12. ツノジカ団(4)
「予言?」
「そうだ」
ヨウイチロウの指示に、ツノジカ団員の一人が奥からうやうやしく古そうな巻物を持ってきた。
表を見ると、筆字で読みにくい昔のひらがなが
「つ…の…し…か…も…ん…しょ?」
「そう。ツノジカ文書とわたしたちは呼んでいる。
江戸時代に書かれたこの巻物には、将来このかむのの地から大きなツノを持ったシカの骨が発掘されるであろうということがはっきりと書かれているんだ」
「そんな……」
そんなことあるわけないよ、と言おうとしたヒロユキだったが、ヨウイチロウやあすか、そしてその後ろにひかえるツノジカ団員たちの、これ以上ないというぐらいの真面目な顔に気圧されて、言葉をつづけることができない。
ヨウイチロウはつづけて
「そして、この書にあったとおりの日時・場所からツノジカさまのご聖骸……つまりお骨を掘り当てたのが、わたしの亡くなった父のヨウゾウだ」
「えっ!そうなんですか?」
河野あすかのおじいさんがカムノオオツノジカの発見者だったのか!それってすごいことじゃない?
「なにもたいしたことではない。父はこの文書にしたがって行動しただけだ。
そして、さらにこの文書にはわれわれ子孫に対して、次のような言いつけが残されていた。すなわち
『ご聖骸をもとに、ツノジカさまのおすがたを忠実にかたどった像をつくれ。その像はかむのに大きな幸いをもたらすであろう……』と。
その言いつけどおり父はツノジカさまのご聖像をつくり、それをかむのの博物館に鎮座せしめたんだ」
(鎮座ってなに?ただ展示しているんじゃないの?)
「そして、たしかにご聖像は大きなさいわいをかむのにもたらした。これといった名物のないかむのに、全国に名をとどろかせる有名ジカがいることは市民
にほこりをあたえ、また経済的にもうるおいをあたえたんだ」
(――とどろかす、と言ってもぼくは知らなかったけど……。それに経済的って、お金のことだよね。でも、ほんとうにそうなのかなあ……ほら、なんだかあすかちゃんが居心地のわるい、しょっぱい顔をしているよ)
会社の倉庫のすみっこには返品だろうか。ほこりをかぶったツノジカのぬいぐるみがうず高く積まれている。
(……あんまり、売れてないんじゃないかなあ)
しかし、もちろんヒロユキはそんな思ったことは口にしなかった。




