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70 封印

 右手に黒い宝玉を。

 左手に族長を捕まえて、皆の元まで飛ぶ。


「スピカ!」

「よいしょっと」


 着地して族長を放すとみんなで迎えてくれた。


「無事でしたのね」

「うん。みんなのおかげだよ。これも、こっちも回収できた」


 黒い宝玉、そして族長を見る。

 族長はまだ意識があるのかうわ言の様に何かつぶやいている。


「私は神だ、神になったのだ。なのに何故だ、こんな劣等種どもに」

「...族長」


 そんな族長を見てカヤは何とも言えない顔をしている。


「スピカ、まだ警戒を怠るなよ。もしかしたらアークが来るかもしれん」

「うん、そうだね。でも、待って、先にこれを封印しないと」


 今回、不浄の化け物と戦わずに黒い宝玉を回収することが出来た。

 それはかなり大きいが、だからか黒い宝玉の瘴気は全く弱まっていない。

 ぶっちゃけ持っているだけでなかなかにヤバい。

 持ち主だった族長は別として、こんな瘴気の塊、私にしか持てないかもしれない。

 普通の人は持った瞬間、死んでアンデットになりかねない。

 これを一から封印するとなると骨が折れるかも。

 それでも不浄の化け物と戦うよりはましだろうけど。


「ちょっと集中する。アークの警戒お願いね」


 座って、目を瞑り、黒い宝玉の封印に集中する。

 瘴気を消すように、何十にも外から回復魔法をかけていく。

 魔法陣まで作るおまけつきだ。

 これなら封印できるはず。


「私は神、この世で最も尊い存在、私は神、神、かみ、カミ、カミ、カミカミ、カミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミカミ」

「ぞく、ちょう?」


 耳に入ってくる音がだんだんと歪になっていくのが聞こえてきた。

 それはどんどん濁っていき、人とは思えない悍ましい声に。


「スピカ!!」


 ミラの声に目を開けると、そこには幽鬼のような顔をして不自然に立ち上がる族長の姿が見えた。

 族長は人とは思えない動きで私に襲い掛かって来た。

 だけどそれは止められた。

 周りを警戒していたカイエンさんに、真っ二つに斬られたのだ。

 いろいろ聞き出そうと思ったけど仕方ない。

 それにしても、瘴気にやられて精神がおかしくなっていたのか。


 もう少しで封印が終わる。

 黒い宝玉の周りを完全に何重にも回復魔法で固めて瘴気を外に出さないようする。

 そしていずれは完全に瘴気も消え去るだろう。

 残念ながら、黒い宝玉自体を消し去ることはできないけど、こうしておけば安全なはず。

 今の所他の黒い宝玉も大丈夫だし。


 ラストスパートをかけようと、再び集中しようとした瞬間、私に衝撃が襲う。


「な、に」


 魔法陣の外で浄化されそうにながら、私に襲い掛かかろうとカサカサ動く、斬られたはずの族長の姿があった。

 その姿は見る影もなく、醜く腐り落ちたアンデットとなっていた。

 だからか、斬られたはずの所はくっついていたし、アンデットなったからこそ、魔法陣に入ろうとしながらも入ることが出来ないでいた。


「無駄だよ、アンデットにはこの中には入れない」


 守るための魔法陣じゃないけど、高密度に癒しの魔力が込められているのは変わりはないからね。

 そして、そんな元族長を木っ端微塵にカイエンさんは切り刻んだ。


「よし、これで封印かんりょっっ、え?」


 先ほどとは比較にならない衝撃が私を襲い、手から黒い宝玉が零れ落ちる。

 下を見ると、お腹から霊樹の根が生えていた。

 あらゆる臓器が消え去り、口から血液があふれ出す。


「「「スピカ(さん)!!」」」

「なんで」


 何で霊樹の根が。

 もう操るものはいないのに。

 まさか。

 ズルリと根が抜かれ、私は倒れ臥せる。

 何とか、手を伸ばし黒い宝玉をつかもうとする。

 だけど、掴んだ瞬間私の手ははじかれた。

 黒い宝玉はひとりでに浮かび上がり、魔法陣の外まで出ていった。

 そして、その傍らに、木っ端微塵にされたはずの族長がおぞましく再生される。


 ああくそ、やられた。

 黒い宝玉の奴、力を温存していたな。

 遠隔で霊樹を操って、私の封印が終わる間際に脱出するために。


 私が中途半端に施した封印を破り、黒い宝玉から膨大な瘴気があふれ出て族長に絡みつく。

 それは次第に形を成していき、現れたのは、巨大で醜く悍ましい不浄の獅子だった。



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