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 久しぶりに書きました。

 全部書き上げていないので、不定期更新になりますが、最後までお付き合いいただけるとうれしいです。

 ずっと見ていた。




 楽しそうに笑う彼を。


 いつも仲間に囲まれている彼を。




 だから夢のようだった。


 --楽しい夢をありがとう。




「え?」


 授業を終えて教科書をしまっている私は、手を止めて、声をかけてきた同級生を見上げた。

 特待クラスの中では成績こそ普通だが、その目立つ風貌と高貴な生まれで一目置かれているそのクラスメイトは、人懐っこい笑顔を浮かべてもう一度言った。


「だから、俺の地元の友人がエミリちゃんを紹介してほしいっていうんだよ。放課後時間空いてない?」


 地元の友人。


 そう聞いて思わず怪訝そうな顔をしたのを責めないで欲しい。ここ魔力や武術に優れたものが通うグランピア学園は、徹底した実力主義で、学園内にいる間は貴族も平民も関係ない。流石に王族が入学した時には多少の特別待遇はあるようだが、今現在、在籍している王族はいない。町医者の娘である平民中の平民エミリと侯爵家令息である彼、ファミルが普通にクラスメイトとして友人関係を築けるくらいには平等だ。


 しかし、彼は地元に帰れば侯爵家嫡男。貴族同士の付き合いはもちろんあるだろうが、「地元の友人」なんているのだろうか。


 不思議そうな私の顔を見て、苦笑しながらファミルは補足する。


「うちの侯爵領は、いくつかに分かれていて、それぞれ領主が治めてるんだ。それを統括しているのが我が侯爵家ってわけ。友人は、その領主のうちの息子ってわけ」


「なるほど。そういうわけ」


 ん?


「それじゃあ、そのご友人は、男子ってこと?」


「そう、そういうわけ」


 おそらく戸惑った顔をしてしまっただろう。自慢ではないが、地方領主と言えば、曲がりなりにも貴族だろう。身分は関係ないとはいえ、それは友人関係においてだ。貴族令嬢は基本的にかわいい子が多い。ひがみではない。事実だ。小さいころから所作を叩き込まれ、自分を美しくみせる方法を叩き込まれている。だから、学園内でも小さいころから目の肥えた貴族令息がお付き合いしているのは、同じ貴族令嬢か、かわいらしい平民女子だ。自分はどちらにも当てはまらない。


「……ええっとお」


「深い意味は考えなくていいよ! あほだけど、いい奴だから! 脳筋だけど、いい奴だから! 空気読めないけど、いい奴だから!」


「……はあ」


「ほんとに? ありがとう! じゃあ、六限が終わったらカフェテリアで待ってるから!」


 肯定とも否定とも、ただのため息ともつかない声を出した私に大急ぎでそう言うと、これまた大急ぎでファミルは教室を出ていった。これから始まる今日の六限は体育なので、出ていくのはいいのだが、もう少し説明してほしかった。


「あらあら、ファミルが?紹介したいっていうことは他クラスよね」

「そうね。学年が違うのかも」


 6限の体育。今日の特待クラス女子の体育は、魔法術だ。男子は剣術だという。武術に特化した騎士クラスや魔術に特化した魔法クラスなどと違い、特待クラスは言わばいろいろな分野の幹部候補生なので、オールマイティに様々な分野をこなす必要がある。


 ふわふわとした光を手にのせて、様々な薬品にかざしながら親友であるユナはおっとりと言った。ユナは地元に帰れば公爵令嬢。隣の帝国の皇子と婚約しているというやんごとなき姫だ。


「あそこの侯爵領は今は本領以外4つに分かれているけど、そこの子息達で今、この学校に在籍してるのは3人ね。まあ会ってみたらいいんじゃない? 向こうもファミルの友人におかしなことをしようと思ったりはしていないだろうから」


 ユナはふふっと笑って私を見た。そんなことまで把握しているのか。流石、国内はおろか隣国の貴族まで全て頭に入っているという噂は伊達ではない。意味ありげな笑みに引っかかるものを感じるが頼りになる親友のアドバイスには素直に従うことにした。


 まあ、自分で言うのもなんだが、勉強は唯一と言っていい私の特技だ。きっとファミルから成績上位者の名前を聞いたのだろう。私は平民だから誰かにことさら親切にしても権力バランスが崩れることもない。



 放課後、着替えてカフェテリアに向かうとファミル達はもう待っていた。背の高いファミルは遠くから私を見つけると大きく手を振った。人混みの中でも長身とその風貌は目を惹く。

 チラリと周りの女子生徒の視線を感じたが、私だとわかると興味を失ったように視線を外した。ファミルが誰にでも気安いのはよく知られている。同じ特待クラスで平民の私は彼女達から見たらただのクラスメイトの一人でファミルがどんなに親しげにしても脅威ではないのだ。


 ファミル達がいるテーブルに近づいていくと、ファミルの横に一人の男子生徒が座っているのが見えた。


「あ」


 思わず声が出た。


 --知ってる、この人。



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