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60 迷子

「......カイエンさん」

「......なんだ?」

「迷子だよね?」

「......」

「迷子なんだよね?」

「......すまん」


 まあ、そんな気はしていたけど!!


 私たちがメイオール大陸に到着して、3週間ほど経った現在。

 私たちは目的の霊樹がある森林地帯に足を踏み込んでいた。

 ユニケルさんは行けばわかると言っていたけど、大森林に足を踏み込んでも何もわからなかった。

 なので、霊樹のふもとまで行ったことがあるというカイエンさんに道案内を頼んだんだけど、2週間ほど彷徨った結果、迷子であることが今判明した。

 いや、うすうす迷子だって気づいていたよ。

 でも、カイエンさんがあまりにも自信満々に前を歩くから大丈夫だって信じたかった。

 信じたかったんだけど結果は迷子だった。


「わからないならちゃんと言ってよ!!」

「いや、だいたいこっちの方向だとは覚えているんだ」

「雑っ!?」


 そんな感覚で案内を買って出ないで欲しい。

 頼った私たちも悪いけど。


「やっぱり大森林内の集落を伝って行った方がよかったですわね」


 少し後ろでユニコを引いているミラがぼやく。

 ちなみに馬車は外している。

 こんな場所で馬車になんて乗れないからね。

 でも、捨てたり売ったりしたわけではない。

 ミラの空間収納の魔法で亜空間にしまっている。

 空間収納の魔法は難易度が非常に高く、習得しても大した容積の物は収納できない。

 私ですら膨大な魔力に任せて力技で押し込んで何とか手に持てる程度の物しか収納できない。

 しかしそこは魔法の申し子ともいえるミラである。

 ちょっと教えただけで簡単に習得して、結構な容積の物も簡単に収納できた。

 それこそ馬車とか。

 これがチートか。

 今や、ミラにほとんどの道具類を預けていたりする。


 それはそうとして、この大森林なんだけど、いろんな種族の人が様々な集落を築いているらしい。

 主にエルフが。

 私たちがこの大森林に入る前に立ちよった村からも一応集落に通じている道が存在していた。

 していたんだけど、いちいち道に沿って集落を伝って行っても遅いし、そもそもたどり着けるかどうかわからないってことでカイエンさんに任したのが間違いだった。

 まあ、仕方ない部分もあるんだけどね。

 大森林の手前で立ち寄った村で聞いた話では、霊樹何て伝説の存在みたいだし。

 それでも伝説としてはちゃんと残っているし、何よりユニケルさんの話があるから霊樹はあるにはあるんだろうけど。


「カイエンさんはどうやって霊樹のふもとにまでたどり着いたの?」

「ああ、あれは70年くらい前だったか。こちらの大陸を旅している時にこの大森林に入ったのだ。中心部に向かいながら修行をしていたのだが、ある時死にかけてな」

「え、ほんとに?」


 カイエンさんが死にかけるだなんてびっくり。


「ああ。腹減って適当に食ったキノコの毒にやられた」

「何やってんの!?」


 いや、マジで何やってんの?

 この人実は考えなしのアホなんじゃないの。


「あの時は俺も若かったからな。もうそんな真似はせんよ」


 若いで済ませられる問題かなぁ。

 てか、70年前ってもう魔女の呪いとやらで不老になっている時だから、年齢的にはすでに私の倍以上生きているはずなんだけど。

 ...若くはなくね?


「それでだな。毒で死にかけているところでエルフの女に助けてもらったのだ」

「へぇー」


 種族も違うそんな怪しい人を良く助けたねその人。


「アイツは1週間も死にかけの俺を看病してくれたのだ。その後、しばらくは厄介になったものだ」


 何それ、聖人じゃん。


「そして、俺の体が完全に癒えて出ていくことになったのだが、その時に一緒に旅をしないかと誘ったのだが、アイツは門番としての責があるから一緒に行くことはできないと断られたのだ。だが、次もう一度会うことがあれば共に旅をすると約束したものだ」

「ふーん。じゃあ、そのエルフさんが霊樹のふもとの住人でだったてこと?」

「そういう事だ」

「だったら、もう一度会えるかもしれませんわね。エルフの寿命は長いですし」

「そうだな。そうだといいな」

「まあ、素敵っ。思いあう二人が長い時を隔てて再会するなんて!」


 カイエンさんの恋愛?話を聞いて、ミラが興奮したように熱くなった。

 さすがは女の子。

 私? 私も女の子ですよ。

 ただ、まあ、カイエンさんにもいろいろあったんだろうけど、結果的には70年もそのエルフさんを放置しているんだよねって思ってしまっていたりする。

 それでも一人の女性を気にかけているあたり、そのエルフさんのことを意識していない訳でもないんだろうね。

 うん、会えたらいいね。


『んー、とは言っても霊樹まで行かないことにはそのエルフさんにも会えないわね。カイエンさん、その霊樹ってどんなのだった?』


 メーティスが顕現してカイエンさんに質問する。

 ちなみにこうしてメーティスがカイエンさんの前で顕現したことは何度かある。


「ああ、俺も近くで見た訳じゃないから詳しい形状はわからんが、天まで届くような強大な大樹だった」

『天まで届く。...なるほど。スピカ、ちょっと人竜化して空まで飛んでくれる?』

「わかった」


 メーティスに言われた通りに人竜化して空を浮かぶ。


『んー、やっぱり何も見えないわね。よし、ありがとうスピカ』

「はいはーい」


 そして、地上に降りて人竜化を解いた。


「何か分かったのか?」

『ええ。おそらく幻覚ね。いえ、幻影かしら。霊樹が見えないように隠しているのよ。そんな巨大な霊樹なら見えていないとおかしいからね。わざわざスピカに飛んでもらって確認したんだから間違いないわ』


 なるほど幻影か。

 相手に作用する幻覚なら私には効かないから見えるだろうけど、幻影なら私でも見えないってわけか。


「では、霊樹を見つけることはできないんですの? それこそ霊樹を知るエルフの方に入れてもらわなければ」

『そんなことないわよ。ミラ、あなたなら霊樹を見つけることが出来るわ』

「わたくしですの?」

『ええ。霊樹がいくら隠れていても確かにあるのなら見つけることが出来るはずよ。自然の声に耳を傾けることが出来るあなたなら』


 なるほど、自然魔法を使うミラは魔法で自然と意思疎通しているようなものだ。

 ならば自然に耳を傾けて見つけることが出来るかもしれない。

 隠れているといっても霊樹も自然の一部だし。


「わかりました。やってみますわ」


 そう言ってミラは目を瞑り集中し始めた。


「...声。風の声、木々の声、大地の声。水の声。皆さん、わたくしに力を貸して」


 ミラを中心に当たりに魔力を浸透する。

 しばらく目を瞑って集中しているミラだったが、突然目を開いてゆっくりと歩き出した。


「ミラ?」

「...わたくしを呼ぶ声が聞こえますわ」


 ミラはそう言って、ユニコを引いて先に進んでいく。


「どうしよう、ミラが電波になってしまった」

『そういうのいいからミラについて行くわよ!』


 メーティスに怒られたので私はおとなしくミラについていくことにした。




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