26. くらい部屋(2)
「……えっ?」
ヒロユキは急に聞きなれない声がしたので、ギョッとしてあたりを見わたした。
おかしい。この部屋にいるのはヒジカタと大男、それに自分だけのはずだ。ほかにあるのは、おおぜいの古ぼけた剥製や模型だけ……。
声のした方にあるのは
「……ハムスター?」
≪ハムスターじゃねぇ!バカヤロウ。オレさまはりっぱな古代ネズミだ!≫
「は、はくせいがしゃべった!」
ヒロユキのおどろきの声に、ヒジカタは
「おお、やはりきみはその方の声が聞こえるのだね!――その方は剥製ではないよ。紹介しよう、こちらにおられるのがカムノキヌゲネズミの復元像であり、われわれ『ネズミ団』の主、ネズミさまだ!」
どう見ても、ただのハムスターぐらいにしか見えないネズミ像は、心なしかほほをふくらましたように思えた。
≪オレさまの声をはっきりと聞き取れる人間がやっと見つかったな。よろこばしいことだ。ふつうの人間はオレさまの発する声を、ちっとも聞くことができない。たまに、そこにいるヒジカタのように、ちょっとは聞えるものはいるが、そいつにしても、ほんの断片的、それこそ百しゃべってひとつかふたつ伝わる程度だからな≫
ハム……ネズミ像の言う通り、ヒジカタは、ネズミ像の言うことに神経を注意しているが、その内容をはっきりと聞きとることはできないらしく、けげんな顔つきのままだ。大男の方などは、直立不動で敬意ははらってはいるが、何も聞こえていないのがまるわかりだ。
≪まあ、ぎゃくにちょっとしか聞こえないおかげでこいつらはオレさまの言葉を、とても貴重なありがたいものと思いこんでいやがるから都合がいいぜ!ゲヘヘヘヘッ≫
下品な笑い方をするネズミに
「そういう言いかたは良くないよ」
思わずヒロユキは注意してやった。
「少年、きみはネズミさまのおっしゃることがすべてわかるのだな。なんとすばらしい。奇跡だ」
奇跡でもなんでもない、こんな嫌なやつっぽいネズミの言うことなんか聞こえたってしかたない。
ネズミはヒロユキの顔をしばらくおかしそうに見ていた(と思う。たぶんだ)が
≪――よし!せっかくだから、おまえにはオレさまのことをくわしく聞かせてやってもいいだろう。ありがたく聞きやがれ!≫
と、えらそうに語りだした。




