24. 小さな盗っ人(ぬすっと)たち(7)
それに対してあすかが
「あまつかぜ!」
手印を切ると、青く光る風がその土をなぎってはらった。
「わっ!」
「ちっ!」
ヒジカタはヒロユキを横におしすてると、うねった土の波に乗って少女におそいかかる。
うねりを持った土くれと光る風がぶつかり合った衝撃が、燃えるタイヤをふきとばした。
しりもちをついたヒロユキは二人のコトノハつかいの人間ばなれした戦いをぼうぜんと見ていたが、はたからの
「イロユキ、こっち」
と、ささやく声にハッとした。
見ると、小鬼のジェーンがころがったタイヤの穴から顔をのぞかせている。
「こっち、こっち。にげよ」
「逃げるって、どこ行くの?」
「地下道、いっぱいある。どこでも、にげれる」
「でも、あすかちゃんが……」
「あすか、つよい。だいじょうぶ。早く来い」
そうして、ジェーンがヒロユキをうながしていると
「いさりび!」
ヒジカタが口から吐きだした火が、あすかの「あまつかぜ」とぶつかって爆発した。
「あぶない!」
とっさにヒロユキはジェーンをかばって抱きかかえたが、その爆風の強さに、そのままころころとふき飛ばされてしまう。
「うぅ……ジェーン、だいじょうぶ?」
ヒロユキが声をかけると
「オッケー」
小鬼はちょっと楽しい経験をしたくらいのゴキゲンな返事をしたが、そのあと
「イロユキ!」
ヒロユキが後ろをふりかえると、いつのまにか、ヒジカタの仲間の黒い大男が袋を持って、近づいてきていた。
「こんどは逃がさないぞ、こどもめ!」
ヒロユキはさけび声も上げる間もなく、頭から袋をかぶせられたが、なんとかジェーンだけは放り投げて逃がした。
「イロユキ!」
「ふごふご、うがぁ」
ヒロユキはけんめいにあばれたが、袋の中にはなにか眠気をさそう薬でも入れてあるようだ。
急速に体も、頭の働きもだるくなる。
「イロユキ!」
「ヒロユキ!」
と呼ぶ声が遠くからぼんやり聞こえる。
(……「ヒ」が言えてるほうが、あすかちゃんだなぁ……)
と思っているうちに、少年は完全に意識を失った。




