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26 友達

 男の案内で森を抜けて街道にでる。

 後は道に沿って歩けばいいし、楽なものだね。

 馬もあったけど、乗る事ができる人が少なすぎたために断念した。

 子供もいるから移動速度は遅いけど、明日には町に着くそうでよかった。


「スピカさん。またも助けていただいて感謝いたしますわ」


 野宿になるので、食事を作ってみんなで食べている最中にミラが私に礼を言いに来た。


「どうしたの急に?」

「あの時、あの化け物からわたくしを守っていただいたお礼と、今回の盗賊の魔の手から助けていただいたお礼ですわ。スピカさんは強いのですわね。ふふふ。強くて賢くて美しい。わたくしなんかよりもずっとレオナルド様に相応しいですわ」


 え、なに?

 だからレオナルドの事は諦めます。

 お幸せになってくださいってこと?


 ないわー。

 そう言えばもう、学府に黒い宝玉はないんだよね。


「はあ。ずっと勘違いしているようだけど、私、あいつの事好きでもなんでもないよ。むしろ、ウザいし気持ち悪いし嫌いだよ」

「えっ、ウザっ、気持ち悪い?」

「そうだよ。だって、用もないのに来るし、本読んでいても邪魔するし、意味のわからない事言うし。休日なんて、何の約束もしていないのに寮までやってくるし。ホント気持ち悪い」

「えっ? でも、わたくしにはそんな事……」

「遠回しには言ったはずだよ。確かに、こんな風に直接言ってはないけれど。私が学府に編入した目的はあの化け物だったんだ」

「そう、ですの?」

「うん。以前にもあの化け物と似たようなものと対峙してね。それで、私たまたま学府祭に来ていたんだけど、そこであの化け物と同じ気配を感じたんだ。実際に襲われたミラ様にはわかると思うけれど、アレは放っておくには危険なものなんだ」


 ミラは私の言葉に頷く。

 あんな恐ろしい存在。

 もしも、あの時私がいなかったら彼女は死んでいただろうしね。


「だから、アレの元、黒い宝玉を探す為に学府に編入したんだよ。まあ、手がかりなんてほとんどないし、たまに気配を感じるだけで何の成果も無かったけどね。ついでに、好きな本を読んでいたりもしたんだけど、そこに現れたのがあいつ」


 レオナルドだ。


「下手に邪険に扱って学府から追い出されたら目も当てられないからね。ウザくて気持ち悪いのにも我慢してずっと耐えていたけど、それも今日で終わり。良かった良かった」


 これであいつから解放される。

 本当によかった。

 本当に気持ち悪かったのだ。

 早く消えてくれとずっと願っていた。

 そして、黒い宝玉の回収には失敗しているけど、学府に通う目的はもうなくなった。

 つまり、二度とあいつにかかわらずに済むのだ。


「そ、そうですの」


 全部ぶちまけてやったらミラは呆気に取られていた。

 まあ、誤解もとけたようだし。

 仮にも、ミラの婚約者だけど遠慮はしなかった。

 それくらいレオナルドに二度とかかわらずに済むのがとても嬉しいんだよね。


「あ、えっと、あの」


 急にミラがわたわたし始めた。


『あーあ』

『どうしたの?』

『スピカ、考えてみて。スピカはレオナルドの事が好きでも何でもない、むしろ嫌いなのに、ミラはスピカを威嚇していたのよ。何度も何度も。的外れなのに。恥ずかしくない訳ないじゃない』

『確かに』

 

 可愛いなーと和んでいると、ミラは頭を下げ始めた。


「申し訳ございません」

「どうして謝るの?」

「だって、わたくしもスピカさんに何度も突っかかってしまいましたし」

「ああ、別にいいよ。むしろあなたといるとあいつに会わなくて済んだし、面白かったし」

「お、おもしろい?」

「うん。少しズレていて見てて面白かったし」


 呼び出しておいて、何もしなかったり、嫌味も言わなかったり、いじめもしなかったりと見ていて面白かったんだよね。


「も、もう! からかわないでくださいまし!」


 ミラはツンとそっぽを向く。


「あはは、ごめんね」

「……あなた、本来の口調はそちらなのですね」

「うん。そうだよ。変えましょうか?」


 私の口調は普段は敬語じゃなくて、こちらが素だしね。

 もう、学府から追い出されてもいいし、もうこっちでミラに話しているから素の口調でミラに話しかけていたけど。

 貴族の令嬢と話すには軽すぎたかなあ。


「わたくしはそちらの方が好きですわ」


 それはよかった。

 あ、今って友達になるチャンスじゃない。


「そう、良かった。そうだ、こうして誤解も解けた訳だし、友達になろうよ」

「と、友達ですか?」

「うん。私、同年代の友達はあんまり居なくてさ、ミラ様が友達になってくれたら嬉しいな」


 学府で多少、友人は出来たけど、それでもその数は少ないんだよね。

 なんか一部の人に嫌われているし、他の人たちもその人達に目をつけられるのが嫌だから距離を置いている感じだ。

 本当に何人かの友人しかいないし。

 それに私の姿と力の事を知っているのはミラだけだし。


「わ、わたくしとですか?」

「うん。そうだけど、だめ?」


 断られるのかなあ。

 そうだったら悲しいなあ。


「だめじゃありませんわ!! わたくしの方こそよろしくお願いいたします」


 そんな私の表情を見てかミラは慌ててそう言ってくれた。


「ふふふ、ありがとう。ねえ、ミラって呼んでもいいかな? 私もスピカでいいから」

「よろしいですわよ。スピカ」

「よろしくねミラ」


 こうして私に友達ができた。


とりあえず、今日はここまで。

続きは明日投稿します。

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