42 リゲル
投稿するの忘れちゃってたぜ☆
「すごい! ミラ、メーティス、海だよ海!!」
数日後、私たちはリゲルに到着した。
町を出てから急に疲れが出てきて休ませてもらったけど、それ以外のハプニングは特になくリゲルに到着出来た。
流石に大きな町の街道を進んだだけあって、魔物や盗賊なんかは出てこなかった。
それよりも初めて海を見た。
本で見たりメーティスから話を聞いたりしていたけど、思ったよりもずっとすごい。
『わかったから落ち着きなさい』
「でもでもだって」
『あんたは子供か!』
「むー」
「うふふ。スピカは海が初めてですのね」
「うん。うちの領地、内陸部にあったから。学府に行くまで領地から外に出たことなかったし。ミラは来たことあるの?」
「ええ、何度か。ただ船には乗ったことありませんわね」
「私も湖で小舟に乗ったことあるくらいかな」
大陸を渡るとなると船に乗っていかないといけないしね。
一応交易関係にあるらしいけど、私たちが乗って行ける船があると良いな。
「思ったよりも活気がありますわね」
ミラの言う通り事前に聞いた不審死の事件があっても町の人たちは元気に暮らしているようだ。
気になることといえば町中の至る所に道場のようなところがあるくらいだ。
さすがに海辺の方には漁師の方が多いけど町中に剣士っぽい人がいる。
「そうだね。とりあえずこの手紙をこの町の領主の所に持っていこうか」
「ですわね」
もう少しこの町を見て回りたいけど、とにもかくにもオークに襲われた町の領主からもらった手紙をこの町の領主に渡さないといけないしね。
この町は大きいけれど幸い領主の館はわかりやすかったので迷わずに行くことが出来た。
当然手紙を渡すと言っても領主に直接渡すわけではない。
いきなりこんな小娘たちが領主に会わせろって言っても無理だからね。
だから領主の館の門番に渡す。
ていうかこれは館というよりもまるでお城だね。
幸いにも怪しい小娘がオークに襲われた町の領主の手紙を持ってきているはずがない。
そんなことよりも領主に会いたいなら俺が口ぎきをしてやるよ。
ただし分かっているよな? 的な事はなかった。
ちゃんと手紙を受け取ると確認してくると言って屋敷の中に持ち込んでくれた。
手紙に印が刻まれてたしそれであの町の領主の手紙だと認識したのだろう。
ちゃんと教育されている良い門番だね。
しばらくすると執事ののような使用人が現れて館の応接室に案内された。
すぐに領主が来るとのこと。
いくら何でも早すぎない?
あの町の領主はリゲルの領主に便宜を図ってくれるように手紙を持たせてくれたんだけど、その程度で領主が直々に私たちに会う?
領主ともなればそれなりに忙しいだろうに。
「待たせたな」
何て事を考えていると壮年の男性が入って来た。
オークに襲われた町の領主もそうだけどこの人もかなり筋肉質だね。
武人のようだ。
実際かなり強いと思う。
『あんて変な事考えてない?』
『そ、そんなことないよ』
別に変な事ではない。
ちょっと戦ってみたいと思っているだけだし。
「俺はこの町の領主、ガルス・ベンディクスという。まずは俺からも礼を。弟と弟の町を救ってくれて感謝する」
この人もいい人そうだね。
聞けば手紙には私たちの事とオークに襲われた事が書かれていたらしい。
本来なら使者を早急に送るべきなんだろうけど、そんな余裕はないので私たちに便宜を図る手紙を持たせたついでに復興の支援要請の手紙を一緒に持たせたみたいだ。
あの領主結構強かだね。
さらにあの町の領主はこの人の従兄だという。
この人も武人みたいだしあの町の領主もオーク襲撃の時は前線で指揮をしていたらしいからそういう家系なのかも。
「それでは失礼する。夕食の時にまた会おう」
そう言ってガルスさんは応接室を出ていった。
復興支援もあるだろうし忙しいのによく私たちに会ってくれたものだ。
そして夕食の時にまた話すという事で客室も用意してくれた。
いくらでも滞在していいらしい。
「ふぅ疲れた」
ベッドに座り込む。
やわらかくていいベッドだね。
「スピカ、大丈夫ですか?」
「ん、何が?」
「その、また警戒しているようなので」
「確かにそうかも」
オークに襲われた町の時の顛末をガルスさんが知ったという事は私の力もある程度は知ったという事だもんね。
私にとって今まで一番警戒するべきだったのは貴族だったから無意識でも警戒してしまうのかも。
「でも大丈夫だよ。前の時みたいにならないようにするから」
「そうですか。でも無理はしないでくださいね」
「うん。ありがとう」
気にしすぎなんだろうね。
ミラもいることだしもう少し気分を落ち着けた方が良いのかもしれないね。
ー▽ー
「遺跡ですか?」
夕食会、私たちはガルスさんに招かれて彼らの家族と食事をしている。
ガルスさんは奥さんと2人の息子がいる。
ちなみに兄の方がソリスト、弟の方がトリスタンという。
弟の方は夕食会には参加していない。
しかし、やはり武人の家系らしくソリストさんは騎士として立派に鍛えられているようだ。
たぶんだけどこの人もかなり強いと思う。
そして食事をしながら話していると不審死の話になった。
「ああ。最近見つかった地下遺跡とでもいうものだな。そこから瘴気が漏れていることが分かった」
「瘴気」
瘴気と聞いて思い浮かべるものはアンデットひいては不浄の化け物だ。
まさか不浄の化け物が関係している?
「まだ調査は始まっていないのだが、内部にアンデットがいてそれが夜、町に出てきたのが不審死の原因だと我々は考えている」
「なるほど」
不審死というのはどういう風なのかわからないけど、アンデットが原因なら不審死としてみなされるのかも。
「あなた、何もそんな話を食事中にしなくても。せっかくかわいいお客様たちがいらっしゃってくれているのに」
「ああそうだな。すまない。心配しなくても君たちにこの件で迷惑をかけることはない。それに我が騎士団は優秀だ。早々に解決するであろう」
ガルスさんはそう締めくくると次の話題に移った。
「それにしても君は不思議だな」
「私ですか?」
「うむ。とても戦えそうには見えないが、立ち居振舞いは強者のそれだ」
すごいねこの人。
たいていの人は私を見て強者だなんて思いもしないのに。
どこかのウザい奴なんかは毎回会うごとに儚い儚いって言っていたくらいなのにね。
「俺にはとてもそうは見えないが。」
「この程度も見抜けぬようではお前たちもまだまだだな。一度手合わせをしてみると「あなた」」
ガルスさんの言葉が奥さんに遮られた。
「客人の、それも弟の恩人、しかも年頃の女性に向かって手合わせだなんて何を考えているのですか!!」
「う、うむ、しかしだな」
「しかしではありません。万が一怪我でもさせたらどうするのですか。あなたも手合わせしようだなんて思ってはいけませんよ」
「は、はい」
言ってる事は奥さんが正しいんだろうけど何ていうかこう見ると誰も奥さんに頭が上がらないんだな。
「ふぅ、それではお開きにしよう。スピカ殿。もし、剣に興味があるならあと数日は館に滞在するといい。会わせたい人がいる」
ガルスさんはそう言って出ていった。




