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75 前に進む者と進めない者たち

「ふぅ、スピカ、ご協力感謝します」

「ううん、いいよ」


 これくらいお安い御用。

 私には霊樹の声なんて聞けないけど、ミラを通してなんとなく気持ちが伝わった。

 そして何故かわからないけどとても懐かしい感じがした。


「あの、霊樹はどうなったんですか?」

「そうですね。霊樹は三つに分かれました。一つは次の霊樹を生み出しこの霊樹の苗木に。1つはこの霊樹の杖に。もう一つは自らを媒介にして死んでしまった聖域全体の森を生き返らせるのに。すみません。部外者が勝手に。あなたたちの大切な霊樹を消してしまった」

「...いえ、むしろありがとうございます。あなたたちのおかげで救われました。ボクたちも聖域も、きっと霊樹も」


 そう言って、カヤは膝をついて祈りのポーズを取っていた。


『さて、私は帰る。だが、その前にお前たちに伝えておかなければならないことがある。お前たちが先ほど戦っていた化け物の事だ』


 ー▽ー


 ユニケルさんは帰っていった。

 どうやってか知らないけど側にいた霊樹の苗木と一緒に。

 そして私たちも祭壇を降りることにした。


 祭壇を降りた先にある里は壊滅的だった。

 いくら霊樹が聖域全体を戻したからといって、物理的に崩れた家なんかはどうしようもなっていなかった。

 霊樹が巨大なだけに祭壇から近かったらどうしてもね。

 幸い人たちは無事なようだ。

 祭壇から降りて里の中を歩いている私たちを遠巻きに眺めている。


「...ひとまずボクの家に行きましょう」


 それだけ言って無言で私たちは歩いていた。

 そんな中視界の端から泥が飛んで来てカヤに当たる。


「ちょっ、カヤ!」

「大丈夫です」


 カヤは頭についた泥を払いながら石が飛んできた方を見る。

 そこにはハイエルフの青年が私たちを睨みつけながら泥を投げた格好でいた。


「お、お前たち何てことをしてくれたんだ!! 霊樹が、霊樹が消えてしまった!! お前たちの仕業だろっ!!」


 その青年の言葉を皮切りに周囲にいた人たちが次々に私たちに罵声を浴びせながら泥を投げつけてきた。

 咄嗟にミラをかばう。


「お前たちのせいで!!」

「劣等種が!!」

「消えろ!!」


 ...こいつら。

 私たちはいい。

 でも、お前たちを長年守って来たカヤに対しても。

 どれだけ恥知らずなんだ。

 カヤが化け物と戦っていたことくらいわかるだろう。

 誰一人、戦いの場に現れることはなかった。

 恐らく逃げ隠れていたのだろう。

 なのにこいつらは!!


「「「ひっ」」」


 次の瞬間、彼ら全員が悲鳴を上げて止まった。

 カイエンさんから殺気が放たれたからだ。

 剣の柄に手をかけている。


「大丈夫です。あなたはいちいち手を出そうとしないでください」


 だけど、カヤの止められた。

 カヤは深く息を吸うと、


「うるさいっ!! バーカ、バーカっ!! 戦いもせず逃げ隠れていただけの臆病者たちが! 何が至高種だ。何がハイエルフだ! お前たちなんか霊樹に寄生するだけの存在じゃないかっ! お前たちの方がよっぽど劣等種だ!! 誇りも何もない、ただ霊樹に寄生して思いあがっているだけだ!! もうお前たちなんて知らない。望み通り出ていってやる!! 小さな世界で王様気分に浸っていろっ!!」


 里全体に響き渡るような声でそう言った。


「いきましょう!!」


 そう言ってカヤは走り出した。

 私たちは顔を見合わせると一緒に走り出した。


 里を出たあたりでカヤに追いつく。


「カヤ、よかったの?」

「何がですか?」

「あんなこと言って。里に残れないんじゃ」

「そうですね。出ていってやるって言いましたしね。でも、もう何の未練もないんです。あんな連中に認められたところで意味もないってやっとわかりました」


 カヤは立ち止まって私たちの方に振り替える。


「なので、ボクはここから出ていくことにします。だから、その」


 カヤは少しもじもじさせて、


「ボクも仲間に加えてください!!」


 とてもうれしい事を言ってくれた。


「もちろん!」

「大歓迎ですわ!!」

「よろしく頼むぞカヤ」

『よろしくねカヤ』

「ありがとうございます。これからよろしくお願いしますっ!!」


 こうして新たにカヤが仲間になった。



幕間入れてこの章は終わりの予定です。

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