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48 二つの戦い

 剣を左右に構える。

 実戦で二刀流を使うのは久しぶりだけど、問題はない。

 動きはちゃんと体に染みついている。


「いくよ」


 こちらから攻撃を仕掛ける。

 相手は格上。

 受け身に回っていてはじり貧になるだけだ。

 ならば前に進んで活路を見出すしかない。

 そもそも、師匠の剣技、スターティア流は2振りの剣による手数重視の超攻撃型の剣技なのだ。

 この剣技は戦いの才能がない私にピッタリの剣技である。

 闘気の使えない私はどうしても技の威力が低い。

 技術や立ち回り、身体能力でごまかしても限界がある。

 それ故攻めて攻めて攻めまくるこの剣技が私にはピッタリなのだ。

 相手に何もさせなければいいのだから。

 当然それ故に隙も多いが、その隙すらも囮に攻撃を加えるのが私たちの戦い方だ。

 そうなると負傷もする可能性が高いけど、私には回復魔法があるからね。

 最終的に勝てるのだ。

 ていうか、回復魔法も無しに素でそんなことする師匠がおかしいと思う。

 私以外の弟子がいないわけだ。


「はぁぁ!!」


 右で左で剣を振るう。

 技と技を隙なく連続で繋げていく。

 最速で接近し切り上げる”星影(ほしかげ)”を起点として、斬り降ろし”危堕ち(とみておち)”、回転下段斬り”星落とし”、連続突き”雨降(あめふり)突き”、空中回転縦斬り”蹈鞴(たたら)撃ち”。

 連撃に継ぐ連撃で絶え間なく、攻撃を仕掛け続ける。


「せやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ーーギギギギギギギィィン


 絶え間なく鳴り響く金属音。

 防御無視と言ってもいいほど攻撃しているのにすべて防がれる。

 だけどまだだ。

 一際踏み込んで強めの大横一文字に斬る。

 男はそれをバックステップで避けて距離を取るけど、これでいい。

 相手は格上なんだから出し惜しみなんかしない。

 トドメの追撃。


「竜せっ「見事だ」え?」


 竜閃を放った瞬間、視界が回った。

 一瞬の浮遊感の後、背中から地面に落ちる。

 何をされた?


「ぐっ」


 そして上から剣の切っ先が向けられる。

 やっばい。


「お前、流星の弟子か?」

「師匠を知ってるの!?」


 ー▽ー


 スピカが壮年の男と戦っている時、ミラはトリスタンと相対していた。

 ミラとしてはどこかでスピカを待つつもりでいたのだが、先ほどのフロアの次のフロアが遺跡の最深部の様でそこにトリスタンがいたのだ。


「あなた、こんなところにいましたのね」


 トリスタンは祭壇のような場所の中心部で佇んでいた。

 ミラでもわかるくらいトリスタンの禍々しさが増している。

 昨日の夜よりもずっと。


「お前は、あの忌々しい白い小娘と一緒にいた奴か」

「そうですわ」

「そうか。だがもはやお前のような戦えない奴の力は必要ない。殺されたくなかったらとっとと失せろ」


 トリスタンはミラに興味を失ったかのように後ろを向く。


「バカにしないでくださいまし!! わたくしだって戦えますわ!!」


 ミラは侮辱されたのが気に入らない。

 トリスタンとしては剣士でもない魔術師程度一人ならどうとでもなると思っての言い分だが、そんなことミラは知らないし、知っていたとしてもやはり気に入らないだろう。


「それとも罪もない人々を殺し、騎士たちを殺したのに、わたくしとは戦えないと? ああ、この町には剣士の方が多いようですし、知らない魔術師は怖いんですのね。とんだ臆病者です事」


 ミラは箱入り娘であるが貴族である。

 侮辱されるのは気にいらないし、されたならやり返す。

 貴族としての誇りを保つために。


「なんだと?」

「あら、臆病者に臆病者と言っただけですわよ。そもそも昨日の襲撃までは随分とこそこそしていたようですしね。これが臆病者でなくてなんなのかしら。おーほっほっほっほ!!」


 挑発するだけ挑発して高笑いをする。

 ミラの見た目からして完全に悪役令嬢である。


「そこまで言うなら殺してやろう」


 そして挑発に乗ったトリスタンは剣を抜く。


「ユニコ、ガルスさんを」


 ミラがそう言うとユニコはミラの意を組んでガルスを後ろの通路に放り投げた。

 それを見てミラは通路を土壁で軽く塞ぐ。


「わたくしだってそう易々と遅れは取りませんわよ」


 ミラは懐から魔法の扇を取り出して構える。

 勝てるかどうかはわからないけど、スピカがやって来るまでは相手の体力を削ろうと。

 可能なら倒してしまおうと。

 今こそ自らの成長を試す時だと。





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