えたのであった。



「それで、次のドイツの狙いは...まあ、言わずものがなって感じだな」


「ええ、何を隠そう英仏、そしてベネルクス三国...」


「それと並行して、北欧への侵攻も考えられるでしょう...」


「デンマークとノルウェーですな...」


事実、ドイツは7カ国への侵攻を考えていた。とはいえ、そこにスイスがないのは、険しいアルプスに加え、国民皆兵というある程度、ドイツを苦しませるのに十分な要素を、中小国ながら持っていたからである。


独仏国境にこそマジノ要塞を建てたフランスだが、ベネルクス三国国境やスイスには作っていなかった。


ドイツはわざわざ回り道をして、自国に侵攻するなど夢にも思っていなかったのである。


しかしドイツ軍部はそうではなかった。


杉内は執務室のソファに腰をかけ、窓を見ながら、かつて自分が現代にいた頃の知識を思い出していた。


(もし史実通りに考えていれば、ドイツは...)


1939年はほんの序章に過ぎになかったと、杉内は考えていた。


それは、1940年は39年以上に一気に動き始める。それはドイツから欧州全土、北アフリカ、そして中東へ戦火は飛び火し、やがて極東と北米にまで至るだろうと...


「水野、石原大臣と山本大臣を呼んでくれないか?」


「もしかして今年起こるであろう戦争についてですか?」


「もちろんだ、それとやはり考えうる最悪のケース、対米戦についてもだ。」


「アメリカか...大国といえど、作戦によっては倒せない相手じゃないからな。」



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