19. 小さな盗っ人(ぬすっと)たち(2)
(そりゃ、ただ同じ班メンバーになっただけだけどさ)
となりを行く子のきっぱりとしたことばに、しょげしょげ歩いていると
「着いたぞ。ここが目的のタイヤ置場だ」
団長が指ししめした場所を見て、ヒロユキはきょとんとした。
目の前に広がるのは自動車の古いタイヤが山のように積まれている、だだっ広い土地だった。
「――えっ?あの、ここにだれか来るのと待ちあわすんですか?」
「いや。こここそが、わたしたちが会う約束をしたものたちが『住んでいる』ところだ」
団長は警戒をおこたらず、あたりに目をくばりながらこたえた。
「えっ?こんなところに人が住んでるんですか?」
「人……というわけではないな。いまからわたしたちが会うのは小鬼だ」
「こおに?」
「ああ、昨日きみが言っただろう?『用心深くて、まるでこどもじゃないみたい』と。もし仮に、あの男の子がほんとうに人間のこどもではないとしたら……。かむのにいるもののなかでも、ツノジカさまを盗み出すような大きな仕事ができる小さなものたちと言えば、このタイヤ置場に住む小鬼ぐらいしかいない。
小鬼といっても、かれらは四十年ほど前にイギリスから移住してきたゴブリンという種類の西洋の小鬼なんだがね。故郷でほかの妖精との勢力争いに敗れて、安全を求めて日本に移り住んで来たんだ。前に言ったとおりかむのは神気が強いから、彼らみたいな妖精にも住みよい地なんだよ。
ゴブリンはもともと器用な連中で、ふだんは細かい貴金属の加工なんかをうけおって暮らしているんだが、生活のために盗みの依頼をうけることもある。もし、やつらがツノジカさまの盗難にかかわっているとしたら、やっかいだ。仕事上のつながりをとても大事にする連中だから、かんたんに口をわるとは思えん。
いちおう、昨日のうちに会う約束だけは出来たので、話ぐらいはできるだろう。ヒロユキくんも傍からようすを見て、あやしいのがいないか判断してくれ」
そうささやくように指示してから、タイヤがたくさん積んであるところに近づくと
「おまちなせぇ!」
古くさい言い回しとともにタイヤの輪の中からひょこっと顔を出したのは、くしゃくしゃの赤髪・赤ひげの、一見老けた、しかしみょうに声のわかい白人系男性だ。
(あれ?)
よく見ると、そのひたいからはツノが一本、にょきっとはえている。
「よお、ジョーンズじゃないか?ひさしぶりだな」
と、団長が声をかけると
「なにしに、来やがりました?『シカを守るもの』よ」
「ちょっと、きみたちと話がしたくてね」
「あっしらには、なにもオメエさんがたと話すようなこと、ありません」
「そう言うなよ……ちょっとぐらい、いいだろ?」




