28. くらい部屋(4)
「かむのの地に必要なのはツノジカではなくネズミさまだ。われわれはこのかむのの地をネズミさまがみちびく夢の土地にすべく活動を続けている」
ヒジカタのことばに
≪ふふふ、かわいいいやつらだぜ。オレの手足として思うがままにうごいてくれる。こいつらを手ごまに加えたオレさまは、すこしずつ、ほかの展示物たちにもハナシをつけ協力を取り付けてきた。オレさま以外にも、今の境遇に不満を持っている展示物はいっぱいいるからな。こうして、いずれ、あのツノ野郎からセンターホールでの展示を勝ち取ってやろうと画策をつづけてきたんだ。
……それをなんだ?あの野郎ぬすまれなんかしやがって、腹の立つ!≫
「えっ?ツノジカのことがきらいなら、ぬすまれていなくなったのは好都合なんじゃないの?」
ヒロユキがいぶかしむと、ネズミはにがにがしそうに
≪オレさまも最初はぬすまれなんかしやがって、ざまあみろという気分だったけどな。これだけ大きなニュースになって、しかもかむの市民みなが心配しているだと!ハラが立つじゃないか。どこのどいつがあいつをつれさったか知らないが、何であのツノ野郎をぬすんでオレをぬすまない!?オレさまの方が、ちっちゃくてずっとぬすみやすいぞ!
こうなったらオレさまは必ずあいつを見つけ出し、二度と市民の前にすがたを見せられないようにコテンパンにこわしといてやるんだ!そうでないと、まくらを高くして眠ってもいられねぇ!≫
なんて乱暴なやつだ。かわいい見てくれに合わないあぶないやつだぞ。
≪――しかし、オレさまもてっきりツノジカの誘拐には小鬼たちがかかわっていると思ったんだが、ヒジカタの話によると、カネをちらつかせてもあいつらは認めなかったらしい。おかしいんだ。やつらはなんだかんだ言ってもカネには弱い連中なんだが……。
もし小鬼じゃないとすると、こんなことでコチラ……人間にかかわることをするのは、アチラでも「あいつ」ぐらいしかいない。しかし、いまさらあいつがツノジカなんぞに興味を持つはずはないんだけどな……≫
ヒロユキに言い聞かしているのか、ひとりごとを言っているのかはっきりわからない感じでネズミはぶつぶつぶつぶつと、しばらくつぶやいていたが、そのあとはっきりと
≪「おまえ」はなにか知っているはずだ≫
と、ヒロユキをにらんだ。
≪おまえはオレさまから見ても普通じゃない。おまえは、オレさまの人間に言うことをしたがわせる術がまるで通じない。オレさまの声をこれだけはっきりと聞きとることができるというのにだ……おまえ、もしかするとサカイモノか?〉
サカイモノ?なにそれ?
≪――ふむ。いま、かむのにいる最も純度の高いサカイモノはあの小癪な医者がおさえているから手が出せないが、代わりにおまえが協力すれば、オレさまの力はもっともっと増して、博物館どころか、このかむの全体を支配することさえできるだろう。どうだ?オレさまに協力しろ!≫
「知らないよ、そんなこと。ぼくみたいなこども一人が協力したからって、そんな力が手に入るわけないじゃないか?それより、おとうさんとおかあさんをはやく返して!」
≪……おまえの両親は無事だ、安心しろ。地下の別室にいる。オレさまはさからわない人間をきずつけたりすることはない。ネズミができてるからな。ただ、おまえがオレさまにしたがわないというのなら話は別だ。それなりにつらい思いをおまえの両親に経験してもらわないといけないかもしれない。あんまり、おれの言うことを聞かないようだと、おまえの両親を剥製にしてやってもいいんだぞ≫




