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第十三話





 「伸びろっ!ツノ!!」


 直樹は直感的に全身のエネルギーをツノへと集める。

 すると、直樹の額に生える三本のツノ、そのうちの中央の一本が、一メートルほどまでに伸びた。

 直樹のイメージに呼応して、細身で片刃、まるで刀のように形づくられる。

 直樹のねじ曲がった性格と反して綺麗にまっすぐ伸びている。

 (よし、できた……うん?)

 まっすぐ伸びてたら体に巻きついた糸に当てられないのではないか。

 ヤバくないか。

 (あれっ?)

 

 「えっ……重っ」


 刀の形に伸びたツノ。伸びた分と同じだけ質量が増していた。

 首だけで逆立ちをしている時と同じようにかなりの質量が首にかかる。

 直樹は予想外の感覚に少しよろめいた。

 さて、現在の直樹は簀巻きにされ、宙づりになっている。

 宙づり状態でバランスを崩すとどうなるのだろうか。

 つい先ほど、ゲロゲーロの話がフラッシュバックしたばかりではないか。

 

 「うわぁぁ!」


 揺れる。

 まじで気持ち悪くなるような不規則な挙動で揺れ出す。

 ていうか、本当に嫌だ。止まって。俺飛行機とか船とか変に揺れるやつすぐ酔うんだよ。

 ヤバい。

 想像しただけで、胃から何かせり上がってきたかも。ウプっ。

 バランスを崩し、バランスを直すため、変に動き回っていたからだろうか。

 揺れがさらに大きくなる。

 やってしまった。


 「プツッ」


 「うん?」


 音がした。何か切れたかのような。


 「プツプツッ」


 「あっ」


 そうか、変に揺れたことでツノのヤイバを糸に当てられるようになったのか。


 「プツプツッ……ブチィッッ!」


 「あっ」


 切れた。

 落ちた。

 冷静に考えてみよう。地面からだと見上げても糸の出し手がウジ虫とわからないくらいの高さだ。それなりの高層ビルくらいの高さはあると考えていい。というか、ここ、ドーム球場とスケール殆ど変わない。

 冷静に考えてみよう。ウジ虫がウジ虫で、うようよいると見える距離だ。天井とはそれなりに触れ合えそうな距離感だったのだ。


 「あぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 落ちる。

 ウジ虫に食われて死ぬのはいやだ。

 でも、だからって、落下死はねぇだろ。

 高所恐怖症なんだよ。

 ヤバい。

 ストレスで限界。

 意識が飛びそう。というか飛ばそう。

 目覚めて、生きてたらいいな。ばいば〜


 「ドォォン」


 いっ。

 突然、あまりにも早く、着地したのでびっくりした。

 全然落ちなかった。

 下を見ると、それは、ゴリラの腹だった。

 そういえば、他にも吊るされている死骸がしこたまあった。

 その一つに落下したのだろう。

 (はぁ〜)

 助かった。

 まぁ、生き残ったからには考えよう。現状を打開する方法を。

 問題は二つだ。

 体をぐるぐる巻きにしている糸をどうするか。

 そして、この高さからどうやって地上に降りるか。


 「ブウゥゥ〜〜ン」


 うん?

 なんか嫌な音が……虫の羽音が聞こえてくる。

 これだけの大量のウジ虫、考えたくないが、考えたくもないのだが、いないなんてことはあり得ない。そう、親の存在だ。

 ウジ虫の親といえばハエ。

 嫌だ、絶対に嫌だ。だけど見なければいけない。

 よし!

 いくぞ!

 せ〜のっ!

 ムリムリムリムリ!

 見たくもない。

 嫌だ!

 だが、どんどん羽音近づいてくるし、だからわかる。

 一匹じゃなくて、超たくさんなんだよ。あと、多分、めちゃくちゃでかいんだよ。

 

 「ぴとっ」


 うん?なんか聞いたことある音だぞ。何かが腹の辺りに落とされた気がする。

 まるで鳩のフンが落とされたようなそんな、つい先ほどにも聞いた音が……

 

 「あぁぁぁぁ!ウジ虫の糸がまたつけられてる!」


 ヤバい。ただでさえ苦労してるのに、これ以上ぐるぐる巻きにされたら完全に詰む。

 とりあえず、体をぐるぐる巻きにしている糸だ。これを切るぞ。

 ツノだ、ツノ……

 あれ?

 さっき伸ばして刃にしたツノが短くなっているぞ?

 どういうことだ?

 変形時の持続性が短いのか?

 まぁ、そんなことは今はいい。もう一度伸ばせばいいことだ。

 もう一度……そうだ、今度は伸ばし方を変えられないだろうか。

 四本ヅノの鬼は、鳥人に攻撃を当てるために地面からツノを突き出したあと、鳥人の挙動を追いかけるように、中空で折り曲げていた。

 ならば、俺でもツノを変な形にするくらいならできるんじゃないか?

