36 ユニコ
ミラの修行を開始して2か月後。
ミラは見事、ユニケルさんより魔法を習得したのでとうとう出発することになった。
「お世話になったね。みんなありがとう」
「ありがとうございます」
「なに、我らも恩を返せてよかった。それに、久しぶりに刺激のある毎日を送らせてもらった。こちらこそ礼を言わせてくれ」
ひとしきり別れの言葉を交わすけど、別れを惜しんでいつまでもここにいられない。
「じゃあ、そろそろ行くよ。みんな元気でね」
「ありがとうございました。さようなら」
2月間もともに生活したから、名残惜しいけど行かなくちゃ。
しかしすぐさま服を引っ張られてしまう。
「おっとっと、なに?」
後ろを振り向くとそこには私のの服を加えて引っ張るユニコーンの子がいた。
あの時に生まれたよく私たちに懐いていた子だ。
離れたくないのか服を一生懸命引っ張っている。
「ごめんね。私たち行かないといけないんだ。だからここでお別れなんだよ」
私も子達と別れるのは名残惜しいがそうも言ってられない。
だから、ユニコーンの子を諭そうとするが、一向に諦める気はなくに追い縋る。
どうしたものかと困っているとユニケルさんが近づいてきた。
「想像以上に懐かれたようだな。ふむ、どうだスピカ、ミラよ。長い旅になるのだろう? だったら足が必要ではないか?」
「えっ、いいの?」
「どうやらこの子はどうしてもお主たちと離れたくないようじゃ。ならば連れていくがよかろう」
「私たちはうれしいけど。どうする? 私たちについてくる?」
そう言うとユニコーンの子は嬉しそうに嘶いた。
「私たち遠くまで行くからもうこの群れには戻ってこらないかもしれないよ。それでもいいの?」
確認をとるけど、決意は変わらないようでもう一度嘶くと私たちの横に着いた。
ついてくる気満々みたいだね。
「そっか。じゃあよろしくね」
ユニコーンの子に飛び乗る。
馬具は何もついていないけど乗り心地は悪くない。
フサフサの鬣とかが気持ちいい。
生まれたばかりの子供といえどユニコーンは結構な大きさだ。
これならミラも後ろに余裕で乗れるね。
というかすでに何度か乗っているんだけどね。
「ミラ、後ろに乗って」
「はい」
ミラに手を差し伸べて後ろに乗せる。
「ふむ、これじゃあ人の世界では目立って仕方ないな」
そう言ってユニケルさんが何かを呟くとこの子にツノは消えてしまった。
「幻術で見えないようにした。ただし気持ちが昂ると幻術も消える。注意するのだぞ」
ユニケルさんの言葉を理解したのかこの子は嘶いた。
「そうだ、忘れるところだった。スピカ、ミラ、お前たちに一つ頼みたいことがあったのだ」
「頼みたいこと?」
「以前、そちらの大陸に渡った先に霊樹があると言ったな。少し寄り道をすることになるかもしれんが霊樹の元まで行って欲しいのだ。どうも霊樹から流れる力が不安定になっているようでな。少し調べたい」
「それはいいけど。でも調べたいって言ってもどうするの? 私たちがそこまで行って調べて戻ってこればいいの?」
ユニケルさんの頼み事だからできるだけ叶えてあげたいけど、さすがにそれは厳しい気がする。
大陸間を往復しないといけないし。
「いや、そこまでする必要はない。実はこの泉と霊樹は多少だが繋がっていてな。ミラがその子と霊樹を元に私の事を思い浮かべてくれたらいい」
「わたくしですか?」
「ああ、お前でなくては出来ん。だがお前の魔法なら容易いことだ。私はそこからはその子を通して私で調べる」
へぇそんなことが出来るんだ。
すごいね。
「うん分かった。ミラもいいよね?」
「はい。もちろんですわ」
元々霊樹を目印に進むつもりだったしこれなら問題ないからね。
「では頼んだぞ」
「うん任せて。それじゃ何から何までありがとう。よし、行こうか。今度こそさようなら」
「今までありがとうございました。さようなら」
最後にユニケルさんたちに手を振って別れを告げ、森の奥へと馬を進めていった。
当然ながら森の中は道が整理されているわけではない。
しかもこの子には手綱の鞍もつけていない。
しかし常に私たちを気遣って動いているのか、今のところは問題ない。
まあ、あるに越したことはないので早いところ町などに入って必要なものは購入したいところだね。
それよりも今は問題がある。
「一緒に旅をするわけだし、名前を決めないとね」
「名前ですの?」
「うん、いつまでもこの子じゃかわいそうでしょ」
いくら知能の高い幻獣といっても、基本的にユニコーンは言葉を発さないから名前がない。
例外はユニケルさんくらいだ。
泉にいた時は名前を付けることはなかったが今は違う。
やっぱり共に旅をする以上やはり名前は欲しいね。
「何かいい案はある?」
「そうですわね」
うーんとしばらく考えたがやはり思いつかないようだ。
「なかなかいいのが決まらなくて。スピカはどうですか?」
「ごめん私も。じゃあメーティスは」
『そうね。ユニコでいいんじゃない?』
「ちょっと単純すぎない?」
『だって馬の名前なんか、キングカメハメハとかサイレンススズカとかディープインパクトとかしか思い浮かばないし、この子には合わないでしょ。だったら単純でもユニコがいいと思うわ。女の子だし』
「確かにその中だったらユニコが一番いいね。あなたはユニコでいいかな?」
そう言うとユニコーンの子は嘶いた。
よかった、喜んでいるみたい。
「気に入ったみたいですわね。改めてよろしくお願いしますわユニコ」
「よろしくねユニコ」
こうしてユニコーンの子はユニコと名付けられた。
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