29. くらい部屋(5)
「そんな!そんなひどいことをして、博物館の人気者になれると思ってるの?」
≪おまえたちを閉じこめてさえおけば、だれも気づきやしないさ。この地下の部屋はオレさまの力によって、ここで何がおこなわれているか、よその人間には気づかれないようになってある。だからツノジカ団の連中も、ここには注意がおよばないんだ。
おまえもおまえの親もこのままだと、一生ここと同じ暗い部屋に閉じこめられたままだぞ。それは死ぬよりもつらいことだ≫
こども相手におそろしいおどし文句をあびせかけるネズミに、ヒロユキが言いかえすこともできずぶるぶるふるえていると、はたからヒジカタが
「……少年。ところで、そこで光っているものはなんだ?」
と、いぶかしげにヒロユキの着ているトレーナーのわきをゆびさした。
「えっ?」
見ると、それは
「あっ、ひっつきむしだ」
ジェーンをかばって抱きかかえたときにだろう、彼女の服にいっぱいついていたオナモミの実がいくつかヒロユキの服にひっつっていた。その実がいま、ふしぎなことにまるで小型のLED照明のように規則的に点滅している。その灯りはどんどん強くなって……
「イロユキ、見―つけた」
声がしたと思った瞬間に
ドカ――ン!
爆音とともに、地下室に煙が充満した。
「敵襲だ!みんな来い!ネズミさまをお守りするんだ!」
ヒジカタの声がひびく。
≪あわてるんじゃねぇ!これは煙幕だ!相手のさそいにのるな!そのこどもを逃がさないように気をつけろ!≫
ネズミは声を張り上げて、部屋に入ってきたネズミ団員たちに注意するが、その声はまったく彼らには聞えない。
≪バカ!これはオレさまが狙いじゃない、あのこどもだ!あのこどもを連れ去られないように気をつけろ!≫
そんな注意もむなしく、ネズミ団は大事なネズミさまを守るのに気を取られてヒロユキのことをすっかりわすれていた。
そしてしばらくして煙がうすれたとき、地下室にはもう少年のすがたは無かった。




