20. 小さな盗っ人(ぬすっと)たち(3)
団長の声かけに、その小鬼……ジョーンズは、ぶすっとした表情のままではあるがタイヤからぬけ出て下りてきた。
オーバーオールを着たその体つきは、小鬼と言うとおり人間でいえば、小学生低学年ぐらいのものだった。
(なるほど。これなら、あの博物館にいたこどもと同じぐらいの背たけのものがいても不思議じゃない。小鬼が変装していたっていうのは本当かもしれないぞ)
ジョーンズは、うたぐりぶかそうな目でじろじろとツノジカ団を見わたしていたが
「オメエさんがたが、何をしに来やがったかは、わかってやすよ。オメエさんがたが、だいじにしてるツノジカ像が、無くなった。そのお盗め(おつとめ)に、あっしらがかかわっていると思ってるに、ちげえねえ?
しかし、それはまちがってやすよ。あっしらは、今回の件に、なにもかかわって、おりやせん」
ジョーンズのかわった言葉づかいは、彼が来日したころ古い日本映画を見て日本語を学んだせいだと、ヒロユキはあとからヨウイチロウに聞いた。ちなみにジョーンズのお気に入りは「マタタビ・ヤクザもの」らしい。それがどういう種類の映画なのか、ヒロユキにはよくわからなかったけど。
「まあ、そう言わず話だけでも……」
なんとか話のきっかけをつかもうとする団長の言葉をみなまで言わさず、ジョーンズは
「それに『もし』かかわってたと、しやしても、あっしらは、それを他人にもらすことはござんせん。それは、かつて、あっしらに、仕事をおたのみになった、オメエさんがたなら、わかるでやしょ?『シカを守るもの』よ」
「おとうさん、小鬼にたのみごとしたことがあるの?」
あすかは初耳だったらしい。
ビックリしたようすで父親を見ると、団長は気まずそうに
「むかしだよ、むかし。それに何も法にふれるようなことじゃないぞ。ちょーっと、手に入れにくい品があって、その取り次ぎをたのんだだけだ。……ジョーンズ、いまはそんなむかしの話はいいから、とにかく中に入れてくれないか?純粋にビジネスとして話がしたい」
「ふむ、Businessですかい?」
商売の話には目ざといらしい小鬼は、いい英語の発音で言うとしばらく考えていたが
「――まあ、話だけなら、よござんしょ。長年の、よしみでやす。ただし、そこのこどもたちはダメでやすぜ。Businessには不適でさあ」
と言うと、おとなのツノジカ団員4人のみをタイヤの中に手招きした。
団長たちは残念そうに
「しかたない。ヒロユキくんとあすかは外で待っていてくれ」
と言うと、タイヤの輪の中にぞろぞろと、まるでサンタが煙突の中に入るように入っていった。
どうやら、雑然とうず高く積まれたタイヤの山の中はアリの巣のように広がっているらしい。
広い空地に、こどもふたりがぽつんとおいてかれてしまった。




