表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/78

47 遺跡にて

「邪魔ぁ!!」


 馬上から回復魔法を飛ばしまくる。

 それにしてもこの遺跡広すぎる!!

 ユニコに乗って走っているのにトリスタンどころかガルスさんたちも見つからない。

 どうやら遺跡は通路といくつかの広いフロアに分かれているみたい。

 何とか不浄の気配が濃い方に行こうとしているんだけど全然違う方向に行っちゃってたりする。

 しかもアンデットもうろうろしてるし、回復魔法1発で倒せるけど数が多いし邪魔だね。


 これほんとユニコ連れてきてよかったかも。


『スピカ、あっちの通路はまだ行ってないわよ』

「わかった、ユニコお願い」


 行き止まりに当たって戻って同じようなところに戻って来るのを繰り返しながら遺跡の内部を進んでいく。

 幸いにもメーティスが脳内マッピングをしてくれているおかげで迷うという事はない。

 おかげでいちいちマッピングする必要がないからこれでもかなり早く踏破しているはず。

 私じゃまずそんなことできないのでメーティス様様だ。


 行ったり来たりを繰り返しているとさらに深く近くへと進める階段を見つけた。

 より濃い不浄の気配がここから来ている感じがするし、これが正規ルートかも。


「ミラ、ユニコ行くよ」

「はいですわ」


 警戒しながら階段を下っていく。

 瘴気がどんどん濃くなっていく。

 これはトリスタンの居場所まで近いかも。


 階段を下りた先には一際広いフロアが広がっていた。

 そこにはアンデットではなく騎士と思われる人たちの死体が転がっていた。


「これは……」

「そんな、酷いですわ……」


 鎧を着ているがどれもこれも体が腐り落ちている。

 不審死と同じ死に方だ。

 本当に酷い死に方。

 せめて安らかに


「うぅ、誰かいるのか」


 ゴスペルを使おうとしていると微かに声が聞こえた。


「いるよ!! どこにいるの!?」

「こ、ここだ」


 声のする方へ向かう。

 すると横たわる腐った死体の中に一人だけ生きている人がいた。

 ガルスさんだ。

 良かった生きている。


「ガルスさん!! 大丈夫!?」


 大丈夫な訳はない。

 見るからに瀕死の重傷を負っているし瘴気にもかなり蝕まれている。


「スピカ殿か?」

「そうだよ、すぐに回復魔法をかけるから」

「ぐ、ぅ、どうかトリスタンを止めてくれ」


 回復魔法をかけようとするとガルスさんはそれだけ言うと気絶した。

 だけど問題ない、死んでいないなら問題はない。

 ガルスさんに回復魔法をかける。


「なにこれ」


 だけど、なんだか効きが悪い。


『おそらく瘴気が回復を阻害しているわね』

「でも下手に強くすると過剰回復しかねないね」


 ならば徐々に強くしながら時間をかけて治す。


「「「アァァアアァァアアァァァァ」」」

「スピカ!!」


 瘴気に当てられ続けたからか騎士たちの死体がアンデットとしてよみがえる。

 次から次へと。


「邪魔するなぁぁ!!」


 ミラしかしないので鬱憤を晴らすかのように人竜化し、ガルスさんの治療をしながらゴスペルを使う。

 ゴスペルはフロア全体に広がり、アンデットを人に戻していく。

 ついでにガルスさんの治療もちょうど終わった。


「よし、これで大丈夫。ガルスさんをここにおいていくわけにはいかないし、一度戻って」


 その瞬間、私は背中から斬られた。

 いや、違う。

 切られたと勘違いするほどの剣気で棒状の物で叩きつけられた。

 まったく気付かなかった。

 致命傷になるかならないかの絶妙な加減だった。


『「スピカ!!」』


 メーティスとミラの声が聞こえる。

 本当に次から次へと。


「何をする!!」


 倒れ込む一瞬で背中の傷を回復し、剣を抜き出して身を反転させて私を切った存在に連続して切りつける。

 が、平然とすべて防がれて最後には距離を取られた。

 こっちもこっちでかなり不意打ち気味の攻撃だったのに。

 ていうか、この人ヤバい。

 ちょっと剣を交えただけでわかる。

 下手したら師匠よりも強いかも。


「ミラ、ユニコ、ガルスさんを連れて逃げて!!」

「でも」

「早く!!」

「わかりましたわ」


 ミラが素早くユニコに乗ると、ユニコは露わにした一本角で器用にガルスさんを引っかけると奥の方に走っていった。

 奥の方は危険だろうけどこの際仕方ない。

 出口の方はあの人が陣取っているからね。


「逃がすか!!」

「させない!!」


 尋常じゃない速さでユニコ達を追おうとするが何とか道を塞ぐ。


「チッ」


 彼は舌打ちすると仕方ないといった様子でもう一度距離を取った。

 遺跡の内部は薄暗いからはっきりとは見えないけど、壮年の男性みたいだ。

 かなりの軽装で剣だけを持っている。

 何より不意打ちされたときと違い、伝わってくる気配が尋常じゃない。

 こんな人がいるの?


「魔物かと思ったが、子供か? まあいい、こんな所で何をしているのか知らないが少し痛い目に合ってもらうぞ」


 男はそう言って剣を構えて攻撃を繰り出してきた。

 やばいやばいやばい。

 ヤバいとしか言いようがない。

 強さの桁が違いすぎる。

 たぶんこの人は敵じゃない。

 階段の方から来ていたからね。

 だから説得したいんだけど。

 しゃべる暇もない。

 防戦一方で何もできない。

 いや、防御もほとんど意味をなしていない。

 何をやっても斬られる。

 力も手数が圧倒的に足りない。

 今まで戦ってきた相手とは次元が違う。

 それこそ師匠や不浄の化け物よりも。


 幸いにもかすり傷程度しかまだ負っていない。

 あの人が言った通り痛い目程度の攻撃なんだろう。

 なのにこの強さって。

 ていうか、ダメージくらってもすぐに回復するから決着がつかない。

 おかげで攻撃の苛烈さが増していくばかりだ。

 だったらやられたフリをする?

 冗談じゃない。

 それは嫌だ。

 ムカつく。

 どんな事情があったにせよ最初に斬られたし今も斬られまくっている。

 回復魔法で傷は治しているし、痛みも回復魔法の応用でほとんどない。

 でもそれはそれだ。

 何とかしてこの人に一矢報いたい。

 そのためにもやっぱり剣がもう1本欲しい。


『スピカ、アレが良いわ!!』


 どうやらメーティスが良いのを見つけてくれたみたい。

 戦いながら探し回った甲斐があった。


「はぁ!!」


 負傷覚悟のカウンター気味に攻撃をしたのちに何とか距離を取る。

 普通に回避されたのがまたムカつくけど今はそれどころじゃない。

 走って地面に落ちている1本の剣を取る。

 恐らく騎士たちの誰かのものだろう。

 その中でも私の剣と似ているものを取る。

 本当は対になっているもの以外を使うのはあまりやりたくないんだけど、贅沢は言ってられない。

 久しぶりの二刀流。

 剣士としての私の本来の力がこれで発揮できる。

 これで何とか一発は入れてやる。

 流星の弟子の力を見るがいい!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