仕事と気まぐれと
ーー夕暮れ、桟橋にて
一服をしながら思い思いの時間を過ごしている人々を見て、僕は退屈さを紛らわせていた。
とはいっても普段から退屈さをあまり感じないので、休息としては悪くない時間の使い方だと思う
煙草を一本吸い終わると、アンドレイさんがいつものサングラスにハット帽の姿で僕の方に向かってきた。
「やぁ、お仕事お疲れさん。」
「こちらこそいつもありがとうございます。暇になったんですか?」
挨拶を済ませて、僕たちは商店街に向かって歩き始める
「いつも仕事をしっかりこなしてくれている君に、アドバイスをしたいと思ってね。ここのカフェはどうかな」
「アドバイス...わかりました。」
アンドレイさんがカフェに入った後、続いて僕も中に入った。
明るすぎない落ち着いた照明に、香ばしく広がるコーヒーの匂いで、僕の心は安らいだ。
窓辺の席を取り、再び僕たちは話し始める
「ロック君、君は夢を見るかね?」
「ゆ、夢?」
突然の質問に少し驚く。
夢...それなりに見るが大体どんな夢だったのかは目覚めたときに忘れてしまう。
「えーっと、たまに見ます。でも大体忘れてしまいますが...」
「そうか、もし記憶に残るような夢を見たときは覚えておくかメモを取っておくといい。」
「なぜですか?」
「正夢になる可能性があるからだ。私も経験がある。」
僕はおそらくずいぶん間抜けな面になっていたと思う。
それほどアンドレイさんから聞いた言葉が衝撃的だった
夢が正夢になるなんてマガジンの漫画でしか読んだことない、アンドレイさんは最近そういうのにはまっているのか...
そんなくだらないことを考えていると、見かねたアンドレイさんが続ける。
「そんな顔をしないでくれ。馬鹿なことを言ってるのは承知だ。だが、もしこれが仕事に直結する話だったら君はメモ帳を取り出すだろう?」
「な、仕事の話ならもちろん...夢が正夢になるって本当のことなんですか?どうも漫画のような話だ...」
「本当の話だ。私もね....」
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そんな話をして外を見ると街灯が灯り始め、柔らかな光が暗闇を照らしていた。
「いけない、明日は僕ほかの人から依頼をもらってるので失礼します。」
「ああ、今日はありがとう。お代は私が払っておこう。」
「あ、ありがとうございます。ではまたよろしくお願いします。」
「うむ、夜道には気を付けて」
アンドレイさんはハット帽を深くかぶり、座ったまま頭を下げた。
僕は立ち上がり礼をして、その場を去る
どこかおかしく、それでいて現実的な話をメモ帳に残して......