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ルゼンテーベ・ストルト  作者: 仁崎 真昼
二章 杖を作る
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032 学校・休日・日常

 森刃星。週に一度の休日は、上聿の七刻に起床する。学園に来たばかりの頃のメアは一刻早い時刻、下竈の七刻には起きていたが、最近は朝食の時間ぎりぎりまで寝ているようになってしまった。怠惰の極みだとは思っているが、それでも問題ないので易きに流れてしまっている。

 起床後、まずは七味果(レル)の水やりをする。なんとなく毎日やるのが一番色つやが良い気がするため、毎日やっている。レオゥたちには構い過ぎだと馬鹿にされているが、それでも日課になっている。

 その後は、キュッフェに声をかけて朝食へ。これも完全に習慣化している。キュッフェもメアが起こすことを前提としているようで、声を掛けなかった日にはすさまじい形相で怒ってくる。理不尽さを感じないことはないが、朝食を食べ逃すのはかわいそうであるので、継続して声をかけている。

 朝食を取ると、まずは溜まった洗濯物を袋に詰め、籠に入れて部屋から出す。洗濯物は寮母がやってくれるのだが、回収は週に二回しかなく、メアは大量の衣服を持っているわけでもないため、一回でも逃すと汚い服を我慢して着るか、自身で湖で洗濯するしかない。以前までのメアであればニ、三日同じ服を着ていても何も問題はなかったが、毎日きちんと水浴びをするというキュッフェの教育の成果か、そう言った不潔に耐えられなくなっていた。なので、必死である。洗濯しないとキュッフェから臭いと罵られることも理由の一つである。

 それが終われば全員でやる部屋の掃除。これはキュッフェが提案しヘクセが乗ったことによるメア達の部屋独自の規則だった。当然メアとヴァーウォーカは反対した。しかし、勝てなかった。口喧嘩で勝てるわけがなかった。ヴァーウォーカには毎日の祈りーー騒音という弱みがあったし、メアには狭い部屋をさらに狭くするお喋り相手――レオゥという弱みがあった。

 掃除が終わったらその後は、日によってやることが違う。とりあえず魔闘連盟の占拠する部屋に向かうことが多いが、ハナがいない場合はそっと引き返す。ディベは卓上遊戯以外やろうとしないし、ウォベマは戦闘訓練の相手こそしてくれるものの魔銃使いのため、剣術の訓練にはならず、戦闘も全くかみ合わない。手加減もしてくれないため翌日動けなくなる。かなり容赦ない。

 ハナがいなかった場合、図書塔に向かうことにしている。授業中に気になった知らない単語を調べることにしているのだ。その場で聞いても良いのだが、授業にはやはり流れというものがあり、どうにも聞く機会が掴めない場合も多い。そのため、こうして調べることにしている。

 というか、メアとしては意外なことに、読書というものが単純にメアの趣味に会っていた。デクロモ冒険記を読むのが楽しいことからも分かっていたが、冒険を追体験できるということが非常に楽しい。新しい知識を得られるというのも楽しい。とにかく楽しい。意外と勉学というものが趣味に会っていたのかもしれなかった。

 お腹が空いたら昼食へ。休日の食堂は授業終わりという基点が存在しないためそこまで混雑はしない。気ままに向かっても問題ない。食べる時間を逃しさえしなければ。なので、気ままに適当な時刻に食堂に向かう。

 食べ終わったら、学校の敷地内にある唯一の店、金車輪ニフ地方レトリー支店で筆記具などの補充を行う。昼食後に行くのは、誘惑に負けないようにするためだ。色とりどりの菓子、必要以上に華美な保存食、何故かめちゃくちゃ美味しそうに見える各種薬品。そうした胃袋に訴えかけてくる誘惑から身を護るためだ。何せ、メアの所持金は少ない。所持品を換金したり叔父に無理言って借りたりはしたが、メアが自由に使うことのできるお金はほとんどないと言っていい。そうした贅沢品を買っている余裕はないのだ。

 終了後は、魔術の訓練。レオゥと一緒にひたすら魔術の訓練をする。魔力を起こし、練り、操る。何度も何度も繰り返す。

 一緒に訓練をしてみてわかったことだが、レオゥは非常に不器用だ。ひょっとすると、メアより操作が下手かもしれないと思ってしまうほどに。魔術を起こすのは手慣れているように見えるが、よく見るとその量はばらつきが大きい。魔力を練る作業も非常に滑らかだが、その量や濃度を上手く操れていないことが本人の反応から見て取れる。操作に至ってはメアと変わらないと断言できる。形を取らせることはできるが、動かすとなると途端に不器用になる。まるで赤子のよちよち歩きのように。

 その訓練は魂魄が疲労して痙攣するまで続ける。気持ち悪くなって座ってられなくなるまで続ける。それがタ家式らしい。レオゥは両親からそう教えられてきたからそれが普通だと思っているらしいが、メアはそれは怪しいと考えている。少なくとも、メアがこれまで冒険者たちから聞いた話とは全く違う。

 そして、少し早めの食事をとり、後は暗くなるまで剣を振る。いまだに一人剣を振る。師もなくがむしゃらに剣を振る。

 疲れ、手の皮から血が滲み、足腰が立たなくなるまで剣を振る。

 限界を感じたら、水を浴び、部屋に帰る。

 それが、メアの休日だった。


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