14. ツノジカ団(6)
「どのような類いのものかはわからないが、どうも西洋系の術のような気がするんだ。東洋のものではない気がする……」
(いいオトナがなに言ってるの?もしかして「そんなことあるわけないでしょ」ってツッコんでほしいの?でも、まわりの人もみんな深刻な顔をしたままだよ)
ヒロユキが、どうふるまったらいいかわからないあいだに、ツノジカ団は話を進める。
「あたしがもう少し長くツノジカさまのそばにいれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに……」
あすかがくやしげに言うのを
「すぎたことをどうこう言ってもしかたない。大事なのは今後どうするかだ」
と団長はたしなめ、ヒロユキに向きなおると
「とにかく、この映像を見てもらってわかったように、ツノジカさまがいなくなるその寸前まで、きみはツノジカのそばにいたわけだ。
直接関係があるかどうかはわからないとしても、なにかツノジカさまのゆくえを追う手がかりに、きみがなっていると思われてもしかたないだろう?
おそらくヒジカタたちもひそかにこの情報をつかみ、わたしたちの機先を制して、きみを確保しようとしたんだ」
「ヒジカタ……あのこわい人たちは、河野さんの知りあいですか?」
ヒロユキの質問にヨウイチロウは苦々(にがにが)しげに
「――残念だが、そのとおりだ。かつて彼らはわれわれツノジカ団の仲間だった。とくにヒジカタとはわたしも親友のつもりだった。
しかし、それはまちがっていたようだ。彼らはわれわれをうらぎり、あろうことかツノジカさまに敵対する勢力に加担するようになってしまったんだ」
「えっ?敵対って、どんな……」
「その正体については、まだはっきりとはわかっていない。ただ、あのヒジカタを味方に取りこむぐらい力のある存在であることはまちがいない。
彼らはこのところ、われわれツノジカ団に対して、さまざまなジャマ立てをしてきていたからな。
われわれはヒジカタたちの手にツノジカさまがわたることを食い止めねばならない。その前になんとしてもツノジカさまを取りもどさねば!
そのためにはなんでもいい。きみが知っていることがあれば、ぜひ教えてほしいのだ」
団長の真剣な口調に
「う――ん」
ヒロユキはしばらくPC画面をながめていたが
「……すいません。この映像、もうちょっと、もどしてもらっていいですか?」
「うん?ああ、いいよ」
ヨウスケがリバース操作をすると
「あっ!ここで止めて!」
ヒロユキは不審がる団長たちに対して、画面の下のほうにうつった手すり部分を指さした。
「ほら。ここにちょっとだけど、ちっちゃな影みたいなのが映っているでしょ?――これ、たぶん人の頭の影だよ。
ぼく、見ましたから。ぼくの後にちっちゃな男の子がツノジカの方に行くのを」
「なんだって!?それはほんとうかね?」
「はい、見ました。幼稚園ぐらいの、ちっちゃな子……大人もついてなくて博物館でひとりだなんてふしぎだなと思ったんです」
団長は団員たちに
「こんなちいさなこどもがいたなんて聞いていないぞ!どうなっている!?わたしには今日のすべての入館者の情報を上げろと言ったじゃないか!」
「すいません。小学生に満たないこどもは入館無料で、いちいち出入館の記録も残していないんです」
「う――ん、そこをつかれたか!よし、ではもう一度すべての監視カメラ映像をチェックしなおせ。この小さな男の子が映っていないか調べるんだ!」




