37 金牛のロタリエル
本日3本目。
「お、街道だ」
ユニケルさんたちから離れて、とりあえず森から出ることを優先して私たちは森を進んだ。
森の中は本当はまっすぐ進むのが非常に難しくて、こんな深い森に入ってしまえば本当は一生出れなくてもおかしくないのだけど、メーティスがそのあたりの知識を持っていたし、事前に調査もしていたので迷わずに最短距離で街道に出ることが出来た。
といっても森自体が巨大だったため出るのに数日かかったけれど。
まあ、ここからは街道に沿って進むことが出来るし道に迷うことはないはず。
「ユニケルさんたちの所は快適だったけど、見通しの悪い森の中にずっといると気疲れするね。ミラは大丈夫?」
「ええ、大丈夫です」
「そっか。よかった。さて、とりあえずはあっちの方に進もうか」
道があるということは当然少なくとも進むことが出来る道が2つあるわけだ。
まあ、右に進むか左に進むかだね。
方角的にはこっちの道で合っているはず。
「はーはっはっは!」
そう思ってユニコに指示して進もうとしたやさき、今までいた森の方から女の人の声が聞こえてきた。
「待ちくたびれたぞお前たち!!」
そして現れたのは騎士のような鎧を身にまとった、というより騎士っぽい格好をした痴女であった。
何アレやっば。
鎧着てるくせに胸元開いてるし、パンツっぽいのも見えてるし完璧に痴女じゃん。
『うわっ。くっころ騎士みたいな恰好してる』
「くっころ騎士?」
『えーと、騎士っぽいけど明らかに騎士鎧としておかしい恰好をした人の事よ。本来そこそこ重装備のはずなのになぜか下半身は短めのスカートだったり胸元が開いていたりする人の事』
確かに彼女もそんな感じの恰好だね。
重くするか軽くするかのどっちかにすればいいのに。
なんてことをメーティスと話していると女騎士はビシッと私に指を向けてきた。
「お前がスピカだな?」
「え、うん、そうだけど」
「私は金牛のロタリエル。アリエスと同じ鮮血の淑女会のメンバーだ」
女騎士、もといロタリエルはそういった。
鮮血の淑女会か。
アリエスも相当強かったけど同じメンバーならこの人も強いはず。
目的はわからないけどいつでも動けるように身構える。
「そのロタリエルさんが何の用?」
「アリエスは私の妹分でな。随分と可愛がってくれたそうじゃないか」
「つまり、報復?」
「そのようなものだ。鮮血の淑女会がいいようにやられっぱなしはいけないもんでな」
うわっ、変な組織に目をつけられてしまった!!
「なのに、お前たちを探しにアリエスに聞いた場所に行くも道に迷うし、そこからお前たちがなかなか出てこないし」
「え、ちょっと待って。だったらどうやって私たちをここで待ち構えていたの?」
「2か月も待つはめになったではないか!!」
「普通にスルーされた!!」
まじこの人何なの!?
いろいろ怖いんだけど。
「まあ、幸いこの辺りにはオークさんがたくさんいたのでな。暇にはならなかったぞ」
「んん? どういうこと?」
あまりにも意味が分からなかったので私はこの時どういうことか聞いてしまった。
そして私はこの後すぐに後悔することになる。
「どういうことってオークさんの所に行くに決まっているではないか」
「いや、そんな当然だろう見たいな目をされても困るんだけど」
「そうか、仕方ない。そうだな、アレは私がまだ鮮血の淑女会に入っていないとき」
なんか語り出しちゃったよ。
「当時私が貴族の令嬢をやっていた時だな。私は騎士に憧れて女だてら騎士になったものだ。それである時オークさんの討伐に向かってな。まだ弱かった私は返り討ちだ。さらにオークさん住処に攫われてしまったのだ。剣も盾も奪われ、鎧は脱がされ、服は破られた。あまりの屈辱に私は『くっ、殺せ!』と言ったのだが所詮は豚。私の言葉が分かるでもなくその醜い欲望を全開にして私にぶつけてきたのだ」
...オークが他種族の雌をさらって孕ませるのは有名だ。
人も被害にあう。
そうなった女性の人生ははっきり言って終わる。
「抵抗むなしく醜い豚の醜いものが私の中に入ったとき、私は衝撃を受けた。こんなにも甘美な世界があるのかと!!」
「は?」
この人は何を言っているの?
「醜いと蔑み、見下していた豚に犯される快感に私は目覚めてしまったのだ!! 豚に犯されぐしゃぐしゃにされる私。人としての尊厳も誇りも全て汚された私はとても興奮した。ああ、こんなにも素晴らしい世界があるなんて、私は一生このままオークさんに犯されて過ごしたいと思ったものだ」
ド
変
態
だ
っ
た
!!
え、ちょっと待って、意味わからない。
つまり、どういうこと?
「メーティス、ミラ、私意味わかんない」
『大丈夫よ。私も意味わからないから』
「だよね。ってミラ?」
返事がないので後ろを見るとミラが気を失っていた。
そういえばミラって箱入り娘だよね。
まあ、仕方ないよね、たぶん。
「夢なら覚めないで欲しいと願ったのだが」
あ、まだ続きがあるんだ。
もう聞きたくないんだけど。
夢なら早く覚めて欲しい
「幸せな時間というのはすぐに終わるものだな。気が付けば私の周りにいるオークさんたちは皆殺しにされていた。後で知ったのだが私がやったようでな。どうやら私は興奮のあまりにオークさんを殺してしまったらしい。もちろんその時は私にそのような力があるはずもなかった。だが私は特殊体質のようでな。オークさんに犯されると力が上がるらしい。まあ、それ以来私は騎士団を抜け、鮮血の淑女会に入ったわけだ。今でもオークさんの住処に行って掴まってはいつの間にか皆殺しを繰り返している」
ロタリエルはうんうんと頷きながら懐かしそうにしている。
やばいよ。
マジでやばい変態だよ。
「という訳でオークさんの住処に行って暇つぶしをしていたわけだ。さて、長話が過ぎたな。そろそろ覚悟してもらおう。なに、心配するな。殺しはしない。いくらアリエスの件があってもそれでは私の騎士道に反してしまうからな。代わりに一緒にオークさんの所に行ってもらうが」
絶対に嫌だ!!
そんなの死ぬよりも悲惨じゃない。
くそっ、どうしよう。
この人変態だけどかなり強い。
私一人ならともかく、ミラは気を失っているし。
ユニコに任せて逃げてもらうべきかな?
そうしようと思ってユニコから降りようとしたとき向こう側にたまたまオークがいるのが見えた。
「あ、オーク」
「オーーーークさーーーーーん!!!」
「ぶもっ!!?」
その瞬間、ロタリエルは猛スピードでオークの方に向かい、オークはロタリエルの異常さに気づいたのか森の中に逃げていき、そして見えなくなった。
「なんかすごかったね」
『そうね。いろいろとね』
世の中にはあんな人がいるのだと思った。
出来れば二度と会いたくないな。
とりあえず、くっころ騎士は登場させておきました。
彼女は再登場する予定です。たぶん。
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