48. 公園のたたかい(3)
かんだかくひびく長いひとすじの鳴き声とともに、公園入口から大きなものが、ひづめの音を高く打ち鳴らして駆けてくるのが見えた。
「なんだ、あれは……?」
「まさか!」
そう。そこには、もとの大きさにもどったカムノオオツノジカ像がヒロユキとあすか、それにヨウスケまで背にのせ、本物のシカよろしく、一散に博物館めがけて駆けてくるすがたがあった。
「――ねえ『ツノキチ』。もうちょっとやさしく駆けられないの?ぼく、おしりがいたくてしょうがないよ」
≪ぜいたく言うなよ。しかたないだろう、ボクだって人間を背中に乗せるだなんて初めてなんだから。……それに、やっぱりなんだかなあ、その「ツノキチ」って名前。もうちょっとセンスのいい名前なかったの?≫
「そぉ?わかりやすいのが一番だと思ったんだけど。きみには立派なツノがついてるしね」
≪そのまますぎるだろう、まったく。――それよりこれからどうするの?みんな、ボクたちを見てキョトンとしているよ≫
「そうだね。どうしよう?あすかちゃん?」
「どうって、そんなこと聞かれてもこまるよ。あたしたちが、かたじけなくもツノジカさまのお背中にのせていただくなんて……ねえ、お兄ちゃん」
「うん、そうだ」
兄妹は、ふたりしてすっかり緊張してしまっていた。
(そんな。たいしたことじゃないでしょ?)
と言いたいヒロユキだったが、実際にシカの登場によって、あれほどはげしいたたかいをくりひろげていたツノジカ団とネズミ団が、ともにあらそいの手を止めて、こちらに見入っている。
「なんてこと……」
「奇跡だ」
おそれて、うなだれるものもいれば、ひざまずき感激の涙を流すものまでいた。
(――あれ?もしかして登場するだけで効果満点だったかな?)
ネズミ団も、ほとんどがもとはツノジカ団出身のものたちであり、実際に動くツノジカ像を見たことによって、すっかり戦意がなえてしまったようだ。
] そんななか、ひとり……いや、一匹だけ怒りくるってチュウチュウさわいでいるものがいる。もちろん、カムノキヌゲネズミ像のボナパルトだ。
≪ちくしょう!ツノジカのやろう、こどもに名前をつけてもらいやがったな!ずるいぞ!自分ばっかり!
――ええい!展示物たち、あいつをかみくだいてやれ!≫
シッポふりふり指示をあたえるが、もともと博物館でスターだったツノジカ像がさらに名持ちになった状態に、さからう気も起きないのか展示物たちは、じっとしている。
≪なにしてる!?おいヒジカタ、あのシカ野郎におそいかかれ!≫
しかし、もはやヒジカタも動くツノジカ像に感動して見入っていた。
ネズミの声など、もうとどいていなかった。
≪……くそぉ!この恩知らずどもめ!こうなったら、やぶれかぶれだ!≫
ネズミは最後の力をふりしぼり、ただ一匹、ヒロユキたちにおそいかかるが、もはや名持ちとなったツノジカにはかなわない。
ふりかえったツノキチの後肢で蹴上げられると
≪チュウッ!≫
もとの小さな展示物にもどった。




