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22 不浄の蛇その1

 黒い宝玉からおぞましく黒い瘴気が溢れ出す。

 それは次々と形取っていき、最後には中から爛れ、腐り、朽ちた醜く恐ろしい化け物が多数現れた。


「ひっ、あっ、あっ……。いやぁぁーーーーーーー!!」


 突然出現した魔物にミラは腰を抜かす。

 箱入り娘であったミラにとってその魔物は酷く恐ろしいものであった。


「死んじゃえ!!」


 エステルが叫ぶと同時に、魔物はミラに襲いかかる。


「い、いやっ。だ、誰か。いやぁーーーーーーー!!!」


 まさに、魔物がミラに猛威を振るおうとしたその瞬間、


「間に合ったあーーー!!」


 ミラの前に立ち塞がったスピカから放たれた光によって、魔物たちは消滅した。



 ー▽ー


「ギリギリだったね」

『ええ。間に合って良かったわ』


 悲鳴と不浄の気配を感知した私は、全力でその場に向かった。

 それでも本当にギリギリであった。


「あいつが来なければもっと余裕があったのに」


 私がもっと早くにこっちに来ていれば。

 ちゃんと気配を探っていれば。

 結果的に間に合ったからよかったけど。

 本当に邪魔してくれる。


『それより今はアレよ』

「うん。見つけた、黒い宝玉!!」


 持っているのは見覚えのある女子生徒だった。

 確か、ミラの取り巻きのひとりのエステル。

 彼女が持っていたんだね。


 亜空間から二降りの剣を取り出して抜き放つ。

 私は回復魔法以外の魔法はほぼ使えない。

 しかし、いくつか例外もある。

 その一つが、亜空間に物を入れておける空納の魔法。

 これがあるから私は手ぶらに見えて、その実、そこそこ物資を保有しているのだ。

 まあ、適正はほぼないからかなりの魔力を消費するし手に持てる程度の物しか入れられないけどね。

 でも消費魔力に関しては私には問題ない。

 学府では帯剣できないため、亜空間に剣を入れていたのだ。


「あ、あなたは」

「危ないからそこから動かないでね。必ず守ってあげるから」


 ミラの前で剣を構える。


「ッッ!! あなたは何なのよ!!」

「自分で呼び出しておいて何なのよはないんじゃないの? そんな事より、その黒い宝玉を渡して。命は助けてあげるから」

「ふざけるな!! あいつをグビリ殺せ!!」


 エステルは、次々と不浄の魔物を作り出す。

 それは、ゾンビのようであったり、スケルトンのようであったり。

 俗にアンデッドと呼ばれる不浄の魔物を。

 それらを私にけしかける。


「ひっ」


 私にけしかけるという事は、その側にいるミラの方にも向かっているという事。

 恐ろしい魔物が近づいてきてミラは声を漏らす。

 怖いだろうけど安心して。


「大丈夫だよ」


 そう、ミラに聞こえるように呟いた。

 

 それじゃ、蹂躙を始めようか。

 向かってきている敵を全力で屠っていく。

 

 癒しの力を纏った剣はアンデットである魔物を簡単に切り裂き、それと並行して縦横無尽に回復魔法を飛ばす。

 それだけで、魔物たちは消滅していく。

 いや、浄化かな。

 人を簡単に過剰回復で殺せる私の癒しの力はとても強い。

 だから、多少強くとも、アンデッドである魔物たちは簡単に消滅してしまうのだ。

 生命を癒す回復魔法はアンデッドによく効く。


 と言っても、一体一体はそれほどでもないけど、生成速度は速いな。


 消滅させてもさせても魔物は生み出されていく。

 このままではキリがない。

 ミラの元を離れてられないから術者に近づけないし。

 あんまり余裕ないかも。

 時間をかけてでも結界を張るしかないかな。


ー▽ー


「な、何なのよ。あなた、本当に何なのよぉーーッッ!!」


 対して、エステルの方は折れかかっていた。

 次々と化け物を創り出していくエステル。

 こんな醜くおぞましい力を使っているのに。

 レオナルドの為に。


 レオナルドにとって自分といるのが一番レオナルドの為になるとエステルは本気で思っている。

 だから、どんな手を使ってでも自分の、ひいてはレオナルドの害となるスピカとミラを始末する為に、こんな醜くおぞましい力を使っているのだ。

 レオナルドの為なら例えこの手が汚れようが構わなかった。

 なのに、それに対抗するスピカが訳がわからなかった。


 貴族の令嬢である自分よりも弱々しく儚げなのに。

 触れただけで壊れそうなのに。

 光を放ちながら二振りの剣で舞うようしてエステルの理解が及ばない力で次々と化け物を消滅させていっている。


 これにはエステルの心は折れそうになっていた。

 だからこそ、その隙を突かれた。

 黒い宝玉はただ使用者の欲望を叶える為の物ではない。


 黒い宝玉からさらに黒い瘴気が溢れ出す。

 しかし、それは魔物を創り出す事はなく、エステルに絡まっていく。


「い、いやっ! 何これ!? 離れてっ!!いや、いやっ」


 それは次々とエステルに集まり、密度を増し、巨大になっていく。

 そして、


「あああああああああああああああああああああアアアアアアア!!」


 エステルの悲鳴を最後に現れたのは、巨大で爛れた蛇の化け物であった。




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