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ルゼンテーベ・ストルト  作者: 仁崎 真昼
四章 購う命
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057 寮・訪問・美術研究会

 三匹分の作業が丁度終わるころに目を覚ましたヨッドから礼と報酬を受け取り、メアとレオゥは育舎をあとにした。そして、すっかり獣臭くなってしまった体を水浴び小屋でごしごしと洗う。

「疲れたー」

「背中が痛い」

「俺も体中が痛い。なんで乱暴に蹴り転がすかな」

「それはメアが寝るから悪い。なんで俺より遠くにいて直接触れてもいないメアの方が早く寝るんだよ。むしろ鞭で叩いてないだけありがたく思え」

「それについては抗議したい。エオミの話によると俺の反応の方が普通っぽい。むしろなんでレオゥはあんなに耐えれたの」

「気合と根性」

 言った直後、二人の腹の音が鳴り響いたため、二人は水浴びもそこそこに食堂へ向かった。

「しかし、あれだけ頑張って二〇〇〇ルティか」

「単純労働にしては結構もらえた方だと思うぞ」

「まあそうなんだけどね。でも道のりが遠いなぁって」

「こうした地道な手伝いだけじゃ季節が変わっちまうな。夜燕って確か渡り鳥だろ?」

「うん。確か、夜燕は春から夏にスセヨ大陸、夏から秋にホルユハ大陸、冬はパタタ大陸って順に渡っているはずだから、冬になる前に何とかしてあげたいんだよね」

「難しいな。青空市場が期限か」

 二人は頭を悩ませながら粥を咀嚼し、寮に戻った。

 メアが部屋に入るなり、ヘクセが怒鳴った。

「メアッ! 籠の中が糞まみれなんだけどっ! 君さあ、生き物を育てるってこと舐めてる? 面倒見る気なら最後まで丁寧に面倒見なよ。まったく、適当に育てようとしやがって……」

 ヘクセはぶつぶつと文句を言いながら綺麗な布を籠に敷きなおし、その上に夜燕を包んだ布を優しく置く。メアに刺々しい言葉を飛ばしながらも、その所作は優しい。

 逃げられないかという点と餌の確保だけに気を取られ、寝床の清掃等の作業に気が廻っていなかったことに気づいたメアは、素直に両手を合わせた。

「ごめん、ありがと」

「……はあ。いつも思うけど君って矜持はないわけ? そんなに簡単に人に謝ってさ、情けない。男らしくない。そもそも君、最近自分の七味果の水やりもさぼってるだろ。そんなんで星もらえるのかい? 君は何事も適当過ぎるんだよ」

「謝っても怒られるの? 俺」

「ふん」

 ヘクセは鼻息荒く自分の椅子に座った。

 メアが自信の荷物を片づけていると、寝床に座って祈りを捧げていたヴァーウォーカがぱちりと目を見開いた。

「そういえば、メア。お客さん来てたぜ」

「俺に? どんな人?」

「見たことない上級生。メアの知人って感じでもなかったっぽいけど、メアのことを探してた。伝言あずかってる。もし時間があるようなら今晩字陽寮の二一六号室に来てくれないか、ってさ」

「名前は?」

「名乗ってなかった。けど、部屋番号からして三年生じゃないか?」

「ハナさん、じゃないよな。誰だろ。他に三年生の知り合いは……」

 脳裏を過るのは、ギャシーレ、剣士會の団長、その他名前も知らない剣士會の団員。だが、なんとなく違う予感がした。

「今晩? 時間の指定とかは?」

「ないよ。決闘とかそんな危なそうな空気はなかったし、とりあえず様子見てくれば?」

「うーん」

 悩んだが、メアは結局行ってみることにした。色々と理由はあったが、一番の理由は好奇心だった。

 メアは寅雲寮の裏口を抜け、道のように土の露出した個所を通って字陽寮へと抜ける。用事がないため字陽寮には入ったことがなく、入り口がわかるか不安ではあったが、木々の切れ間を通り抜けると目の前に玄関があったため迷うことはなかった。

