22. 小さな盗っ人(ぬすっと)たち(5)
それから20分ぐらいだろうか。
「……ねえ、あすかちゃん。もうあきらめたらどう?」
古タイヤの一つにこしかけたヒロユキは、タイヤの山の上をとび回っている少女に声をかけた。
「まだまだ!もう少しで見つけ出すから!」
その表情はふだんクールな彼女に似つかわしくもない必死なものだった。
じゃんけんで負けて鬼になったあすかは、百かぞえたあと、宣言通りあっさりとヒロユキを見つけたが、そのあとジェーンをどうしてもつかまえることができないでいた。
どうも、このタイヤ置場を熟知しているジェーンは、あすかに見つかりそうになるたびにタイヤからタイヤへと移動をくりかえして逃れているらしい。
「意外とやるじゃない、小鬼も」
いかにも冷静をよそおいながら、少女の目は血走っている。
それに対して
「――人間のメス、たいしたことない。ケケケ」
どこからかきこえるジェーンのあざけり声に
「なんですって!こうなったら是が非でもつかまえてみせる……求め行け!『ところづら』!」
完全に、なりふりかまうことはやめたらしく、うたことばをとなえると、あすかの手から四方八方に植物のつるが飛び出して、いまだ見つからない小鬼の女の子を追い回す。
「……ううぅん。もう、ぼくは置いてけぼりだなぁ」
ヒロユキはぼやいた。
今となっては、ヒロユキも、この「かむの」という土地では本当におかしなことがいっぱいあるのだと受け入れていた。なにせ、いま目の前ではツノのはえた小さな鬼を、同級生の女の子がふしぎな術をつかいながら追いかけまわしているのだから。
(おとうさんとおかあさんをたすけ出したら、こんなことがあったって言った方がいいのかな?おとうさんはよろこびそうだけど、おかあさんは目くじら立てて「引っ越そう」とか言うかもしれないな)
あすかはすっかり血がのぼって、ころがるタイヤをはじき飛ばしながら、はるか遠くのほうにまでジェーンを追いかけて行ってしまっていた。
タイヤ山に入った団長とジョーンズの話し合いもまだ終わらないらしく、出てくる気配がまるでない。
「けっきょく、ぼくだけやることなしだよ」
と、つれづれとしていると、後ろから突然、声がかかった。
「――やることがないのなら、ちょうどいい。わたしとあそばないかね?少年」
ギョッとしてふりかえると、そこに立っていたのはあの黒づくめの男・ヒジカタだった!
「また会うことができてうれしいよ。きみも小鬼たちに用かい?」
ニヤリとヒジカタがわらうと同時に、近くのタイヤ山から火柱があがった。
あっという間にひろがる炎とけむり、そしてどなり声。
地下から団長の声がひびく。
「あすか!ヒロユキくんをつれて逃げろ!ヒジカタたちの襲撃だ!」
その声に、あわてふためくヒロユキの腕をヒジカタは、にがさないようにつかんだ。




