夏の夢
15日4時
暗闇を奥からノックする
光は希望
どうもビックバンで宇宙は誕生したらしい
そこにはどうやら
0に0を足して無限にさせてしまう数の学問が潜むらしい
私はまさにそこにいる
シアターで始まろうとする一つの物語
私はまさにそこにいる
暗闇が灰色になり始めた
光は恐怖
私の知らない物語が始まる
思わず身震いする
これから 始まるのだ
暗闇は 温もりを蓄えだし
光は 過剰に温もりを蓄えている
暗闇は太陽ヘと向かう
光は弾けた
暗闇に月は
シャンシャン
笑う
月は屍のあるその土を 趣を添えて照らす
風よ 秋へと紙芝居を飛ばせ
羽衣をも飛ばしてしまえ
月よ そのまま待っていろ
明日は勝つ
雲は奴を守っている
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15日5時
大海原が朝日を蹴り上げた
まだ緑を着た山々が
月を吸い込み
誰かに引き継ぐ
シャンシャン
合わせて
真実を知る地が震える
先端が奇妙に曲がったナイフ
元に戻さなくては
お前にもう一度使命を与えよう
私の足裏を馬鹿にする土と
私をつむじから引き裂く月と
あぁ 早く
あぁ 早く
海原よ 月をこの大空に蹴り上げろ
蹴り上げるのはもう最後で良い
目一杯まるくしておくと良い
クレーターを添えて
なぁ 太陽よ
どうしてあなたはそんなに輝いていられるのでしょうか
私をどうか よろしくお願いします
もうそちらにいますでしょうか
かわいがってくれていますでしょうか
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15日17時
空が残酷な赤に染まってい
ああ 悪くないではないか
身体が内側から
ドンドン ドンドン
さぁ もっと盛り上げよ
コオロギよ
鈴虫よ
全身を震わせろ
ほぅら もうすぐやってくる
聞こえるぞ
シャンシャン シャンシャン
どんな顔をしているだろう
どんな顔をするだろう
手には獣を抱えている
真実を知る地が震える
屍のあるその土は
私の鼻腔を蕩かす
そして大きなうめき声をあげながら、大海原は蹴り上げた
月は血を流していた
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15日18時
月はもう死んでいた。血を流して死んでいた。
それでも月は昇った。
血が山々の隙間から流れている。屍はそれを飲んで笑っていた。
私は愕然とした。
私がするはずだったことを、地球の裏側で誰かがやった。
私が殺めるはずだったのに。
ひたすら絶叫した。それに合わせて地が揺れる。
月よ、誰にやられたのだ。
月は答えない。それでも時計の針が進むごとに、月は昇る。
半分になって。
地球の裏側に意識を及ぼす。
私は駆られた。
月を刺した奴を見つけねば
今度は 私が奴を
更に、燃える。ナイフは鋭利さを増し、興奮していた。
待っていろ、今すぐ行く。
そして、屍は消えていた。
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15日1時
私は、公園のベンチに座っていた。ひんやりと私の思惑を冷ましてくれる。それでも月が、それを温めなおす。
「お前になんかできるもんか」
「現実を見るべきだ。その細い目で、しっかりと」
ポケットにはナイフが入っている。血を拒絶している。
それでも月光に照らされたナイフは、徐々に鋭さを増す。今、ナイフを湿らした一粒の水滴が、それに拍車を掛ける。
私が消えたらどうなるのだろう。
大きな夢が叶うなんてこと、あるだろうか。
ねぇ。
地球の質量が小さくなって、少しは身軽になるだろうか。
地球の軌道が変わってしまうだろうか。
それとも太陽の元へいけるだろうか。
ついに私の腹は赤色に染まっていた。温もりを蓄えすぎた月の光は、私の思いと患部を明らむ。
影が横長になるのを眺めながら、私は冷たい地面にかえっていった。
…………
私は、横たわっている自分を眺めた。
あやめた。
うろたえる。
誰かに見られてはいないだろうか。
周りを見るが、人影はない。無理もないだろう。夜の1時に誰が公園なんかに来るだろう。しかし、甲高い笑い声が耳の奥を刺激した。
シャンシャン シャンシャン
見られた。見られていたのだ。
それに私をこんな目に遭わせたのは私ではない。奴ではないのか?
私は急いで自分を土に埋めた。そして、水道でナイフの血を流す。
先端が曲がってしまったが、十分だろう。そのとき、ナイフは赤い汁のおかわりを懇願した。
月よ そこで待っていろ。
私の人生には希望が見いだせなかった。つらかった。
しかし、今はある。夢がある。
太陽よ
私をどうか よろしくお願いします
もうそちらにいますでしょうか
かわいがってくれていますでしょうか
夢が叶うなんてこと、ありますでしょうか