 三階建ての巨大な建物には、一年生を除くすべての学年の男子生徒が住んでいる。その住居は階層ごとに分かれ、学年が上がるごとに上の階へと移っていく。メアの感想としては、下の階の方が便利なのに、引っ越しが面倒そうだ、という身も蓋もない物だった。

 メアは玄関扉前に立ち、窓から中の様子を窺う。入ってすぐの部屋は少し広めの談話室のようになっているようで、何人かが机を囲って談笑しているのが見えた。意を決し、呼び鈴を探すが扉にはついていない。

(勝手に入っていいんだろうか。寮なんだから大丈夫? いやけどそもそも一年生と他の学年の生徒で寮を分けてるのに何か理由があったりするんだろうか。あるとしたら、勝手に入ったら駄目だったすることもありうる)

 少しの間うろうろと扉の前を往復したが、唐突に迷っているのが馬鹿らしくなり、メアは扉を開けた。

 中に入ると談笑していた生徒の内の一人がちらりとメアの方へ視線を向けたが、興味なさそうにすぐに視線を戻す。それを見て、メアは勝手に入っても問題ないと判断した。

 メアはそのまま階段へ向かい、二階へ上る。階段を上ったら左右に廊下が続いており、廊下の両側にはいくつもの扉が並んでいる。扉には番号が刻印されており、目的の部屋まで迷うことはなさそうだった。

 雰囲気としてはメアたちが普段暮らしている字陽寮と対して変わらない。扉を確認したメアは最初そう思った。しかし、廊下を進むごとにその感想は変化していく。扉に様々な装飾が施してあるためだ。部屋主であろう名前が書かれた木板、部屋に入る際の注意書きが書かれた紙片など一般的なものから、怪しげな呪符、宗教勧誘のびら、血文字の罵倒、獣の頭のはく製、といった不気味なもの、挙句の果てには公の場に掲示するには破廉恥過ぎる裸体の女性の絵巻まで張ってある。良く言えば個性的、悪く言えば混沌としている。

 メアは顔を赤らめながら目を逸らして通り抜け、次の部屋の扉の番号を確認する。すると、その部屋の番号は二一七号室。どうやら通り過ぎてしまったらしい。

 メアが踵を返して二一六号室であろう扉を確認すると、そこには裸婦画が張り付けられていた。

「ここかぁ……」

 かなり迷った。引き返すか、否か。

 理性と感情が戦った結果、少しばかり感情が勝ってしまった。なぜならば、メアも少年だったからだ。

 しかし、決まってからは行動が早かった。この部屋に入るところを見られる方が恥ずかしい。メアはそう思い、廊下には響かない程度に控えめに、内部にはしっかり聞こえてる程度の強さで扉を叩く。

 内部から紙束や物を引きずる音が響き、数瞬の後、中から応答が返ってきた。

「どちら様?」

「ここに来てくれないかって呼ばれたんですけど」

「……もしかして、一年生のルールス君かな?」

「そうです」

 扉が僅かに開き、その隙間から小太りの少年がメアのことを見定めるようにじろじろと見てきた。お眼鏡に叶ったのか、横向きであれば何とか通れる程度に隙間が広がる。

「入って。早く」

「は、はい」

 メアはその隙間に素早く体を滑り込ませた。

 入って、メアは少し後悔した。部屋の壁、棚、天井、あらゆるところに肌色の面積の広い裸婦画が張られている。目のやり場が床しかない。

 強張った表情で目を逸らすメアに対し、メアを招き入れた茶髪の少年は折り畳み式の椅子をを差し出した。

「よく来てくれたね。これ、座って」

「ぁりがとうございます」

「とりあえず自己紹介しよう。初めまして、僕は美術研究会、通称美研の会長、三年羽組タフーだ」

「そして僕は副会長のクェス゠ヲッウ。三年歌組」

「二年石組。リネ」

「よろしくお願いします。一年花組のルールス゠メアです」

 挨拶の時に相手の顔を見ないわけにもいかず、メアは顔を上げた。

 どうやらここは二人部屋らしく、両脇の寝台は一段のみ。部屋の広さはメアたちの四人部屋よりやや広い程度だが、箪笥や机が二人分少ない生かかなり広く感じられる。クェスと名乗ったのは先ほど扉を開けてくれた茶髪の生徒で、今は脇のベッドに身を投げ出している。タフーと名乗ったのは大柄な金髪の生徒で、こちら側に向けた机に手を組んで肘をついている。リネと名乗ったのは部屋の隅で腕を組んで壁に背中を預けているの黒髪の少年。メアの他には全部で三人だ。

