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38 殲滅の魔女

「はっ、ここは?」

「あ、気が付いた?」


 また、ロタリエルが戻ってこられても困るので、私たちはさっさとあの場を後にした。

 一応ちゃんと掴まっているとはいえ、気を失っているので注意しながらゆっくりと進んでいたのだけど意外と早く目が覚めたようだ。


「えっと、私はなんで」

「あ、覚えていないんだ」

「はい、お恥ずかしながら。何があったのですか?」

「世の中にはね。知らない方がいいことがいるんだよ」


 覚えていないなら覚えていない方がいい。

 私だってあんな話忘れたい。


「ほら、町が見えてきたよ!」


 掘り返されても嫌なので話題転換をする。

 見えてきたといってもまだまだ遠くなのではっきりしていないけど、町らしき影は見える。


「もうすぐ日も暮れるだろうし今日はあの町で休憩しようか」

「人気のある所も久しぶりですわね」

「確かに」


 今までずっとユニコーンさんたちの所にいたし、あった人もアレだし。


「って、あれ?」


 道なりに進んでいくと徐々にはっきりと町の姿が見えてきたけれど、どうも様子がおかしい。


「何か騒がしいですわ。これは...魔物が襲撃しているようですわ!!」

「本当!? ユニコ! 走って!!」


 町を守れるだけの戦力があればいいけどもし、魔物に門が突破されれば。

 町は悲惨なことになる。

 流石にそれは見過ごせない。


 ユニコは猛スピードで走る。

 しかし、私たちを振り落とさないように注意しながら。

 それでもユニコは普通の馬よりもはるかに速い。

 生まれてさほどでもない子供とはいえ、さすがはユニコーン。


「あれはオーク!」


 うわっ、なんだか今日はオークに縁があるね。

 若干嫌だけど、放置も出来ない。


「ミラ、このまま突撃しても大丈夫?」

「ええ。やっちゃってくださいませ!!」

「よし、ユニコやっちゃって!」


 ユニコは嘶き一つで返事をすると、町を襲っているオークの群れに突っ込んだ。

 ユニコは子供であるが、大きいし、オークとは魔物としての格が違う。

 オークを吹き飛ばしながら道を開く。


「な、なんだ!?」


 そして、切り抜けるとこの町を守っていた兵たちがマヌケな顔をしてこちらを見ている。

 何人も負傷しているし、数に押されて結構ピンチみたい。

 間に合ってよかった。


「大丈夫? 助けに来たよ!!」


 とりあえず、ユニコから降りて負傷している兵たちの元に向かう。

 意識を失っている人もいればうめいている人もいる。

 怪我の具合によれば気を失っていない人は悲惨だ。

 そういう人を優先して回復魔法をかけていく。


「あれ、俺の腕が」

「痛みが治まって」

「怪我が治ってる!?」


 兵たちは困惑しているが、そんな暇はない。


「ほら、これで戦えるでしょ。もう少し頑張って!!」


 負傷兵の治療を終えたのでミラのもとに向かう。


「ミラ、大丈夫だった!?」

「ええ、私なら問題ありませんわ。それよりも町の中に魔物が入り込んでいるようです。スピカはそちらに向かってください」

「でもここが」

「ここならわたくしに任せてくださいまし。わたくし一人で十分ですわ」


 確かに、ミラなら大丈夫そう。

 今のミラはオーク程度なら一網打尽にできるはず。


「わかった。あまり無茶しないのでね。ユニコ、ミラのことお願い」


 心配だけど、町に行かなくちゃ。

 ミラなら大丈夫。

 ユニコもいるもん。


 ー▽ー


 スピカは町の中に入っていった。

 ここにいるのは町を防衛する兵とミラとユニコ。

 そして無数のオークたちだ。

 オーク自体はそこまで強力な魔物ではない。

 きちんと訓練された兵であれば倒せるだろう。

 1体や2体ならば。


 明らかに兵たちよりも多くいるオークたち。

 一体一体は手に負えないような圧倒的な力を持たずとも人よりも大きな図体と膂力を持ち、倒すことはできてもきりがない。


 ここまでの数がいれば災害である。

 このままでは門が突破されるのも時間の問題だ。


 もし、門が突破されれば町は悲惨なことになるだろう。

 男は喰い殺され、女は苗底にされる。

 何が何でもこの門を突破されるわけにはいかない。


 それが分かっているからこそ兵たちは死にもの狂いで戦っている。

 門を守っている。


 だからこそ、この状況はミラにとって好都合であった。

 何故なら、兵とオークの分布がはっきりと分かれているから。


 これならば兵を巻き込む心配はない。


「ユニコ、集中しますので少しの間わたくしを守ってくださいまし」


 ミラはユニコの嘶きを聞くと、魔力を張り巡らせて集中する。


 ミラがユニケルから習った自然魔法。

 それは自然を導き操る古の魔法である。

 水、風、火、地。

 属性を問わず、自然を導き発動するこの魔法は極めて強力である。


「いきますわ。”トルネード”!!」


 兵とオークがぶつかる前線。

 その向こう。

 未だ大量にいるオークたちの中心地。


 そこに発動したのは正に自然災害の魔法である。

 砂塵が舞い、目に見えるレベルの強力極まりない暴風がオークたちを襲う。

 荒ぶる暴風にオークたちは飲み込まれ、いとも簡単にオークたちの命を奪っていく。


 たった数秒で魔法は終わり、天気は元の姿に戻った。

 しかし、そこには見るも無残なオークたちの死骸が無数に転がっている。

 たった数秒の魔法でオークたちはその数を大きく減らしたのだ。

 ミラの大魔法によって。

 その神の御業ともとれる光景に敵味方問わずに呆然とする。


「い、今だ! オークどもを殲滅しろ!!」


 が、いち早く立ち直った指揮官の号令によって兵たちは動き出す。

 戦力差は逆転したのだ。

 もはや、オークに勝ち目はない。

 兵たちはこれで町を守れると喜び勇んでオークたちに突撃する。


「ふう、さすがに疲れましたわ」


 そして、そんな光景を作りだしたミラは、大魔法を使って少し疲れただけなのであった。



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