表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夏の夢

15日4時


 暗闇を奥からノックする

 光は希望

 どうもビックバンで宇宙は誕生したらしい

 そこにはどうやら

 0に0を足して無限にさせてしまう数の学問が潜むらしい

 私はまさにそこにいる

 シアターで始まろうとする一つの物語

 私はまさにそこにいる


 暗闇が灰色になり始めた

 光は恐怖

 私の知らない物語が始まる

 思わず身震いする

 これから 始まるのだ


 暗闇は 温もりを蓄えだし

 光は 過剰に温もりを蓄えている

 暗闇は太陽ヘと向かう

 光は弾けた


 暗闇に月は

 シャンシャン

 笑う

 月は屍のあるその土を 趣を添えて照らす

 風よ 秋へと紙芝居を飛ばせ 

 羽衣をも飛ばしてしまえ

 月よ そのまま待っていろ 

 明日は勝つ

 雲は奴を守っている


 __________________________________


15日5時


 大海原が朝日を蹴り上げた

 まだ緑を着た山々が

 月を吸い込み

 誰かに引き継ぐ

 シャンシャン

 合わせて

 真実を知る地が震える


 先端が奇妙に曲がったナイフ

 元に戻さなくては

 お前にもう一度使命を与えよう

 私の足裏を馬鹿にする土と

 私をつむじから引き裂く月と


 あぁ 早く

 あぁ 早く

 海原よ 月をこの大空に蹴り上げろ

 蹴り上げるのはもう最後で良い

 目一杯まるくしておくと良い

 クレーターを添えて


 なぁ 太陽よ

 どうしてあなたはそんなに輝いていられるのでしょうか

 私をどうか よろしくお願いします

 もうそちらにいますでしょうか

 かわいがってくれていますでしょうか


 ____________________

15日17時


 空が残酷な赤に染まってい

 ああ 悪くないではないか

 身体が内側から

 ドンドン ドンドン

 さぁ もっと盛り上げよ

 コオロギよ

 鈴虫よ

 全身を震わせろ


 ほぅら もうすぐやってくる

 聞こえるぞ

 シャンシャン シャンシャン

 どんな顔をしているだろう

 どんな顔をするだろう

 手にはナイフを抱えている


 真実を知る地が震える

 屍のあるその土は

 私の鼻腔を蕩かす


 そして大きなうめき声をあげながら、大海原は蹴り上げた

 








 月は血を流していた


_____________________

15日18時


 月はもう死んでいた。血を流して死んでいた。

 それでも月は昇った。

 血が山々の隙間から流れている。屍はそれを飲んで笑っていた。


 私は愕然とした。

 私がするはずだったことを、地球の裏側で誰かがやった。

 私が殺めるはずだったのに。


 ひたすら絶叫した。それに合わせて地が揺れる。

 月よ、誰にやられたのだ。

 月は答えない。それでも時計の針が進むごとに、月は昇る。

 半分になって。


 地球の裏側に意識を及ぼす。

 私は駆られた。

 月を刺した奴を見つけねば

 今度は 私が奴を

 更に、燃える。ナイフは鋭利さを増し、興奮していた。

 待っていろ、今すぐ行く。


 そして、屍は消えていた。


_____________________

15日1時

 

 私は、公園のベンチに座っていた。ひんやりと私の思惑を冷ましてくれる。それでも月が、それを温めなおす。


 「お前になんかできるもんか」

 「現実を見るべきだ。その細い目で、しっかりと」


 ポケットにはナイフが入っている。血を拒絶している。 

 それでも月光に照らされたナイフは、徐々に鋭さを増す。今、ナイフを湿らした一粒の水滴が、それに拍車を掛ける。 


 私が消えたらどうなるのだろう。

 大きな夢が叶うなんてこと、あるだろうか。

 ねぇ。

 地球の質量が小さくなって、少しは身軽になるだろうか。

 地球の軌道が変わってしまうだろうか。


 それとも太陽の元へいけるだろうか。






 ついに私の腹は赤色に染まっていた。温もりを蓄えすぎた月の光は、私の思いと患部を明らむ。 

 影が横長になるのを眺めながら、私は冷たい地面にかえっていった。


 …………

 

 私は、横たわっている自分を眺めた。

 あやめた。

 うろたえる。

 誰かに見られてはいないだろうか。

 周りを見るが、人影はない。無理もないだろう。夜の1時に誰が公園なんかに来るだろう。しかし、甲高い笑い声が耳の奥を刺激した。


 シャンシャン シャンシャン


 見られた。見られていたのだ。

 それに私をこんな目に遭わせたのは私ではない。奴ではないのか?

 私は急いで自分を土に埋めた。そして、水道でナイフの血を流す。

 先端が曲がってしまったが、十分だろう。そのとき、ナイフは赤い汁のおかわりを懇願した。


 月よ そこで待っていろ。


 私の人生には希望が見いだせなかった。つらかった。

 しかし、今はある。夢がある。


 太陽よ

 私をどうか よろしくお願いします

 もうそちらにいますでしょうか

 かわいがってくれていますでしょうか

 夢が叶うなんてこと、ありますでしょうか



 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