 美術研究会。響きこそ優雅だが、その実態はどうなのか。横眼にも自己主張してくる肌色の絵の圧力を感じつつ、メアは口角が引きつるのを隠せない。

 そんなメアを真剣な目で見つめながら、タフーは言う。

「すまない、普段あまり客人は入れないものでね、片付いていなくて落ち着かないかもしれない」

「はい」

「急に呼び立てた詫びに気にいったもんがあれば一枚進呈するよ。ただし、注意。擦るときは自室じゃなくて便所でな」

「いえ、結構です」

 クェスから放たれた直球の下の話に、メアは営業用の笑顔を張り付けた。

 メアの心が閉ざされてしまったことを感じたのか、タフーはやや慌てた様子で両手を振る。

「ああ、いやいや。違うんだ。失礼な言い方をしてしまってすまない。こいつはちょっと下品な奴なんだ。ただそれだけなんだ、悪意はない。まあ、どう言い繕ったところで信用しにくいかもしれないが」

「会長、さっさと本題入りましょう」

「そうだな、そうしよう。ルールス君、直球に言おう、君に頼みがある」

「なんでしょうか」

「君にこれらの原画を【複写】で複製してほしい」

 そう言って差し出されたのは、二十枚ほどの紙束だった。

 メアが手に取ると、一枚目には逞しい男と豊満な女が交合をしている絵が鮮やかな色彩で描かれていた。ぱらぱらと捲るが、二枚目も同様。三枚目も四枚目も同じ。女の容姿や絡み合う姿勢が変わってはいるものの、色本の挿絵以外の何物でもなかった。

 断ろうとしたメアが口を開く前にタフーがさっと手をかざす。

「もちろんただではない。報酬は出す。一枚の原画につき十枚ずつ複製画を作成してくれれば、まとめて二〇〇〇〇ルティ払う。また、これを基本契約として追加の複製一枚につき五〇ルティ出そう。どうかね」

「っ、それは……期限は?」

「基本分は青空市場の一週間前までに、追加分は青空市場当日の開始時刻まで」

 メアは動揺を抑え込み、脳内で素早く計算する。

 青空市場まで約六十日。一日十枚複製できるとして、二十日で基本契約分は完了する。残りの四十日で追加分を作成できるならば、基本分二〇〇〇〇ルティと追加分二〇〇〇〇ルティで四〇〇〇〇ルティ稼げる計算になる。

(美味しい。他で細々とした日雇い仕事が入れば、冬になるまでに五〇〇〇〇稼げるかも)

 やる気になっているのを感じ取ったのか、タフーが畳みかけていく。

「複写用の紙はこちらから支給する。他に画材が必要なのかはわからないが、よほどの量でなく、こちらで用意できるものであれば用意しよう。他にも可能な限りの便宜を図ることを約束しよう。どうかな?」

 メアは興奮に顔を上気させつつ、原画を確認していく。色は問題なさそうだ。【複写】の魔術は特殊な塗り、例えば鏡面などの反射色や可変色以外であればどんな色でも再現できる。黒い炭さえあれば、今貰っている原画を再現することなど造作もない。

 いける。メアは確信した。

 直後、メアの原紙をめくる手が止まった。

 メアの手が止まった理由は単純で、十一枚目の絵の雰囲気がそれまでの絵とあまりにも違ったからだった。それまでの絵は言うならば、非常に直接的で煽情的な絵だった。それこそ、性行為、と聞いて人々が思い浮かべる情景を切り取ったような絵が諸に描かれていた。しかし、この十一枚目は違う。先ほどまでの絵と比べれば性などみじんも感じられないほどに、健全な絵に見える。

