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34 雌羊座のアリエス

やっぱり早いな。


『こいつ、ダサい名前とは裏腹に強いよ!』

『格好つけるだけの事はあるわね』


 縦横無尽に駆け回り、ヒットアンドウェイで翻弄するアリエス。

 単純な技量はともかく、そのスピードは確かなものだ。

 このまま受けていたらだめだね。

 そもそも私たちの剣技は攻めることに意味があるんだから。


「私だってスピードには自信があるんだよ!」


 闘気が使えない私だけど、歩方と身体能力でスピードはかなりある。

 これくらいなら何とかついていける!


「すごい! 私のスピードについてくるなんて!」


 アリエスは私に賞賛を送りながらも余裕を崩さない。

 こんなところでこんな強い人に出会うなんて。


 こんな時のための過剰回復だけど、たぶんこれじゃあ避けられる。

 やっぱり剣で倒すしかないか。

 となるともっと速く動かないと。


「速いけどこれなら!」


 なりふり構わずに人竜化する。

 こちらの方が多少能力が上がる。


「翼!? いや、そんな事はどうでもいい! まだ早くなるなんて! だったら私も!!」


 しかし、アリエスのスピードはさらに上がった。

 やばい、こんなの目で追えないかも。


「速すぎ「ぐべらっ!」だ……え?」


 え?

 えーと?

 なんか、アリエスがさらに一段階速くなったと思ったら木にぶつかった。

 うん、真正面からモロにぶつかった。

 もしかして、自身のスピードに反応速度が追いついていなかったとか?。

 しかも淑女とは思えない声を出してたし。


「っっ、うっく……。い、いったぁぁぁーーい!!」


 さらには泣き出した。


「えーと?」

「ひっく。ひっく。お前名前は?」

「ス、スピカだけど」

「スピカ。覚えたからな! 今日のところはもう帰ってやる!」

「は?」


 その言葉に一番驚いたのは男達であった。

 いや、まあ、高い金で雇っていい雰囲気で登場したと思ったら、自滅して泣き出して帰るというしね。

 とても酷い子供にしか見えない。


「おい待てふざけるな!」

「うるさいバーカバーカ! 大の大人が大人数で寄ってたかって女の子に危害を加えようとしている奴らに言われたくないよ!」


 そう言ってアリエスは正に脱兎のごとく逃げていった。

 なかなかにカオスな状況だけど。

 まあ、危機は去ったってことかな

 厄介な奴らはいなくなったし、後はクズの雑魚だけだ。


 ーーーヒヒーン


 さらには援軍もやって来た。

 他の襲撃者を蹴散らしたユニコーン達が帰ってきたかな。


「ち、ちくしょーーー!!」


 まあ、途中で変なのも来たけど、これで終わりかな。



 ー▽ー



「助かった竜の少女よ。おかげでこの子達を、そしてこの子を守る事が出来た」


 他の侵入者も撃退し、ひと段落終えて後ろを振り向くとそこにはユニケルさんと、彼女のオッパイを一生懸命に吸う新しいユニコーンの子供がいた。


「おぉ生まれたんだね」

「ああ、おかげさまでな」


 そっかそっか生まれたんだ。

 よかった。

 それにしても可愛いな。

 一生懸命に生きようとしている。

 種族は違ってもやっぱり赤ちゃんは可愛い。


「スピカ、無事でしたか!?」

「うん、まあ私強いしね。あんなのどうってことないよ」


 アリエスはちょっとやばかったけど、それ以外はそれこそ剣1本でもなんとかなったし。


「スピカはやっぱりすごいですわね」


 そう言ってため息を吐くミラ。


「どうしたの?」

「だって、わたくしは何もできなかった。スピカに守られるばかりで自分が情けないですわ」

「そのような事ないぞミラよ」


 落ち込むミラを慰めたのは意外にもユニケルさんだった。


「お主のおかげでこの子は無事に生まれることが出来た」

「え、そうなの?」

「うむ。この子は逆子でなかなか危なかったからな。ミラに少し手伝ってもらった」

「すごいじゃんミラ!!」


 いや、本当にすごいと思う。

 よくもまあ貴族令嬢のミラがユニコーンの出産を手伝ったものだ。

 普通は絶対に嫌がるはずなのに。


「そんな、私が言われたとおりにやっただけですわ。そんなこと誰にでもできますわ」

「そんな事はないよ。それに私は戦っていたからミラにしかできないことだったよ」

「私にしか」

「ミラは1つの小さな命を救ったんだよ。そのことにもっと誇りをもって」


 ミラがいなかったら今、そこにある命の輝きはなかったかもしれない。

 ミラがしたのはやっぱりすごいことなんだよ。


「でも......」

「そうだ! だったら修行しようよ」

「修行ですの?」

「うん。流石に魔法を、しかもほとんど口伝で教えて数日で使うのはね。ここはそこそこ安全だろうし、そこそこ獲物もいるだろうしちょうどいいんじゃないかな。それにちゃんとした先生もいる」


 チラリとユニケルさんを見る。


「という事で、しばらくここでミラに魔法を教えて欲しいんだけどいいかな?」


 あんな高度な結界を張るユニケルさんだ。

 私なんかよりよっぽど先生ができるはず。


「うむ、いいぞ。スピカもミラも我らの恩人だからな。お主らの頼みは無下にはできん」


 そしてお願いはアッサリと引き受けてもらった。


「だってさミラ、よかったね」

「えーと、よろしいのですか?」

「うむ、それくらいはおやすいご用だ」


 こうしてミラはしばらくの間ユニケルさんの元で修行をすることになった。



これで、過剰回復の竜少女の話まで追いついたと思います。

続きを楽しみにしていた皆様、お待たせしました。

今日から再開します。

具体的には18時ごろから。

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