40 聖女と魔女
遅れましたm(_ _)m
「「「聖女さま!! 聖女さま!! 聖女さま!!」」」
おおぅ。
どうしてこうなったの。
聖女さまコールが鳴りやまない。
そしてその聖女は当然私だ。
人を助けるために回復魔法を使うことは前々から望んでいたことだけど、こうなるとは。
いや、今はこの状況を利用しよう。
あの女性と子供を助けてからここに向かうまでに何体かのオークを倒したけれど、当然、すべては倒していない。
そして町中のオークを倒すには私一人では当然手が回らない。
ことはないだろうけど当然時間がかかる。
だったらここにいる戦える人を駆り出さないと。
「みなさん、オークはいまだに町中にいます。戦える人はどうかオークを退治してください。けがは私が治しますのでどうかお願いします」
私が聖女っぽく丁寧な口調でそう言うと、
「聖女さまの言う通りだ!!」
「そうだ!! 聖女様のおかげで俺たちはまだ戦える!!」
「聖女様のためにもやるぞーー!!」
「おぉぉぉ!!」
戦える人は雄たけびをあげながら出て行った。
うん、まあ計画通りかな。
あれだけ士気があるならそうそうやられなさそうだし。
そう思っておきましょう。
そして、結果的には町中のオークの殲滅には成功した。
私が回復させた戦士に加えて、外でオークの群れの進軍を食い止めていた兵士たちが町に戻っていたのだ。
つまり外のオークの群れは殲滅したことになる。
聞くところによると魔女様が大魔法でオークの群れをあらかた殲滅したらしい。
うん、ミラだね。
なんか、すごい魔女が町を守ってくれたって話が流れてきて、たぶん私の仲間だと言ったら私みたいに魔女様と崇められるようになってしまったんだよね。
いや、そもそもミラは大貴族の令嬢だし。
本来敬われる立場の人間だし問題はないかな。
うん、問題はないはず。
「スピカさん、魔女様をお連れしましたよ」
オークの殲滅に成功し、私の出番がなくなったのでミラを連れてくるようにお願いしたのだ。
ちなみに秘書のようなことを私が助けた女性がしてくれているのでとても助かる。
「ミラ、無事だったね。よかった」
「ええ、わたくしは無事なんですが、なんだかすごく崇められているのですが。聖女様によろしくとか言われましたし」
「あ、うん。実はね」
かくかくしかじかとミラに話す。
「なるほど、それで」
「別にいいんだけどなんかめんどくさいね」
あんなに聖女様聖女様と崇められても引くしめんどくさいのだ。
崇められるために助けたわけではない、
「まあ、オークは殲滅出来て町も救われたし、明日にでも出て行こうか」
「そうですね」
通りすがら助けただけだし留まる理由もないしね。
『あなた警戒しすぎじゃない?』
『......確かに』
メーティスの言う通りかもしれない。
人助けをしたのはいいものの私はこの状況に危機感を抱いてしまっている。
人々からお礼を言われて素直に嬉しい反面、微妙な感じがするのだ。
今まで私はこの力を隠して生きてきた。
万が一私の力が世間に知られたら私の力を狙うものが大勢現れるだろうし、いろいろ不都合が起きて兄弟たちに迷惑がかかるのが目に見えている。
何よりあの男に目を付けられるのが嫌だったからだ。
で、今回は旅をする身だからバレても構わないと思い、それこそ聖女さま呼ばわりされるレベルで力を使ったのはいいものの、今まで力がバレるのを恐れてたからか、どうも嫌な感じになってしまう。
さっさとこの町から出ていきたいと思ってしまう。
人とあまり会いたくないと思ってしまうのだ。
確かに警戒しているなあ。
『うん、でもやっぱり慣れないね。どうしても嫌な感じになってしまう』
『まあ、今までが今までだからしかたないわね。幸いミラもすぐに町に出るのは賛成みたいだし』
そうだね。
「ミラ、ごめんね」
「え、何がですの?」
「ううん何にもない。そうだ、しばらくしたら領主様が来てって言っていたんだ。もう少ししたら行こう」
みんなに私の力が知れ渡って私を狙う人が増えるかもしれない。
でも、やっぱり助けることが出来てよかったと思う。
これからも出来るだけ助けて行こう。
どうせ旅人なんだし。
追って来るなら逃げるだけだし。
今回の件でミラも頼もしくなった。
きっと大丈夫だ。




