13. ツノジカ団(5)
ヨウイチロウは息あらく
「信じられないかもしれないが、今わたしが言ったことはすべて真実なのだ。
そしてわたしたちは文書にのこされた『ツノジカさまのご聖像を守るべし』ということばにしたがうため秘密組織・ツノジカ団を結成し、日夜、ひそかに活動をしている……。
それが今回、あろうことかその大事なツノジカさまをぬすまれるという失態をおかし、恥じ入るばかりだ。われわれはなんとしてもツノジカさまを取りもどさなければならない。
そして、そのためにもぜひ、きみの力を借りたいのだ」
「えっ?力って、ぼくはなにも……」
急な話の展開にとまどう少年に、団長は
「ヨウスケ。ヒロユキくんにお見せしろ」
団長に指示を受けた青年はノートパソコンを開くと器用に操作して、なにかの映像を画面にうつしだした。
「あっ!これ、ぼくだ!」
そこにはヒロユキがひとり、シカ像のほうをながめているシーンが録画されていた。
「これは、今日の博物館の防犯カメラ映像だ。かむの市民には知られていないが、博物館のいっさいの警備・管理をおこなっているのは実はわれわれツノジカ団なのだよ――いや、しかし、きみのようにこんなに無心にツノジカさまと向きあうこどもはめずらしい。
そこの不熱心なツノジカ団員に見習えと言いたいものだよ」
「お父さん、今そんなことお兄ちゃんに言わなくても……」
あすかのその言葉に、ヒロユキはそのヨウスケという青年が、あすかの兄であることに初めて気づいた。
体つきがきゃしゃで、たくましい父親とあまりにちがうのでわからなかったが、言われてみればたしかに顔のパーツなど、3人とも親子そして兄妹だけあって似かよっている気がした。
気弱げなヨウスケは父親の皮肉めいた言葉に少し口を曲げたが、なにも言いかえすことなくヒロユキが映る画面を操作している。
「でも、これだけでぼくがなんの役に……」
(ぼくは、ただだれかの声がしたような気がしたから、ふりかえっただけなんだけどなぁ……)
画面にうつる自分のとぼけた顔を指さしながらヒロユキが言うと、団長は
「大事なのはこのあとだよ」
クラスメイトにおいていかれたのに気づいたヒロユキが、あわててホールからいなくなって、しばらくしたら……
あっ!なんてことだ!ツノジカ像が画面から消えてなくなった!
「えっ?これ、とちゅうで画面を切りかえたんじゃないの?」
「ちがうね。映像にはなんの加工もしてない」
ヨウスケは、ぼそっと、しかしはっきりと言った。
「でも、そんな……急にあんな大きな像が消えるだなんて、まさか魔法でもあ
るまいし……」
ヒロユキのつぶやきに、しかし団長は
「いや、これは『魔法』だろう。やっかいなことだ」
と当たり前のように返すと、ため息まじりに画面をにらんだ。




