21. 小さな盗っ人(ぬすっと)たち(4)
「――中に入ることもできないなら、しょうがないね。どうしよう?あすかちゃん」
「どうしようもなにもないでしょう。待ってるしかないよ」
しばらくだまって待っていたが、殺風景なタイヤ置場で女の子とふたり、すっかり手持ちぶさたになったので、ヒロユキが
「……ひまだね。かくれんぼでもしようか?あすかちゃん」
と、さそってみたが
「ふたりでそんなことしてもしかたないでしょ?」
と、ばっさり切り捨てられた。
「……そうですね」
ヒロユキが所在無げにあたりをみわたしていると、
ひょこり。
タイヤから顔を出す小さな影がある。
おもわず目をこらすと、むこうからもじっとこっちをうかがっているのがわかる。
「あすかちゃん、あれ……」
ヒロユキが指さすと、その小さなものはタイヤから出て、ちょこちょことこちらにちかづいてきた。
それは「こども」の小鬼だった。
その子を見ると、さきほどのジョーンズが大人だということがよくわかる。いま、二人の目の前に立つ小鬼は、それこそ、ちょっとした子猫ぐらいの大きさしかなく、ツノも小指の先ほどしかない。色とりどりの毛糸をてきとうに編みこんだミノムシみたいな服に、ボタンや木の実、キーホルダーなんかがびっしりとつけている。短いかみの毛も、鳥の巣みたいにクシャクシャだ。
小鬼は、ヒロユキたちを指さすと、それこそ猫みたいなころころした声で
「オメエら、ニンゲン。めずらし」
と、カタコトの日本語で話しかけてきた。ニコニコというかニタニタというか、とにかく人なつっこい。
「……オメエはオスだな。オメエはメス。ジェーンわかる」
「ジェーン?きみメ……いや、女の子なの?」
すっかり男の子だと思っていたヒロユキがびっくりしてたずねると
「もちろんジェーン、メス」
自分を男だと思ったのがご不満らしく、ジェーン嬢は口をふくらませたが、つづけて
「テメエたち、かくれんぼするか?なら、ジェーン負けない」
と、むねをはった。
「なに?きみ、ぼくたちとあそびたいの?」
ジェーンはコクリとうなずく。どうやら彼女は、はじめからヒロユキたちの会話をうかがっていたらしい。そこであそびの気配があると思って、とびだしてきたのだ。
「あすかちゃん、この子もこう言ってるし、あそんでやろうよ」
「でも、あたしたちはここにあそびに来たんじゃないよ。おとうさんたちが大事な話をしているときに、そんなことしていいと思う?」
「こどもといっしょにあそんだ方が、よっぱど大人の小鬼たちにも好感を持たれると思うよ。ねえ、ジェーン?」
ジェーンはこっくりうなずくと
「オス、あそぶといっている。メスもしたがえ」
「オスじゃなくて、ぼくはヒロユキ。こっちはあすかちゃん」
「イロユキ」
「イロユキじゃなくてヒロユキ」
「イロユキ」
どうもジェーンは「はひふへほ」がうまくいえないらしい。
あすかは、二人のやりとりをあきれて見ていたが
「まあいいけど。……でも、いいの?あたしはコトノハ術がつかえるから、かくれている相手を探すなんてお手のものだよ。かくれんぼなんかしても、すぐつかまえちゃって、この小鬼さんおもしろくもなんともないと思うよ。あたしは、遊びだからと言って手をぬける気性じゃないから」
そのあわれむような目つきに
「ダイジョブ。ジェーン見つからない。ジャックにも見つかったことない」
小鬼の少女はニタニタわらいかえす。
「……まったく。ちいさいこどもを追いつめるようなマネはしたくないのよ」
と、ためいきまじりにニンゲンの少女は言った。




