15. ツノジカ団(7)
PCをつかえるツノジカ団員たちが、あわてて手分けして映像を調べなおした結果、たしかにあやしい小さな男の子のすがたがところどころに映し出されていた。
しかし、その子ときたら、目深にキャップをかぶって、うまいこと監視カメラから顔が見えないように動いていた。
まるで監視カメラに映りにくい場所を選っているかのようにたくみに移動すると、そそくさとひとり博物館を去っていた。
「ひとりで平日にこんな小さいこどもが……たしかにあやしいな」
「そうですね。用心深くて、まるで『こどもじゃない』みたい」
なにげなくつぶやいたヒロユキの言葉に団長、そしてツノジカ団員全員が反応した。
「――そうだ。見た目はちいさなこどものようだが、中身は全然かわいくないおとなで、金のためなら平気で盗みも請けおう、魔法をつかうものたちか……」
「そんなもの、いるわけないでしょ?」
あきれたように聞いたヒロユキに、団長は
「いや。そうとも言い切れないかもしれないよ」
いかにも訳ありそうに言うと
「……やはり、きみに来てもらって助かった。まったく手がかりを見つけられなかったわれわれに希望の光をあたえてくれた。もしかすると、きみはわれわれをみちびく『えらばれしもの』なのかもしれないな」
とわらった。
そのことばに団員たちはおどろいたようだったが、あすかは
「おとうさん、じょうだんはよして」
ぶすっと言った。
団長はにがわらいして、むすめのきびしい視線をうけながすと、ヒロユキに向かいなおし
「それよりきみもつかれただろう。今日はこの家に泊まっていきなさい。ここならばヒジカタたちも手を出すことはできない」
「でも、おとうさんおかあさんが……」
「ヒジカタたちのねらいはあくまでツノジカさまだ。ふつうの人々に危害をくわえることはない。不安だろうが安心して、いまは体を休めることを考えなさい。
夕ごはんもまだだろう?わたしはまだ用事があるので同席できないが――あすかにヨウスケ、お世話をたのむよ」
「――やだな、今からだと大したもの作れないよ。お米炊いてないしバゲットしかない」
と言いながらも、あすかはキッチンに引っこむと短いあいだで手ぎわよく何皿か料理をテーブルに並べた。とくにヒロユキには
「一日のあいだにいろいろあったから、ふつうのごはんはのどを通りにくいでしょ?」
と、色とりどりの野菜やベーコンを細かくきざんだものをミネストローネ風にして出してくれた。
スプーンですくうと、おかゆのようにやわらかく煮いたお米も入れてあった。
にわかにドキドキするようなこわいことがかさなって、両親からはなれることになったヒロユキには、ほっとする味だった。
学校で友達づきあいもあんまりしないあすかが、こんなにこまやかな気づかいができる子だということはおどろきだった。




