衣食住の確保をしよう 住
白い空間から森に落とされてから1時間…ようやく気持ちが落ち着いてきた。
普通森って危ないんじゃなかったっけ? どこが安全地帯なんだ? 辺りを見渡しながら、アプリの地図を起動する。
【 マップデータ更新します。少々おまちください 】
このアプリ本当に大丈夫なのか? 怖ぇーんだけど。
ピロン
【 マップを起動、現在地を表示します 】
マップを見てみると、本当に森の中心部に居るようだ。縮小して見ると、森の近くには人がいるであろう村?町?があるようだ。今度は拡大してみた。マップにピンが刺さっているので確認すると自宅と書いてある。あとは、この大量の荷物をどうするかだなぁ・・・なにかいい機能はないか? 端末を操作していると使えそうな項目を見つけた。
おっ、使えそうなのは【 空間収納 】【 生活魔法 】【 物質創造 】【 付与魔法 】【 通販 】くらいか。とりあえず荷物の収納っと・・・あれ取り出せるよな?
引越しの荷物を空間収納に入れたり出したりを数度繰り返し、ようやく家に向かって歩き出した。音声案内ができるマップのお蔭で、ナビに沿って15分くらい歩いたところに柵付きの庭付き一軒家が建っていた。
家の周囲を歩きながら、この家・・・でかくね?まさか、工房付きだったりすんのかな? とワクワクを抑えきれずに家に近づくも薄い膜のようなものに阻まれて気付く。
「 あれ? この家の鍵は? もらった覚えないよな…どうやって入るんだ? あ、タブレット操作して慣れろって言ってたが、まさか遠隔の鍵だなんて言わない・・・よな? 」
端末をポチポチ操作していると【 ナビゲーター召喚 】【 掌紋認証、認証登録 】の項目が通知された。
「 異世界なのにセキュリティしっかりしてるんだな・・・とりあえず登録っと」
認証設定を終えると幕が消え、玄関の扉に付いている認証画面に触れるとカチッと解錠音がした。
家の中に入ると自動で灯りがついた。驚きながらも各部屋を確認する。間取りは4DKみたいだ。まずはダイニングとキッチンを見てみる。
ダイニングには6人がゆったり食事できるテーブルと椅子が置いてあった。キッチンに目をやる。蛇口付きの水瓶と2口コンロが置いてある。そして場違いな現代の最新の冷蔵庫とオーブンレンジが備え付けられている、電気があるのか? この世界…と思ったが綺麗な石が嵌まっている。
次に寝室が2部屋。どちらもベッドとクローゼットだけ置いてあった。気になるトイレはまさかのウォシュレット付き。以前に飛ばされてきた異世界人がいたのだろうか? と思えるほどだ。この世界、お風呂事情はどうなっているのかと思いつつバスルームへ向かう。
猫足のバスタブとキッチンと同型の水瓶が置いてあった。足元には気持ち程度のスノコが敷いてある。家具家電などの日用品には綺麗な石が嵌まっていた、どうやら動力源は魔力で綺麗な石が魔石と言われる物なのだろう。魔石に魔力を補充することで作動するようだ。そしてメインの作業部屋へ向かった。
照明が 明るく照らすこの部屋は20帖ほどの広さがあり、作業別にできるようにテーブルが複数置いてある。ここまで設備がいいとは驚きだ。元の世界では作業別にテーブルを準備できるほど生活に余裕はなかったし部屋の広さも足りない。
ダイニングに戻って休憩することにした。現状 確認できたものは[ 衣 食 住 ]の[ 住 ]だ。この世界の食べ物や服装、そういったものの確認をしていないことに今更気づく。
ピロン
「 なんの通知だ? 」
画面を確認すると、【 ナビゲーター召喚 】の項目が点滅している。これはステラが開けと指示しているのだろう、そう考えつつ画面に触れる。
「 やっと呼ばれたっっ!! 遅いよ本当に!!! 」
ダイニングテーブルの上に手乗りサイズの人型が宙に浮いている。
「 …あんた誰? ってか、浮いてるぅっっ!!!!!」
椅子から勢いよく立ち上がり叫んでしまった。
「 うるさいなぁ……、ボクはヴェルフィーヌ。ボクを化け物扱いしないでよね!? 」
背中に白い羽根をつけた天使がそこに居た。
「 “ ヴェルフィーヌ ” 、ね・・・呼びにくいから “ ヴェル ” で、よろしく。俺は 葵だよ。 んで、ナビゲーターって何? 」
動揺を抑えながら、椅子に座り直しつつ問いかける。
「 呼びにくいからって勝手に省略しないでよね・・・。えっと、アオイ これからよろしくね。ボクはステラ様から、アオイのサポートをするようにって使命を受けたんだ! (ドヤァ) この世界のことやスキルの使い方、あとはお金の価値とか種族のこととかを教えるってとこかな」
テーブルの上にそっと降り立ちそっと俺の指に触れるヴェルだった。
「 とりあえず ヴェル、この近くに人が多くいるところってある? いろんな物を売ってる村とか街とかなんだけど。 食べ物や衣服を見たいんだよ。さすがにこの服装じゃ怪しまれるだろうし、今日まだご飯食べてなくてお腹減ってるんだよ………」
レモン色の半袖Tシャツにオリーブカラーのパンツ、椅子に掛けてある空色のパーカーを指差しながら苦笑いした。