 被写体は海のように青い髪を後頭部で一つにまとめた若い女性。少女と言った方が正しいかもしれない。運動の直後なのか、その少女の頬はやや紅潮し、滲んだ汗で神が頬に張り付いている。膝に手をついて前屈みになっているのも疲労が故だろう。胸元を手ではためかせているのも火照った体を冷ますため。大きな胸の谷間が描かれてるとはいえ、それにいやらしさを感じてしまうのは見る者の邪念のせいだろう。そう訴えられたら言葉に窮してしまうような、色っぽさと艶やかさの境界線を責めているような絵。

 しかし、こうした絵ばかりであればやりやすいのに、とメアが思ったのも束の間。十三枚目の絵を見たメアは思わず鼻水を吹き出しそうになった。

 南の民族特有の背中まで伸びる艶やかな黒髪、南の民族らしからぬ白い肌に緑の目。肌に吸い付くような黒い靴下を今まさに脱いでいるところを切り取ったような一枚。やや視点が低いせいか太もものが露になっており、秘部こそ見えてはいないが臀部は僅かに見えてしまっている。その長いまつ毛は気だるそうに地面を向いているが、その目元の僅かな赤みにどこか淫らな気配を感じる人もいるだろう。胸元を隠す一房の髪さえ艶を醸し出している。その呼吸さえ聞こえてきそうな写実性と絵。

 そこに書かれていたのは誰がどう見てもクァトラだった。

「いや、これ……クァトラ先輩じゃないですか!」

「おお、これは中々お目が高い。ルールス氏は学内美少女投票第三位、クァトラ女史がお好みかな?」

 仲間を見つけたかのように親し気な笑みを浮かべるクェスをよそに、慌てて他のも確認するメア。すると、他にもあった。

  二十枚目は真っ白な髪の少女が真っ白な褶の裾を持って湖上に立っている絵だ。水をかけられたのか、誤って湖に落ちてしまったのか、全身ずぶぬれで薄い衣服が張り付いており、細い体の線がはっきりと表されてしまっている。また、服が白いせいで朧げだが下着の模様まで見えてしまっており、先ほどまでの絵より遥かに肌色の面積は少ないのに、その妖しさは負けず劣らず。失敗してしまったとでも言いたげな恥ずかし気な表情は、普段からむすっとした仏頂面を見慣れているメアには深く刺さった。

「それに、こっちはテュヒカ!?」

「一年生にして十位入賞。神秘の乙女テュヒカ嬢っすよ。ルールス氏も花組だっけ。同じ組なら知ってるか」

 にやにやといやらしい笑みを浮かべてメアの手元を覗き込んでくるクェスを押しのけ、メアはタフーに食って掛かった。

「これ、本人に許可取ってるんですか? まさかこれ全部実在の人物を題材にしてるんじゃ……」

「いや、違う。全部ではない。実在の人物を題材にしたのは後半の十枚だけ。それに後半の十枚は健全な絵。何も問題はない」

「健全って、かなりぎりぎりですよ。嫌がる人もいると思います。本人の許可は?」

 タフーもクェスもリネも一斉に目を逸らした。

 メアは原画の束と三人の間を何度も視線を走らせ、渋い顔をして言った。

「これは、流石に、不味いと思います」

 タフーはがしがしと頭を掻く。

「問題ないだろう。局部は写していないし下着姿でもない。性的だと感じるのは君の邪念のせいだ」

 リネは持っている筆を力強く握りしめる。

「彼女たちの美を表現するにはこれでもまだ足りてないんです。これは美の追求の道程の一つ。彼女たちの魂の麗を引き出すための習作なんです」

 クェスはメアの肩に手を置いてまっすぐに目を見つめた。

「そもそも可愛い女性、美しい女性に男は欲情するんす。だとしたら欲情しないものは真に可愛いと言えるんすか? 真に美しいと言えるんすか?」

 メアは原画を机に置いた。

「本人たちの前でそれ言えます?」

 三人は一斉に黙り込んだ。

 金額は魅惑的だが、断った方が良い。メアの理性がそう語りかけてきている。だが、と同時に本能が告げる。これは売れる。これは非常に魅力的な品だ。同年代の少女こそ存在する者の、そういった性的な諸々がほぼ存在しないこの閉鎖的な空間で、そうした商品がどれほど魅力的に映るか。メア自身もこれを魅力的に感じているがゆえに、その強さが理解できている。

