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戦前の日本に転生したので、祖国を救ってみた  作者: 坂口布瑠高
第2章 切られた火蓋、日中戦争
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第9話 打通への布石

「必ずや勝利を! しからずんば死を!」

「我等こそが祖国の門番だ!」


              -ターニャ・デグレチャフ

南京陥落の一報が入って数日、包囲された国民党軍主力と日本軍、関東軍、そして満州軍の戦いは続いていた。


しかし、圧倒的な練度の違いに加え、ヨーロッパ、とりわけドイツの戦車を参考に作られた主力戦車である、多数の96式中戦車などによって、日本軍のキルレシオは7を超えていた。


加えて最新の95式機関銃は連射速度などの性能を十二分に発揮した。


満州国境から約数キロ離れた場所で国民党軍主力との包囲戦が開始されていた。


彼らは主力を包囲殲滅後、南京へ向かい、その後、南京を拠点に武漢、重慶方面へ侵攻する部隊と、ベトナム国境まで侵攻する部隊とに分かれる作戦となっていた。


これは俗に言う『大陸打通作戦』である。


中国を東西に分断し、大規模な包囲戦へ持ち込む算段である。


満州はもちろんのこと、モンゴルも日満蒙経済圏によって、ある程度の経済発展とともに、少なくとも中規模国家とは対等に渡り合えるだけの軍事力も持てるようになっていた。


つまり中国は今、日本、満州、関東軍の戦いにモンゴル軍が加わる危険性を孕んでいた。


とはいえ、日本側もモンゴルの参戦には少し憂うべき点がなかったわけではない。


場合によってはソ連やアメリカの参戦もあり得るわけで、それだけはなんとしても防ぐ必要があった。


日本がドイツと防共協定を結んだとき、同時に世界には公表していない秘密協定が存在した。


その内容としては、日本が中国と戦争になったとき、国民党への支援をしてはならないということである。


この協定は、日中紛争不干渉秘密協定と呼ばれた。


この秘密の協定を結ぶに際して、杉内はヒトラーに対し、次のように説得を試みた。


「総統閣下、仮に日中間で戦争が起き、貴国が国民党を支援したとして、結果がどうあれ、我が国が弱体化するだけである。加えて、弱体化した我が国にソ連が侵攻しようものなら、アジアの赤化は早まるだけです。」


それに対しヒトラーは次のように返したという


「うむ、たしかにそれは言えているだろう。わかった、国民党の支援は取りやめだ。ただし、アジアにおけるソ連へのひいては共産主義に対する防波堤として、そして抑止力としての働きを期待する」


そのようなやりとりがあった。


1937年8月12日、武漢市


共産党軍の一部の兵士2人ががとある建物の中でウーロン茶を飲みながら話していた。


「満州で国民党軍主力が殲滅。加えて蒋介石は日本軍に拘束だとよ。」


「おいおい、まじかよ...てか南京も制圧からの敵の一大拠点になりつつある...。」


1人がタバコを吸いながら話す。


「状況は芳しくない...しかし我が共産党軍の主力は武漢に集結している...ならいっそ、南京へ侵攻すべきでは?」


「それなんだけど...」


1人が少し言いにくそうに口を開く。


「それについてなんだが、武漢に一個師団を残して南京へ侵攻するらしい」


それを聞いたもう1人は驚きを隠さなかった。


「おいおい、まじかよ。同志毛沢東がいるなら、ゲリラ戦で勝利できる可能性はあるが、さすがに厳しいぞ」


そう言い返されるのも無理はない。相手は日清戦争、日露戦争、そして第一次世界大戦を乗り越え、練り上げられた日本軍である。


北部で国民党が大敗し、蒋介石が拘束されたという事実は、共産党にとって人事とは思えなかった。


協力体制こそ築けなかったものの、それでも共通の目的を持った組織のトップが敵の手にあるという真実が、彼らにある種の恐怖を与えた。

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