 例えば、途中で直角に折れ曲り、先端だけヤイバがつくようにするとか。

 さっきはまっすぐ伸ばしたせいで首の可動範囲内でしかヤイバを当てることができなかった。だから、バランスを崩して糸と体の位置関係が変わるまでうまくヤイバを当てられなかった。

 今回の目的は体に巻きついた糸を切り離すことだ。

 よし、やってやろう。

 イメージは一メートルのヤイバ。

 途中で直角に下に向かって折れ曲がるヤイバ。


 「伸びろ、ツノ!」


 よし、伸びた……あれ?

 真っ直ぐじゃね?

 それにさっきのヤイバより短くないか?

 さっきの一メートルくらいのツノヤイバの半分ほどの長さだ。

 多分だけど、直角に折れ曲がる直前まではイメージ通りだった。だが、折り曲げられなかった。

 何が問題だったんだ?

 四本ヅノの鬼はツノを伸ばしている時に伸ばす角度を自在に変えていた。だが、直樹にはできなかった。

 経験の差か?

 直樹がツノを用いたのはこれが二回目だ。操作練度に難があっても無理はない。

 保有している核の数の問題か?

 今までの強烈な痛みが起こった回数を考えれば、おそらく直樹が保持している核の数は三つ。対して、四本ヅノの鬼が保有していた数は六以上だ。核の数は戦闘力に、使える能力に大きく変化をもたらすと推察される。

 他にもいくつも問題はあるだろう。だが、今の一回で直感的にわかった。

 おそらく、今のままではツノは曲げられない。


 「ん?」


 不意に頭に掛かっていた不自然な重みが消える。

 伸びていたツノが消えた。

 形成してから数秒、作ったツノが崩壊した。

 崩れ去ったツノはそのまま空中へ融けるよう消えていった。

 伸ばしたツノが形作ってから消えるまで、三、四秒ほど。おそらく先程伸ばした一メートルほどのツノヤイバもこうして消えていったのだろう。

 色々と考察すべきことは多い。だが、ひとまず、現状の危機を脱するのが先だ。

 ツノはおそらく真っ直ぐにしか伸ばせない。方向転換はできない。

 だが、ツノの伸び方や崩れ方から、一つ考えられることがあった。

 決して、ツノそのものが伸びているわけではないのではということだ。

 元々直樹の額に生えていたツノを核に、そこの周りで新たに別の物質が、伸びるように形作っていったように思えた。

 表現としては、元々あるツノを起点に新しいツノをもう一本生やしていっているという方が正しいのかもしれない。

 つまり、ツノは真っ直ぐにしか伸ばせない。途中で方向転換できない。が、しかし、元々生えているツノから、起点から新たに伸ばす方向だけは限定されないのではないか。

 過去二回は自然と、元々のツノの向く方向へと伸ばしていた。

 だから、今度は変える。

 元々生えているツノから、真下へと向けてツノを伸ばす。


 「ブウゥゥ〜〜ン!」


 (ヤバいヤバいヤバい!)

 羽音がさらに大きくなっている。

 多分もう、近くだ。

 ちんたらしている暇はない。

 (よし、いくぞ!伸びろ!)

 ……できたっ!

 仮説は正しかった。綺麗に真下へとツノは伸びていた。

 さぁ、時間がない。これを維持できるのは数秒だけだ。

 刃状に伸ばしたツノを用いて、直樹は体を縛り付けていた糸を切り落とす。


 「ブチブチブチィッッ」


 やった。

 切れた。

 

 「うぉぉぉぉぉぉ!自由だぁぁぁ!」


 直樹はいつぶりか、自由の身を存分に味わう。

 足場の悪い、バケモノの死骸の背中の上だが、そんなこと関係ないと言わんばかりに小躍りし、クルクル回る。

 手足が自由って素晴らしい!

 直樹はクルクル回り……


 「ブウゥゥ〜〜ン!!」


 目が合った。

 目が合ってるのかわからないけど、たくさんの目から見つめられているのはわかった。

 そこにはたくさんのハエがいた。

 直樹よりもでかいハエがいた。


 「あぁぁぁぁぁぁ!」


 直樹の悲鳴がこだまする。

 

 「ぴとっ」


 直樹の肩にまた、ウジ虫の糸がつく。

 天井を見ると、無数の糸が、意思を持って、直樹の方向へ向かっているのが見えた。

 天井から、空中から、無数の視線にロックオンされた。

 その視線はまるで直樹に語りかけているようだ。

 

 ”逃がさねぇぞ”、と。


 「ひいぃ、やぁぁぁぁぁぁ」


 



 〜〜地上まで、残り七十メートル。





 お読みいただきありがとうございます。

 少なくとも一章終了(四十話くらいで終わらせるつもりだった……)まで毎日投稿する予定です。

 投稿時間は前後させますが、よろしければお付き合い願います。

 感想、アドバイス等いただけましたら幸いです。

 また、評価、ブックマーク、是非お願いします。

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