 悩むメアをよそに、タフーたち三人は頭を突き合わせていがみ合い始めた。

「だから部外者を入れるのは反対だったんです! この気取った正義感が彼女たちに情報を漏らしたらどうなると思います? 今度こそ我々は破滅です!」

「だが最終的には会員全員の同意を得られただろう。それに複製画の作成には外部協力者は必須。君だって納得してくれたと思っていたのに」

「そもそも私は複製画を作成することもそれを販売することも反対です。是非やりたいという熱意があるならまだしも、嫌がっている相手に私の絵に触れられたくはありません」

「リネが複製画嫌いなのは分かるけどさ、そうも言ってらんないしょ。【複写】の複製精度は九割五分らしいし、それが本当なら僕らにだって見分けがつかないんだよ? 諦めようよ」

「複製画には熱がない! 魂がこもっていないんです!!」

「じゃあ君はいいのか? 君の素晴らしい絵画が数名にしか見られず無名のまま死んでいくことを。君の芸術が大衆に知れ渡らないまま廃棄され朽ちていくことを。よしとするのか! 君が一枚描くのにどれだけの労力と時間をかけているのか我々は知っている。それこそ、これから必死に練る間を惜しんで書き続けたとしても、今回の青空市場までに描けるのは多くて五枚ていどだということも、わかっている。だからこそ、だからこそだ! その素晴らしい五枚を目にする人を増やしたい! 我々はその純粋にそれだけを願っているのだ!」

 なんだか熱く語ってまずがそれ色絵の話ですよね。メアは喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。

 三人は置物と化したメアをよそに創作論に関して熱く語りあった。それはもう熱く、激しく、メアの表情が引きつっていることも、隣の部屋の住人から壁を叩かれていることも気づかないほどに。どれだけ自分たちの絵を愛しているか。それを世に広めるか。様々な人に見てもらうか。ただそれだけのために、と延々と言葉を交わした。

 長い議論は次第に互いの理解を深め、強固な友情を再確認するに至った。そして、最終的にリネが流した涙をタフーが拭い、三人で拳を合わせて強く誓い合うことで話は上手く収まったらしかった。

 タフーは充血した目でメアを見つめ、力強く両手を握った。

「ということだ。やってくれるね」

「いや、これは先輩に悪いし今回は……」

「ルールス君。君もお金が欲しいんだろう? フッサ君に聞いたが、命がかかっている話らしいじゃないか。だったら、迷う必要なんてないだろう? これは誰が見ても健全な絵。君は頼まれて魔術を行使するだけ」

「ひょっとして俺のことはフッサから聞いたんですか?」

「彼は会員だ。大丈夫。もし何かあった場合の全責任は私が持つ。クァトラ女史やテュヒカ嬢に嘘を吐く必要もない。聞かれたら正直に答えてもらって構わない」

 まあ聞かれてもないのに教えることもないが。早口にタフーはそう呟き、メアに紙束を差し出してきた。その目には期待が込められている。

 メアは半刻もの間苦悩した。そして、悩みに悩むメアを三人は根気強く説得し続けた。最終的に、眠気により回らなくなった頭を集中攻撃されたメアは折れ、この仕事を請け負うことにしたのだった。

 ただし。

「汚しさえしなければ、原画で擦ってもらっても構わないよ」

 そんなクェスの言葉が最後の一押しになったのも、紛れもない事実であった。

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― 新着の感想 ―
と言うかこれを受けるよりも剣売るほうがよくない?...
結局前の読み通りじゃないか!
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