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三色アルバム

作者: 幸京

その人と一緒に、当たると評判の占い師に手相を見てもらう。

「あなたは、大器晩成だね。金運?、40代で莫大な富を得るよ」

虫眼鏡で僕の手相を見たあと、占い師は僕の顔を見あげながらそう言った。

僕はお金を払い店を出ると、すぐに恋人のその人は、僕の左手首を握りながら手相を見る。

「やっぱりね。私も大器晩成だと思ってる」

「なんでだよ」

そう言いながら、僕はため息をつく。

社会人になって2年、ブラック会社勤めに心身ともに参っていた僕は

宝くじを当てたあと、仕事を辞めてのんびり暮らすことを日々妄想しながら過ごしていた。

恋人のその人が望んでいる2人の将来など、考えてもいなかった。


その人の窮状を知ったのは偶然だった。

僕と若年層に人気のある俳優との対談を企画した雑誌の担当者が大学の同回生で、

打ち合わせの後、共通の知人達の話になり、元恋人のその人のことを知る。

実家の事業を継いだがうまくいかず、経営は苦しいとのことだった。


昔、よく行っていたその人の実家。

最寄り駅から徒歩15分、10年ぶりだけど景色はほぼ変わらず道はよく覚えていた。

あの日、恵美と占い師が言った通りになった。

今の僕が昔の僕に助言が出来るのなら、占い師と元恋人である恵美の言葉を信じろ、だ。

僕との結婚を望んでいた恵美は、僕が世に出るまで待てなかったのだろう。あの占いの日から1年後、僕達は別れた。

大学時代に、浮気を繰り返しては僕を弄んだ加奈子から2年ほど前に会いたいという連絡がきたが、継いだ実家の経営がやはり苦しいのだろう。何も力になれないけど、頑張ってほしいと思う。

「きみのおかげで今の僕があるんだ。せめてもの恩返しで借金は全て僕に返済させてほしい。心苦しいなら僕から借りたことにして、一括で返済が出来るときのみ返して」

「お母さん、ただいま」

ランドセルを揺らした小さな女の子が、元恋人であるその人、弥生に飛びついた。


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