23. 小さな盗っ人(ぬすっと)たち(6)
「おっと、つれないじゃないか。せっかく会えたのだから、ごいっしょねがいたいね」
ことばづかいは慇懃に、しかしにぎる手はちぎれんばかりに強く、男は少年をおどす。
「きみがひとりでいるとはさいわいだった。ヨウイチロウにいられてはわたしも手が出しにくいところだ」
万力のようにかっちりとかためられた腕からこどもが逃れることはできない。
そんな、なすすべもなくつかまった少年の正面から
「ヒロユキの手をはなして」
と声をかけるものがあった。
それは
「――やあ、あすかちゃん。ひさしぶりだね。ちょっと見ない間に大きくなった」
「ヒジカタおじさん……」
黒髪の少女は緊張の面もちで、自分よりずっと年上のおとなに向きあった。
「こんな形で会うとは思わなかったよ。やはり、きみたちツノジカ団がこの男の子を連れ去ったのだね。きのうの『まそかがみ』はあすかちゃんが使ったんだろう?……ふむ、見事だった。その年齢で、よくあそこまでの術をつかえたものだ。
われわれも、シカ盗難にここの小鬼たちがかかわっているのではないかと目をつけてやってきたのだが、きみたちもご同様らしいね」
タイヤから上がる黒いけむりに気をつけながら少女は
「あの火をつけたのはあなたたちが?」
「きみのおとうさんがいるとわかったのでね。ここで、強力なコトノハつかいであるツノジカ団の団長と直接やり合うのは、われわれもさけたいところだ。きみのおとうさんなら、あの火を消すのはむずかしいことではあるまいが、時間かせぎにはなる。この子を連れ去るぐらいの時間は生み出せるだろうと思ってね。――さてヒロユキくん、わたしといっしょに来てもらおう。ご両親もきみに会いたがっているよ」
「おとうさんとおかあさんが……」
心が動きそうになるヒロユキに対し、あすかは
「だめ、ヒロユキ!この人の言葉にのっては。会いたがっているといっても、それはまともな心の状態にないきみのご両親よ。そんなのに利用されちゃいけない。なによりも先にツノジカさまを探し出すのが先!」
「きみたちツノジカ団は、いつもシカ、シカ……と。そんなものより、この少年が親と再会できるほうがよっぽど大事だと思わないかね?」
「ほんとうに大事なら、何もしないですぐにこの子に親を返しなさいよ!親をダシにしてこどもを脅迫す
るなんて最低だよ!」
少女のなじりに、ヒジカタは顔をしかめ
「……しかたない、どうしても邪魔をする気かね、あすかちゃん。となると同じコトノハつかいとして、いくらこども相手でも手加減ができなくなるよ」
その両眼をあやしく黄色く光らせると
「かたおなみ」
そのつぶやきとともに、足元の土が盛り上がって、まるでヘビのようにうねりながら少女におそいかかった。




