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72 VS不浄の獅子

「”ヒールブラスト”!!」


 あちこち飛び回りながら隙を伺い、回復魔撃を加える。


「ぜぇぇぇぇいっ!!」


 命中した不浄の獅子の一体が一瞬動きを止めたところをカイエンさんが強襲。

 不浄の獅子が纏った霊樹の鎧が剥がれ落ちる。

 そこから見えるのは禍々しい瘴気の塊。

 畳みかける!!


「”ヒールブレス”!!」


 口から聖なるブレスを吐き出す。

 それと同時に術式を編み込む。

 ”エンチャントヒール”。

 武器に一瞬だけ癒しの力を付与する。

 生き物以外にはほとんど効果のない回復魔法だけど、付与魔術なら武器であっても一瞬だけなら大丈夫。

 ちなみに私が直接手に持っているなら特に問題はない。

 常に魔力を送ることが出来るからね。


 付与する対象はカヤの矢。


「っは、カヤ!!」

「はいっ!!」


 私の合図とともに癒しの力が付与された矢が不浄の獅子を貫く。


『ゴォガァァァァァッ!!』


 悍ましい悲鳴と共にその不浄の獅子は消え去った。

 よし、これで2体目。


「スピカさん、後ろ!!」


 カヤの声を聞いて後ろに目やると、不浄の獅子の1体が大きな口を開けて私に飛び込んできていた。

 まずい、この距離は避けられない。

 目の前が真っ黒に染まる。


 ...うっ、ぐっ、あああ「ああああああっっ!!」


 不浄の獅子に丸飲みされた私は脱出するために全力で癒しの力を放出する。


「はぁ、はぁ、ふぅ」

「スピカさん、大丈夫ですか!?」

「......最悪だったけど、何とかね」


 霊樹の鎧に守られていない内側から癒しの力を放ったからか、私を喰らった不浄の獅子は消し飛んだ。

 これで三体目。

 不浄の獅子だけど、その特性がだんだんとわかって来た。

 7体いる不浄の獅子だけど、偽物の体内にはこれまた偽物の核が備わっている。

 この核を破壊すれば偽物の不浄の獅子も消滅する。

 ただこれは至難の業だ。

 懸念通り偽物であっても不浄の化け物と同等の強さがある。

 この前戦った不浄の竜ほどでないにしても不浄の蛇よりも強いくらいか。

 さらに、霊樹の鎧に全身守られているため、私の攻撃が非常に効きづらい。


 さっきみたいに私が回復魔法で弱体化させて、カイエンさんが霊樹の鎧をはぎ取って、さらに中身に癒しの力を放って、癒しの力を付与したカヤの矢で撃ってやっと倒せた。

 霊樹の鎧のせいでタフすぎる。

 そんなのが7体も同時にいるのだ。

 今、三体目を倒せたけど、まだ4体もいる。


「もうスピカが片っ端から喰われたほうが早いんじゃないか?」

「バカ言わないでよ」


 そんなことして、そのまま死んだらどうするのか。

 いくら私が死ぬようなダメージを受けても回復できるどころか、死んでも蘇生できるからって、不浄の化け物相手に死んでも大丈夫だとそんな馬鹿な真似できるわけがない。

 そもそも気持ち悪いし。


「冗談だ。それにしても、これも本体じゃなかったのか。数が減ってきているとはいえなかなかきついぞ」


 たしかに、きつい。

 こっちの消耗が激しい。

 体力や魔力は私が回復させるけど、いわゆる気力の消耗が。

 これだけの強敵だ。

 当然長い時間戦っていれば神経がすり減ってくる。。

 私やカイエンさんは慣れているからいいけど、カヤがまずいかも。

 とはいえこのまま頑張ってもらうしかない。


「大丈夫。消耗戦ならこっちが有利。油断さえしなければ勝てる。死にさえしなければ不浄の化け物相手でも私が回復させてみせるから」

「それは頼もしい。カヤ、もう少し気張れよ!!」

「はいっ!!」


 不浄の獅子の一体が突進してくる。

 それに合わせて私たちは避けるように散開した。

 不浄の獅子は確かにその数を減らしている。

 最初は7体いたのに残りは4体。

 その分、私たちは楽になっているかと言ったら少し違ってくる。

 数は力だ。

 ただでさえ厄介な不浄の化け物が私たちより多くいるの状況は戦力的にみて圧倒的に私たちに不利な状況になっている。


 だけど、不浄の獅子は巨大だ。

 何が言いたいかと言ったら、その巨大さゆえにお互いを邪魔している。

 その隙を利用して私たちはうまく立ち回っているのだ。

 逆に言えば不浄の獅子はその数を減らすごとに邪魔者がなくなっていき実力を発揮するようになる。

 と言ってもやっぱり数が多い方が厄介だけどね。


「はぁっ!!」


 上空から霊樹の鎧を失った不浄の獅子の核をめがけて一閃。

 核が砕けるとともに不浄の獅子は消滅した。

 くそっ、これも違ったか。

 まあ、これであと3体。


「ふぅ。もうこれ全部本物なんじゃねーのか?」

「何言ってんの?」

「いや、前に似たようなことをする魔物いたからな。分身する魔物なんだが、全部倒さないと死なないやつが。まあ、アレはここまで強くなかったし、分身すればするほど1体1体が弱くなるやつだったけどな」

『あっ!!』


 戦闘の合間に話をするカイエンさんにメーティスが反応した。


「どうしたの?」

『カイエンさんの逆よ。私たちは都合の良いように現実を見ていたのよ』

「どういう事?」

『不浄の化け物に性格があるのか分からないけど、一気に倒した不浄の熊や不浄の竜と違って、弱った状態で様子を見た不浄の蛇は逃げようとしていたわ。今回にしても相手の戦力を徐々に削っている。このままじゃ不浄の獅子にも勝ち目がないことが分かるはずよ。奴らは狡猾。なのにあいつらは逃げ出すどころか焦っている様子もない。それどころか本体を守ろうとする様子もないのよ』

「それって」

『つまり、あの中に本体はない可能性が高いわ。最初に一体出てきていたからそれが本体って私たちは信じちゃっていたのかも』

「じゃあ本体はどこにいるの!?」

『族長は霊樹と半分融合していた。だったら不浄の獅子は?』

「まさか、霊樹の中?」


 その時、不浄の獅子たちが妙な動きを見せる。

 私たちから距離を取ると悍ましい咆哮をあげた。

 最初の時みたいに。


 霊樹の根が盛り上がり、形を形成し、落ちる。

 そこに現れたのは、倒したはずの不浄の獅子4体。


 絶望的な光景が目の前に広がっていた。


 ー▽ー










「スピカ!!」


次の投稿遅れそうです。

だいたいアイスボーンのせい

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