18. 小さな盗っ人(ぬすっと)たち(1)
次の日の朝、ヒロユキは団長らツノジカ団の精鋭五人につれられて、私鉄かむの駅の北側に広がる工業地域に向かった。
このあたりは、駅の南側にある古くからの市街地とはちがって戦後に開発が始まったところで、大きく新ピカの会社があるかと思えば、ほったらかしたままの廃冷凍食品工場や、掘りかけの原っぱやらがゴチャゴチャとまざりあっている。
「へえ、ここにははじめて来るな。かむのにはいろんなところがあるんだね、河野さん」
と、ヒロユキはとなりを歩くあすかに話しかけた。彼女のほうが背が高いので少し見上げる形になる。
「そりゃ、いろんなところがあるよ。でも駅の北には、こどもはひとりで行かないよ。人気がなくて、ちょっとあぶないからね」
そう言うあすかもちょっと緊張してるみたいだ。
きのう深夜にかえってきた団長に、防犯カメラにうつっていたこどもにつながるかもしれないものたちと会う手はずを整えてきたから、いっしょに来るように言われたのだ。
「ぼくは手がかりの小さな男の子と会ってるから、来なきゃいけないのはわかるけど、なんで河野さんも来るの?あぶないよ」
ヒロユキが言うと、あすかはちょっとカチンときたようすで
「そんな心配はいらない。あたしはきみより危険に対応する力があるから」
団長も、ふりかえって
「そうだ。あすかの心配はしなくともいい。彼女はまだ小学生だが、すぐれた術者だ。自分の身ぐらい自分で守れる。むしろ、きみの身に危険がないようついてきたんだ」
「えっ、そうなの?……ありがとう、河野さん」
あすかはぶすっとした顔のまま
「――礼を言われるようなことじゃないわ。それより、きみこそどうなの?昨日の夜はちゃんと眠れた?」
「……うん、おかげさまで」
本当は、男たちにおそわれた恐怖と両親に会えないさびしさ、それに慣れない他所の家にとまる緊張から何度も目をさましてたけど、女の子のまえではヒロユキも多少見栄をはっていた。
そんなねむそうな少年をうろんげに見ながら、あすかは
「ふうん、そう?――それと、もうひとつ気になるんだけど」
「なに?河野さん」
「だから、その河野さんって言いかた、どうにかならない?ツノジカ団は河野家の親戚が中心になってできてるから、もともと『河野さん』ばっかしなの。あなたがあたしのことを呼ぶたびに、みんな自分が呼ばれたのかとこっちを見るじゃない」
たしかに今いっしょにいる五人のツノジカ団員のうち三人が「河野」の姓らしい。
「じゃあ、なんて呼ぶ?下の名前?」
「それしかないでしょ」
「うん、わかった。じゃあ……あすかちゃん」
「なに?」
「いや、べつになにもないけど、よんでみた」
そんなこどもたちのようすをおかしそうに団長は見ると
「くくくっ。そういえば、あすかが家に友達を連れてくることじたいが初めてだったな。まさか女の子のまえに男の子をつれてくるとは、おとうさんも思わんかったが」
「まだ、おともだちじゃないよ」
……そうはっきり言われると、かなしくなる。




