異世界転移
初投稿です。
気長にお願いします
本日2話更新です。
青い空に白い雲、そして草原。目を凝らしてよく見ると遠くに森があるようだ。
今の暑さは春先の過ごしやすい気温といったところか。草は柔らかく地面も湿っていないそこに腰を下ろした。ふわりと吹く風が気持ち良い。のんびりしている雰囲気の中、現実逃避をやめて現状確認をすることにした。
俺の名前は、水無月 葵。これでも一応女。数え間違いじゃなければ今日は誕生日で28歳。とりあえず今はハンドメイド作家。
派遣先で元同僚にミスをなすりつけられ先日クビになった、学もなければ資格も無い。ただ趣味のハンドメイドをコソコソ副業でやっていたくらいか。それなりにリピーターの方がいるくらいだが、それを本業にしても都会で暮らすにはお金が足りない。
田舎であれば細々とやっていけるくらいは稼いでる。早々に都会から離脱することを決め、この半月引越しの準備を進め今日を迎えたのだが…引越し先の一軒家の1部屋に荷物を搬入しようと一歩踏み込んだらここに居た。いや、意味がわからん。
搬入予定だった大量の荷物を横目に、派遣時代の名残で付けている腕時計で時間を確認する。9時10分。午前中だな。
ピロン
「 っ!? 」
突如聞こえた声に周囲を確認するも誰もいない。
ピロン
「 また鳴った!? 」
ポケットに入れていたスマホに通知はなかった。まさかと思い仕事用のタブレットを開いて固まった。
【 ようこそ、異世界 ニルヴァル へ。アプリを開いて設定をしてください 】と表示されていたからだ。…一度再起動させようと電源を落とそうとした瞬間、眩い光が辺りを照らすと同時に白い空間に荷物ごと飛ばされた。
「 こらっ!!! 素直にアプリを開きなさいよ!!! 」
「 いや、ウイルスとか怖いから無理だろ……ってか誰だよ!? 」
目の前にいたのは頭に輪っかを乗せた女性だった。
「私はこの世界ニルヴァルの創造者ステラ、この世界の調整していたら手が滑って貴女の家と繋いでしまったのよ。そしたら貴女が扉を越えてきてしまったってわけ」
おい、手が滑るってどう言うことだ?
「 はぁ? 異世界転生系の小説は読むけどここがそうなのか? 普通、家の扉が異世界に繋がってるとは思わないから!それよりも元の世界に戻れるのか? 」
「 戻れないことも無いけれど……間違えて繋いだ以上、今 戻しちゃうとこの世界崩壊しちゃうのよね…… 」
お、お前、遠い目をしながら物騒な返答をするんじゃない…
「 俺には居座る理由もないし、世界崩壊しようと関係ないんだけど? 」
「 そこを何とかお願い! この世界にはエルフやピクシー、獣人など多種族たちが生きてるの。貴女にはこの世界でハンドメイド作家で過ごしてほしいの! これを作ったのは貴女でしょ? 」
藤の棚から取り出した箱に入っていたのは、青と白のグラデーションで〔 Hope ♫ Future 〕と編み込まれたミサンガがあった。
「 なんで俺がハンドメイド作家って知ってんだよ!? それにそのミサンガ…作家になった当初に注文されたものじゃないか!! 」
「 私が注文したからよ。あの時専任で来てもらえないか交渉したけれど貴女は応じてくれなかったから、貴女をこちらに呼ぶためにこの家に繋いだの。タイミングはギリギリだったけど 」
「 “ 間違えて繋いだ “ ってさっき言ってなかったか? 確かにそんな交渉してきた人がいたなぁってくらいには覚えてるが…あれはあんた…いや、ステラだったのか…そうか… 」
「 考え直してもらえたら助かるのだけど…どうかしら? 」
「 …わかったよ、但し条件がある。作家である以上、生活基盤がしっかりしていないと作業はできないし、材料などの資材調達をどうするかだが… 」
「 作家として必要な材料と資材などはこのアプリのスキルで調達できるわ。まず使用者設定をしないと困るのは貴女よ? 言葉通じないし文字も読めないわよ? 」
「 マジかよ…なら、設定するか。 」渋々アプリを起動させ設定を進めていくと、とある項目に気づいた。
「 ステラ、この 【■●■◆】 ってなんだ? 」
「 あ、あー…その機能は地上に降りてからじゃダメかしら? それに貴女がここに居られるのも、もう僅かなの。あとはアプリを使って覚えてちょうだい! 」
「 今教えられないなにかがあるのか? って、もう時間がないだって!? 俺はどうすればいいんだよ!!! 」
「 とりあえず危なくないところへ降ろすから、心配しないでちょうだいね? では、またどこかで! 」
言い逃げされたと同時に、眩い光に照らされ 元居た草原に降り立った?と思いきや、今度は森の中に居た。そして大声で叫ぶ。
「 元の草原じゃなく森の中って、俺にどうしろってんだよー!! ステラのバカやろー!! 」