27. くらい部屋(3)
≪もともとオレさまは、このかむののあたりに二万年以上前に住んでいたカムノキヌゲネズミという、それはそれは貴重なネズミの化石をもとに復元されたレプリカ像だ。
この博物館ができたときからいる、もっとも古い展示標本なんだぜ。いまでこそ、ちょっとばっかし毛がぬけちまったからこんな地下の物置でひかえているが、むかしは大人気でなぁ。それこそ、オレさま見たさにかむの中の市民が博物館におしよせたもんだ。
それが、ちょっとばっかし体とツノが大きいからってなんだ!あんな、ぽっと出のツノジカ野郎にばっかし注目が行って、オレさまとしては大いに不満だ!なんといっても、かむの市立博物館のナンバーワンとして、展示室の真ん中に置かれていなければならないのはこのネズミさまのはずだからだ!≫
いままで満足に自分の言うことを聞いてくれるものがいなかったせいだろう、たまりにたまったうっぷんをぶつけるようにネズミはどなった。
≪しかも、あのシカ野郎にはツノジカ団だとかいって、あがめたてまつるバカなかむの住民までいやがる。おがむのならまず第一にオレさまだろう!?それをこんな暗い物置に放ったらかしのままにしやがって、バチアタリな野郎どもだ!≫
つまり、このネズミはむかし人気があった展示物だけど、いまはツノジカに人気を取られて、しかもこの地下倉庫にしまわれたまま何年もほったらかしの目にあっていたらしい。
「……えっ?なに?それでくやしいから、このひとたちをつかってツノジカ団にいやがらせをしていたの?」
≪いやがらせ?なにを言う。これはまっとうな権利の主張だ!≫
ヒジカタははたから
「わたしはツノジカ団の一員として博物館の巡回をしているときに、えらばれてネズミさまのお声をいただいたんだ。最初はなかなか受け入れられなかったんだがね、ネズミさまの啓示にみちた短いお言葉をいただいているうちに、自分が今までどれだけまちがった考えにとらわれていたかがよくわかったんだ。われわれが本当にあがめるべきは、いくらあがめても沈黙をつづけるツノジカなどではなく、こうして言葉をあたえてくださるネズミさまだと!」
ヒジカタが自分をたてまつる言葉を気持ちよさそうに聞いていたネズミ像は
≪へへへへへ。こんな地下室にとじこめられた気晴らしに、シカ野郎の悪口をがなり立てているときに、たまたまこいつが地下通路をとおったんだ。オレさまはかむのの神気を受けているうちに、ただの展示像を超えた強い意志と力を持つようになっていたし、こいつはコトノハつかいだけあって、オレさまの声を多少だが聞くことができたんだ。
オレさまが精霊として、こいつらに力をあたえてやることができたことも大きかった。ヒジカタをきっかけとして、じょじょにオレさまのもとには自由に動かせる人間たちが集まっていったんだ≫




