世界一平和な殺し屋
新作です。
矛盾に聞こえるけど矛盾じゃない不思議。
日が照り付ける昼間、道路を遮って電車が通る。
踏切の警告音、車のエンジン音、人々の話笑う声...
そんな街の裏路地で、とある男が「仕事」をしていた。
「殺せよ...」
「殺さないさ、僕の倫理に反するし、お互いにメリットを感じない。」
地面に転がされた男は傷だらけで、今にも殺されそうな雰囲気を醸し出していた。
しかしそれを見下すシルクハットをかぶった男は、手を出さずに口を開く。
「任務は終わった。あとは帰るなり自殺するなりすればいい、その先は僕には関係ないしね~」
書類を手に取り、男は路地裏を後にした
「今日も変わらず、か。」
ハンカチで手を拭きながら、彼は帰路につく。
路地裏では、倒された男が独り言をつぶやいていた
「あれが、ピースセブン...殺さない殺し屋か....」
それだけ言った後、彼は気絶した。
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僕は殺し屋だ。
もちろん世間一般で殺し屋ですなんて口が裂けても言えない。お縄になってしまうからね
ただ、僕は一つ売りにしていることがある。
信念でもある_人を殺さない_だ。
殺さないことでトラブルなく任務を遂行することができるし、そのあとのことは関係ないから楽だからそれだけをモットーにしている。
昼ご飯をテーブルに置いてテレビをつける。するとニュースで路地裏であった事件について取り上げていた
【続いてのニュースです。先ほどリベルテ街の路地裏にて、何者かに暴行を受けた男性が倒れているのを警察が発見しました。この男性は一週間前に捜査していた宝石店の強盗や、数年前に行われた男性殺害に関与しているとして捜査を続けています。】
「今日も成功か。よかった」
コーヒーを淹れて一口飲み、僕は安堵した。
そのままニュースを見ながら昼食を食べていると、電話が鳴った。
「はい、ロックです。」
【ロック君、お勤めご苦労さん。今回もトラブルなく成功だよ。組織を社会的に殺すことに成功した。報酬を弾ませるかい?】
電話先はリピーターのじいちゃんだった。昔から仕事の依頼をくれるが、謎の多い人間だ。
「アンドレイさんの報酬を弾ませるっていうのは別の依頼があるってことでしょう?また依頼ですか?」
【いやいや、今回ばかりはロック君の息抜きにでもなればいいと思ってね。羽を伸ばしてほしいのさ。】
確かに最近は依頼が多くてなかなか疲れが取れないのが悩みだ。
「わかりました、少し待ってください。」
電話を保留にして仕事用の服を着替えて私服に着替える
チャームポイントでもあるシルクハットは、誰でもつけるようなキャップに変え、ジーンズと半袖のシャツで涼しくなった。
「大丈夫です、それで?」
【待ち合わせはリベルテのオヌール川の桟橋だ。今から二時間後でどうかね。】
家の壁掛け時計を見る。
_午後一時半_
「わかりました。じゃあ二時間後の午後三時半にオヌール川の桟橋で。待ってます」
【ああ、楽しみにしているよ】
老人らしい笑い声が聞こえ、僕は電話を切った。
__さて、準備するか__
昼食を食べるときに使った皿をキッチンのシンクに置き、僕はアンドレイさんに会う準備を始めた。