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43 最悪な気配

 足りない。

 もっとだ。

 もっと力がいる。

 そのためにはもっと強い奴らを。

 こんな奴ではだめだ。

 もっと強い奴の力を。

 最後には剣聖すらも。


 ー▽ー


 おはようございます。

 スピカです。

 ご覧ください。

 とても綺麗な星空です。

 ええそうです。

 まだ夜中です。

 目が覚めたのには理由があります。

 警戒していて眠れなかった?

 警戒はある程度していましたが普通に寝ていました。

 では何故目覚めたかと言うと、良くない気配がしたからです。

 瘴気、私が良く不浄の気配と言っているものです。

 はいそうです。

 何となく嫌な予感はしていました。

 この気配は恐らく不浄の化け物由来の気配、黒い宝玉の気配です。


 最悪だ。


「どうしようメーティス」

『とりあえずミラを起こして話しましょう』


 そうだね。

 ミラにも話さないと。


「ミラ、起きてミラ」

「うぅぅん。どうしましたの?」


 ミラが眠たそうにしながら目を開ける。


「不審死の正体が分かった」

「ふしんしぃ?」

「不審死の正体は不浄の化け物だよ」

「え!?」


 私がそう言った瞬間寝ぼけていたミラの眼が見開かれる。

 それほどにミラにとっても不浄の化け物という存在は大きい。


「一瞬だけだけど不浄の気配がした。このタイミングでしたってことはほぼ不審死に関わっていると思って間違いないと思う」

「ど、どうしますの!? 現場に向かいますの?」

「それはやめておいた方が良いね。そもそも一瞬気配がしたってだけでどこからしたとか正確にわからないし、探し回るにしても怪しさ満点すぎる。それで変に疑われても困るしね」

「確かにですわ」


 だからと言って放置は到底できない。


『とりあえず朝まで警戒して何もなければガルスさんに相談しましょう』

「そうだね」

「メーティスは何と?」

「朝まで警戒。明日ガルスさん相談だって」

「確かにそれが一番ですわね」


 という事で朝まで警戒していたもののそれ以降は何もなかった。

 そして翌朝。


「おはよう昨日は眠れたか」

「いえ、その昨日、また不審死がありませんでしたか?」


 私がそう言うとガルスさんの目が見開かれる。


「どうして知った?」

「昨日、不浄の気配、瘴気を夜中に感じました。一瞬の事でしたからもしかしたらと思って」


 嘘は言っていない。

 ただ、私は不浄の気配が、黒い宝玉が不審死の元凶だと確信している。


「それは本当か?」

「はい」

「そうか」


 ガルスさんはしばらく思案してこう切り出した。


「スピカ殿、昨日の今日ですまないがこの事件の解決に手を貸してはくれないか。もちろん報酬は出す」


 そこにはいろいろな葛藤があったのだと思う。

 私たちは部外者だし客人だし、それにオークに襲われた町の事を知っているとはいえ女でしかも弱弱しく見える。

 例え私がそれなりに強いと見抜いていたとしてもそれは変わらない。

 私が思っている以上にこの人はすごい人なのかもしれない。


「わかりました。引き受けます」


 そもそも私に黒い宝玉を放置するだなんて選択肢はない。

 もしまた不浄の化け物が出てきたらこの町が滅んでしまうかもしれないし。

 そんなことはさせない。


「ミラはどうする?」

「もちろんわたくし手伝いますわ。お役に立てるかどうかわかりませんが」

「もしかしたらアレが相手になるかもしれないよ?」

「でしたらなおさらです。スピカだけに任せる訳にはいきません」


 不浄の化け物と戦う事になるかもしれないというのに。

 ほんと強くなったね。


「わかった。ところでガルスさん、これと似たような物は見たことないですか?」


 そう言って私は黒い宝玉を取り出す。

 師匠が落とした物だ。


「これはなんだ?」

「私は黒い宝玉と呼んでいます。今は封印していますが、これにはとてつもない瘴気が宿っています」

「ふむ」

「2度ほど見ただけなので確証はありませんが、この宝玉は意思すらあるようで使用者に願いを叶える力を与えます」


 師匠の若返りしかり、学府の子の召喚しかり。


「しかし、使用者が弱まったとき、宝玉は使用者を乗っ取ってアンデットの化け物になります。とても恐ろしい化け物に」

「なるほど、つまりスピカ殿は今回の不審死の事件の元凶はこの黒い宝玉が原因であると?」

「はい、まず間違いなく。これの厄介なところは普段少しも瘴気を発していないところです。なので発見は困難になるかもしれません」


 かなり荒唐無稽な話かもしれない。

 現物があるとはいえこれは封印状態だし。

 でも私が言えることは全部言った。

 判断はこの人に任せるしかない。

 ちなみに封印と言っても黒い宝玉に回復魔法をかけ続けているだけだ。


「わかった。スピカ殿の話を信じよう。思ったよりも厄介な事件なのかもしれないな。いや、このタイミングでスピカ殿たちが来てくれたのが幸いなのかもな。よし、ソリストと数名の騎士をつけよう。どうにかして犯人を見つけてくれ」

「任せてください」


 こうして私たちは再び黒い宝玉を相手にすることになった。







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