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46 トリスタンの行方

 翌朝、これからどうしようかなと考えていたらソリストさんが私たちの部屋にやって来た。

 まあ、客室であって私たちのものではないけどそんなことはどうでもいい。

 部屋に入って来たソリストさんは何とも微妙な顔をしている。

 無理もないかもね。

 昨日あんなことがあったことだし。

 私ももし弟や妹たちの誰かが黒い宝玉で暴走してしまったとしたならどうしていいかわからないし。

 あの子たち大丈夫かなぁ。


「どうしたのソリストさん」

「スピカ殿、ミラ殿」


 何とも言えない表情で口を開こうとしては閉じるのを繰り返している。

 葛藤している様子がありありと見える。

 やがて決意を固めたのか一度目を瞑ってからとても真剣な表情で切り出してきた。


「2人に頼みがある」

「何かな?」

「トリスタンの居場所が分かった」


 む。それはとても重要なことだね。

 黒い宝玉を追っている以上、トリスタンを追う事になるし、黒い宝玉の気配は探知しにくいからどうしようかと悩んでいたところだ。


「それで、父上は精鋭の騎士たちを率いてトリスタンの討伐に向かった」

「!! それは......」

「危険分子と判断したとのことだ。それは当然だ。何しろあんなことをしたんだからな」

「だったらなんで私たちを連れて行かなかったの?」


 私たちは下手な騎士たちよりも十分戦えるし、何より強力な回復魔法を使えるってわかっているだろうに。

 それに黒い宝玉に対して協力するってなっているのに。


「身内の不始末は自分でつけると言ってトリスタンの居場所が分かった瞬間に飛び出していったよ。これ以上スピカ殿、ミラ殿には迷惑をかけることが出来ないと言ってな。俺も行こうとしたが置いて行かれたよ。お前に兄弟殺しはさせられない。もしものために残ってくれって言って」

「ガルスさま」


 まだ数日しか経っていないけど豪傑な武人らしいガルスさんらしいっちゃらしいのかな。


「それで頼みって」

「ああ、恥も外聞も捨てて頼む。どうか父上たちを助けてやってくれ。そしてトリスタンを殺してくれ。このままでは父上たちは殺されてしまうかもしれない」


 ソリストさんはそう言って頭を下げた。

 貴族の大人が素性もしれない子供に頭を下げる。

 それも兄弟を殺してくれと。

 どんな覚悟があるのだろう。

 元々そのつもりだけど、こんなの断れるはずないじゃないか。


「頭を上げてソリストさん。私たちは元から黒い宝玉を封じるつもりだし、その持ち主がトリスタンなら彼と戦うつもりだよ。だからトリスタンの居場所を教えて」

「本当に良いのか?」

「もちろん。それにソリストさんに兄弟殺しをさせないって言うならガルスさんにも子殺しをさせる訳にはいかないからね。ミラもそれでいいよね?」

「もちろんですわ」

「っ、ありがとう。恩に着る」

「それは終わってから。それで居場所は?」


 トリスタンの居場所を聞くとどうやら例の地下遺跡とのこと。

 地下遺跡に入る黒い影が目撃されているし、そこから漏れ出る瘴気が急激に増していることから、まず間違いないとのこと。


「なるほど、わかった。すぐに準備して向かうよ」

「ああ、俺も」

「待って、ソリストさんはここにいて」

「だがそれは......」

「ガルスさんに言われたでしょう? もしもの時は頼むって」

「だがスピカ殿たちだけに任せる訳には」

「私たちは大丈夫だから。あなたはここにいて」

「ぐっ、......わかった」


 ソリストさんを連れていくわけにはいかないからね。

 場合によれば不浄の化け物が相手になることもある。

 そうなるとなりふり構っていられなくなるかもしれない。

 その時にソリストさんがいればいろいろ不都合だし。

 何より弟であるトリスタンと戦わせるわけにはいかない。


『メーティスも準備はいいよね?』

『もちろんよ。これで終わりにしましょ』

『うん、もう逃げ場はないはず。これで終わらせる』


 ー▽ー


 私とミラはユニコに乗って地下遺跡がある場所に向かった。

 町から少し離れている程度なのですぐに着いた。

 ユニコが早いっていうのもある。


「これは、きついね」


 着いたはいいものの、これはちょっと予想外。

 地下遺跡の入り口から瘴気が漏れ出ているのは知っていたけどここまでとは。

 瘴気に侵されて周りの草木が腐っている。

 何よりヤバいのは遺跡の内部。

 これ、生身で入ったら数時間で死にかねないよ。


「ミラは大丈夫?」

「ええ、何とか」


 元々ミラは魔力量がかなり多いので、瘴気に対してある程度の抵抗力があるのかも。

 よくよく考えたら学府でミラが襲われた時なんかはアンデットや不浄の蛇なんかがいたけど、私が回復魔法をまき散らしていたとはいえ、瘴気に侵された様子はなかったしね。

 それでも少し気持ち悪そうにしている。


「ユニコもこのまま入るけどいける?」


 私の問いにユニコはもちろんといったように嘶いた。

 チラッと遺跡の内部を除いたけど、どうやらかなり広いようだ。

 ユニコも問題なく入れる。

 こちらもユニコーンだから聖の気をまとっているからかある程度瘴気の影響を受けないで済んでいるみたい。

 ミラより大丈夫そうだけどまだ赤ちゃんみたいなもんだし無理はしない方が良いだろうね。


「よし、入るけどその前に”リジェネレイト”」


 継続的に回復する回復魔法をミラとユニコにかける。

 これなら傷ついてもすぐに勝手に回復できるし、癒しの力を纏っているようなものだから瘴気の影響も無効化できるはず。


「これで大丈夫なはずだけど」

「はい、これなら何の問題もありませんわ」

「よし、なら行くよ。ユニコ突撃!!」


 私の号令と共にユニコは嘶いて遺跡の内部に突撃した。





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