第14話 世界大戦勃発
どの民族もそれぞれ他の民族より偉いと思っている。これが愛国心を生み、戦争をも引き起こす。
-デール・カーネギー
1939年9月1日
ドイツポーランド国境から雪崩の如き速さで、ドイツ軍が侵攻した。
「水野、いよいよ始まったな。」
「ええ、おそらくこの件について、英仏は黙ってないどころか、宣戦布告するかもしれません。」
「間違いないな。これに便乗する形であれだが...例の作戦通りいくとしよう。」
「軍部との調整は済んでおられるのですね。」
「ああ、フィリピン迂回での東南アジア進出...そして大東亜共栄圏を確立する。」
決意を込めた杉内の目には、2度とあの破滅的な現実を起こさせまいとする、並々ならぬ覚悟があった。
「首相、作戦はどのようなもので?」
「ああ、改めて説明しよう。まず我が皇軍は、中国からベトナム、タイ、マレーシアへと侵攻する第一方面隊と、フィリピンの東を通ってパプアニューギニア、インドネシア、ブルネイなどを制圧する第二方面隊で東南アジアを制圧する作戦、通称、鉄血作戦だ。これはビスマルク諸島やビスマルク海が由来だ。この鉄血作戦はあくまで第一フェーズだ。」
「なるほど、早急って感じですね。第二フェーズは、オーストラリアやパキスタン方面ですか?」
「ああ、第二フェーズはアボリジニ作戦だ。主にオーストラリアの南方方面、大陸ではインド国境部まで侵攻する。もちろん、アンダマン・ニコバル諸島のバトラー・ベイ・ビーチを経由してスリランカを急襲し、それを足がかりに第三フェーズのインドへ至るわけだ。」
「つまるところ、インパール作戦へつなげるわけですね。」
「ああ、その通りだ。」
「俗にいうインパール作戦ってやつですか。そういえば、石原陸相は反対していることがありまして...牟田口くんを外して欲しいと...」
杉内は「そうだな、彼はちょっと後方勤務でいいかもしれん。代わりに杉山くんか山下くんというのはどうかね?」
「それはいいかもしれない。後ほど石原陸相に伝えておきます。」
1939年9月2日、日本陸軍と日本海軍は、互いの垣根を越えて一つとなり、鉄血作戦を開始した。
雪崩の如き速さで進軍を開始した彼らは、特に第一方面隊は、ベトナムのハノイ、ラオスのヴィエンチャンを目指して猛攻を仕掛けた。
そのとき、イギリスとフランスはついに日本へ宣戦布告を宣言した。
植民地とはいえ、自分たちの支配する領土へ足を踏み入れたのであれば当然である。
イギリス首都ロンドンの首相官邸にて、チャーチルが電話をしている。
その相手はド・ゴールである。
「ド・ゴール閣下、ドイツだけでなく日本までもが...」
「ああ、チャーチル閣下...とはいえ、貴国のシンガポール要塞は難攻不落でしょうから...」
「ああ、そうだな。まあ、大丈夫とは思うが...」
「だがマレー半島だけは死守せねばなりませぬ」
「世界のゴムのほとんどをマレーで生産しているからな。場合によっちゃ世界が止まってしまう。」
「ああ、だが本土は大丈夫だろう...マジノ要塞でドイツ軍を止めて見せる」




