34. かむのの魔女(3)
昨日今日のあいだにかむので出会ったふしぎなものたち……ツノジカ団やヒジカタ、小鬼やネズミ……そのだれよりも、目の前にいるこの女子高生ふうの「もの」はおそろしいと、ヒロユキは感じた。
「お願いだから、小鬼たちにそんなことしないでください。小鬼たちは親切でぼくに言ってくれたんです」
おもわずヒロユキが言うと、魔女はスマホから目をはなして、ふしぎそうに少年の顔を見た。
「親切?あの小鬼たちが?」
その目のおくには赤い炎がやどっているように見えた。
「――ふむ、ウソではないようだ。あんた、かわってるね、あの小鬼どもにカネの損得ぬきで親近感を持たれるなんて。そんな人間めったには……ああ、そうか。あんた精霊との親和性が高いんだね。サカイモノというほどではなさそうだが」
(サカイモノってなんだ?あのネズミも言ってた)
魔女はひとり、合点がいったようで
「なるほど。それであのキヌゲネズミがあんたに執着してるんだね。いまごろ、あんたを逃したことを後悔してるにちがいない」
ヒロユキはおどろいた。
「あのネズミ像のことを知ってるんですか?」
「当然だろ。あたしはこのあたりじゃ一番古株の魔女だよ。かむののことで知らないことなんて、まあないさ。あのおしゃべりなネズミ像は、あそこの博物館では、もっとも早くに意識に目覚めた展示物精霊だね。なにせ、あの博物館の立っている公園は、むかしの古墳あとだからね。かむのでも特に神気がたまっている場所だから、ああいう存在が生まれてもふしぎじゃないさ。
――ただ、あたしはあいつはキライだね。かげでちょこちょこ動いてばっかりで、根性がみみっちくていけないよ。かむのを支配したいなら、ダイナマイトかなにかぶらさげて、市役所に正面から乗り来むぐらいのスケールのことをやってもらいたいもんだ」
(なんてあぶないこというんだ。まともじゃないよ)
物騒な魔女のペースにのって話をしてはいけないと、ヒロユキは強引に話をもとにもどすことにした。
「――それで、ほんとにあなたはツノジカの盗難にかかわっているんですか?」
ヒロユキの直球なもの言いに、魔女はニタついて
「ずいぶんダイレクトに聞いてくるじゃないか。命知らずだねえ。あたしにそんな口をきくニンゲンは五十年ぶりだよ。――ふふ、ツノジカ団のバカモノどもじゃあるまいし、あたしが『あんなもん』ぬすむはずないだろう。生身のシカなら儀式のいけにえにでも使えるが、あんなニセモノのシカなんて、あたしには何も価値がない」
「あなたが欲しくなくとも、あなたの家族やともだちならどうですか?」
「あたしはひとりもんだ。友達もいない」
「じゃあ……お客さんはどうですか?小鬼たちのような『商売上のつきあい』とかで」
「商売上の知りあいについては大事な個人情報だ。言えないね」
「言えない?――ということは、その商売上の知りあいのなかに犯人がいるんですか」




