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消えたツノジカ―ヒロユキとツノジカ団―  作者: みどりりゅう


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25/53

25. くらい部屋(1)

(いた)っ!」

 袋から乱暴にほうり出されて、ヒロユキは初めて声を上げた。


 すでに運ばれているとちゅうで薬の効き目は切れて、意識はもどっていたが、ここでヘタにあばれても舌をかみそうになるだけということを、前にツノジカ団に運ばれたときに知ったのでじっとしていたのだ。


(まったく……こんな袋に入れられて二度も運ばれるだなんて……ぼくは収穫されたおイモじゃないんだぞ)

 わが身にかかった不幸を、心の中でぼやきながら見わたすと、あたりはうす暗く、ほこりだらけでカビくさかった。天井には、消えかけで点滅している蛍光灯があった。


「やあ、少年。手こずらせたな」

 後ろに立っているのは、ヒジカタと黒い大男だった。ヒジカタの服はボロボロだ。

「あのおじょうさんにやられてしまったよ。まったく、ちょっと見ない間にあれだけたくみにコトノハをあやつるようになっていたとは。きみがとらわれたと知って、あわててくれたおかげでスキができ、なんとか逆襲することができた」


「あすかちゃんにケガさせたの!?」


「――さあ、どうかな?私もタイヤにひろがった炎に(じょう)じて逃げ出すので精一杯だったからな」


 なんともないような顔をして言いはなつヒジカタに、ヒロユキは思わず

「こどもにケガをさせるなんて、はずかしくないの!?」

 と、めずらしくどなった。


 ヒジカタは、ちょっとだけ気まずげな表情で

「残念だが、大きな目的のためにはしかたのないことだ。こういった大きな取り組みには必ず小さな事故がつきまとうものだよ」


 しらっとしたもの言いにヒロユキは怒りをおぼえたが、小学四年生のあたまでは、目の前のおとなに何をどう言ってやったらよいかがわからない。


「そんなことよりきみは今『えらばれて』この部屋に連れてこられたのだ。まずはそのことをよろこぶべきだぞ。この部屋に入ることのできるのはわれわれの仲間の中でもごく一部だ」


「ここはどこ?」


 窓ひとつない、うすぐらい空間。

 ヒジカタたちのうしろに乱雑に置かれてあるのは


「あれは……標本?」

挿絵(By みてみん)

 それらは博物館で見たワニや哺乳類、昆虫の標本たちだった。サメのホルマリン漬けとかもある。

 ただし、よく見るとここにあるものは、どこか部分的に欠けていたり、ゆがみや汚れがある。


「そう。ここはかむの市立博物館の地下の倉庫の一室だ。欠損(けっそん)汚損(おそん)が生じたとして展示からは外されてしまった標本、展示物の(たぐい)が保管されている」


「博物館の地下?でも博物館の中はツノジカ団が管理しているんじゃないの?」


≪……ここには、オレさまのちからでツノジカ団の注意が届かないようにしてあるからな。まあ、そんなことをしなくても、あのマヌケどもは上の展示スペースばかり大事にして、このオレさまのテリトリーになんか気を入れてやがらねぇ……≫



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